観賞用惑星の育て方講座 ─ ─第三回 人間駆除について─ ─
アナウンサー「みなさま、こんにちは。今週も『観賞用惑星の育て方講座』の時間がやってきました。第一回、第二回では、市販されている原始惑星同士を特定のアルゴリズムに従って衝突させることで、お好みの惑星を誕生させる方法について勉強しました。そして、第三回、第四回では、誕生させた惑星を美しい姿のまま成長させる方法について勉強していきます。そして第三回では、観賞用惑星を育てるにあたっての一番の悩みどころ、知的生命体である人間の駆除方法について専門家を交えて考えていきたいと思います」
アナウンサー「本日は先週に引き続き、人間駆除に関する著書を多数出版されている、観賞用惑星アドバイザーの南川明宏さんにお越しいただきました。南川さん、本日もよろしくお願いいたします」
南川「はい。よろしくお願いいたします」
アナウンサー「まずは駆除方法の学ぶ前に、観賞用惑星には付き物となっている人間について簡単におさらいしておきましょう。こちらの画面をご覧ください。人間というのは、有機物の進化が繰り返されることによって誕生することがある知的生命体のことを言います。人間は文明と呼ばれるコロニーを形成しながら繁殖を続け、観賞用惑星のありとあらゆる場所に自分達の生存環境に適した巣を作るという習性を持っています。人間同士の縄張り争いや一見非合理的とも取れる行動習性など、まだまだ謎に包まれている部分は多くあります。それでも、何の対処もせずに放置を続けていると、観賞用惑星の成長に悪影響を与え、寿命を短めてしまうということが言われています。そのため、観賞用惑星を育てるにあたっては、適切なタイミングで適切な駆除を行う必要があります。この講座をご覧になっている方の中にも、人間が増えすぎたせいで、せっかくの観賞用惑星が台無しになってしまったという方は多いのではないでしょうか?」
アナウンサー「それでは、南川さん。観賞用惑星を育てるにあたっての、人間の駆除。こちらのコツを一言で言うと、ずばりなんでしょう?」
南川「はい。それは一言で表すとズバリ、『敵を知り、戦わずして勝つ』です」
アナウンサー「『敵を知り、戦わずして勝つ』ですか。それは一体どういうことでしょう?」
南川「はい。人間の駆除にあたって一般的に知られているのは、殺人剤を散布した駆除方法です。ですが、この殺人剤の散布による駆除なんですが、人間を一人残らず駆除できるという効果はありつつも、惑星自体にもかなりのダメージを与えてしまう、さらには人間が作ってしまった人工物と呼ばれるものがそのまま残されてしまうという問題点があるんですね。前者については、長い年月をかけることで修復可能なのですが、後者はやはり見過ごせないですね。人間が作り出す人工物の中には半永続的に環境へ負荷を与え続けてしまうものもありますし、何より観賞用惑星の外観自体を損ねてしまいます」
アナウンサー「なるほど、これについてはみなさま心当たりがあるかもしれませんね。ですが、殺人剤を散布以外で人間を駆除する方法はあるのでしょうか?」
南川「先ほどの説明であった通り、人間は知能を持つ知的生命体です。なので、その特徴を活かすことで、彼らが惑星に対して負荷を与えないように行動を誘導するという手法が存在するんです。つまり、発想の転換ですね。今までのように人間を惑星に害を与える生命体として駆除するのではなく、ある程度彼らを生かしつつ、惑星を美しく保つという考えです。このように農薬を使わない、より自然に近い観賞用惑星の育て方は、無農薬栽培という名前で昨今注目されています」
アナウンサー「無農薬栽培という言葉自体は知られている方も多いとは思われるのですが、なかなかハードルが高いイメージがあります。そこについてはいかがでしょうか?」
南川「そう思っている方も多いのですが、お手軽にできる方法もあります。比較的簡単で、それでもかなり有効的な方法としては、彼らに『惑星を綺麗に維持し続けなければならない』というイデオロギーを埋め込む手法ですね。やり方は単純です。惑星に住み着いている人間を何人か採取し、特定の周波数の電波を浴びせた後で再び巣へと戻す、これだけです。こうすることで、採取した人間を中心に、『惑星を綺麗に維持し続けなければならない』というイデオロギーが伝播し始め、そのイデオロギーとは異なるイデオロギーを持つ個体の淘汰が進みます。そうですね、大体数百年くらい経つと、伝播と淘汰が完了し、惑星に住むすべての人間が惑星の環境保護を第一とするような行動を取るようになるのです。ある程度文明が成熟したタイミングで、できる限り最初に影響力のある個体を選ぶとったテクニックは必要なのですが、やる作業としては最初の作業だけなので、比較的導入しやすいものになっています」
アナウンサー「確かに、この方法でしたら気軽に始められそうですね」
南川「はい、これはおすすめの方法なので、ぜひ真似していただけたらと思います。ただ、一点注意点としてはですが、お手軽である分、たまにイデオロギーの伝番に失敗してしまうことがあるんですね。例えば、最初にピックアップした個体が上手く期待している以上に拡散することができなかったり、あるいは拡散はできたものの、何らかの理由で、その個体群がその他の人間集団から排斥を受けて逆に淘汰されてしまったりですね。一度伝播に失敗したイデオロギーに対しては人間側に抗体ができてしまうため、もう一度同じ方法を取っても成功する可能性は低く、そうなってしまったらお手上げですね」
アナウンサー「その場合は、どうしたらいいでしょうか?」
南川「その場合は仕方ないので、殺人剤を散布して、人間を絶滅させるしかないですね。最近の殺人剤の中では、惑星への負荷を可能な限り抑えたものや、ゆっくりと人間を絶滅させるような遅延性のものも販売されていますので、それらを使う形になります。ですが、これは先ほど述べたように色々と問題点がありますので、できる限りそうならないように祈りたいですね」
アナウンサー「なるほど。確かに絶滅させないで済むのであれば、それに越したことはありませんからね。みなさまも本日学んだことをぜひ実践し、より素敵な観賞用惑星ライフをお過ごしください。南川さん、本日もありがとうございました」
南川「はい、ありがとうございました」
アナウンサー「次回の『観賞用惑星の育て方講座』では、観賞用惑星を美しく育てるための大地と海のバランスについて解説を行います。それではまた来週のこの時間にお会いしましょう。さようなら」