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異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
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偉大なる、マヨ・ラー


 転生者

 前世の記憶、人格を持った人々のこと。

 数百年前、あるいはそれより古い時代の記憶を持つ人もいれば、異世界の人物の記憶を持つ人々もいる。

 レックにとっての転生者は、日本人だ。自分も前世の記憶を持っており、一人目である。初日に出会った『テクノ師団』の隊長というおっさんで、二人目だ。


 三人目が、目の前にいた。


「ようこそ、日本人の記憶を持つ人よ。私は、バルマス伯爵家の当主、ベースマス・バルマス伯爵です。亡き父が『マヨネーズ伯爵』として、知られていますかな」


 今の代の、マヨネーズ伯爵だった。

『キュー○ーに謝れ』と、レックが思った銅像が、ここにもあった。しかも、そっくりなメタボ様が、となりでお待ちだったのだ。


 レックは、緊張に、ぴっしり――と、背筋を伸ばし、伯爵の挨拶を受けた。


 レックが使いのゴリラに案内されたのは、大きなお屋敷であった。

『キュー○ーに謝れ』と、レックが思ったおっさんの銅像がなければ、ここはまさに貴族のお屋敷と言うべき広さの、お屋敷だった。


 レックは、ご挨拶をした。


「こ、こここ、こちらこそ始めまして、伯爵さま。わたくし、レックと言う卑しい冒険者でございまして、へへへ」


 へへへと、へりくだっていた。

 腰を曲げて、手もみをして、ゴマをすりまくった。

 前世の浪人生がそうさせたのか、レックがお調子者なのか、もはや分からない。二人の人格が、手を組んだのだ。

 伯爵が、目の前なのだ。


 幸い、伯爵は腰の低い人物だった。うまくご機嫌を取り続ければ、無事に生きて、この屋敷を離れることが出来るだろう。

 伯爵は、そんなレックの気持ちを見抜いているのか、声をかけた


「ツナマヨおにぎりも気に入っていただけたようなので、ここはぜひ、我が家の料理も味わっていただきたいものです………なに、緊張する必要はありません、ごくごく、普通の食事ですので」


 レックは、もちろん喜んでお受けした。


 そして――


「………マヨ・ラー………ですか」


 マヨネーズだった。

 目の前に出されたのは、前菜からスープにメインにと、フルコースらしきお皿が、全て一度に出されている。デザートだけは、さすがに最後に出てくるのだろうが………


 全て、マヨネーズがけだった


「………父は、生前こう言っておりました。毎回の食事にマヨネーズを使う『マヨ・ラー』と呼ばれたかったと………マヨネーズをこの世にもたらした、父らしい言葉です」


 貧しい子爵家を、一代で伯爵家へと押し上げた、偉大なる人物だったようだ。苦労があったのか、伯爵の地位を得て、時をおかずに亡くなったらしい。


 前世が日本人であるレックは、愛想笑いを決め込んだ。そうでなければ、ツッコミで忙しいはずだ。


『マヨラー』だよな、それ。

 死因は、『マヨラー』だよな――と


 口にしないレックは、わきまえていた。

 首を、ちょんぱされたくないからだ。


「『マヨネーズ伯爵』と呼ばれた父は、元々は商業ギルドに所属していた、専属冒険者だったといいます。ある日、護衛の仕事で命の危機に陥り、あなたのように覚醒したのでしょうな。その後はマヨネーズの再現に人生をかけ、ついには貧しい子爵家の婿養子として――」


『マヨネーズ伯爵』から、バルマスの歴史を説明されながら、レックは誓った。

 明日は、健康に良い食事をしようと。

 野菜スープか、野菜たっぷりのおかゆだと。コレステロールをたっぷりの食事のあとは、健康的な食事にしようと。


「偉大なる、『マヨ・ラー』になることが、父の最期の願い。せめて、転生した日本人の皆様には、精一杯のマヨネーズを味わっていただきたいと――」


 何で、マヨネーズなのだ――


 レックは、心で叫んだ。

 分かっている『マヨネーズ伯爵』だからだ。自慢したかったのだ。

 故郷を日本に持つ転生者への気遣い、応援の気持ちもあるのだろうが、自慢したかったのだと、レックは感じた。


 オレは、やった――と。


「ちなみに、普段のお食事は………」

「一品は、マヨネーズを入れるようにしております。基本的に、前菜かメインディッシュですね、本日は――」


 料理は、全ておいしかった。

 流通がしっかりとしているのだろう、干したホタテを使ったマヨネーズのサラダを前菜に、マヨネーズのマカロニグラタン、パンはマヨネーズをご自分で、香草らしきものがマヨネーズに混ぜてある。全てのマヨネーズは、マヨネーズの豊かな風味でありながら、微妙に触感や風味、香りが異なって、飽きることはない。


 こんな食事を続けていれば、間違いなくメタボになるだろう。これは命の危険といっても過言ではない、マヨネーズの誘惑だ。


「最後に、デザートでございます――」


 ゴリラが、料理を運んできた。執事の役割もあるらしい。ボディーガードもかねていれば、ゴリラと間違える、上半身がバケモノも納得だ。隣に料理を運んでくるだけで、緊張を強いられるゴリラだった。


 お皿が、新たに追加された。前菜のホタテ貝のサラダにマヨネーズを混ぜた一口めは、おいしかった。レックの人生では知らない味で、前世の日本人の知識としても、驚きだった。この手の世界では、海辺でなければ味わうことが出来ない味なのだ。

 お高いだろうが、懐かしい味が、うれしかった。


 マヨネーズをたっぷり使った、エビのグラタンあたりで、舌が疲れてきた。


 しかし、デザートが希望だった。さぁ、どのようなデザートだろう。まさか、パンケーキにマヨネーズをかける暴挙は、なさるまい。


 頼むぞ、頼む。


 レックの期待は――


「マヨネーズ………ですか?」


「はい、一口サイズのトーストに、マヨネーズと蜂蜜をたっぷりとなじませたデザートでございます。マヨネーズを、たっぷりとでございます」


 二度も、言わなくてもいいのです。

 レックはにこやかに、にこやかに笑みを浮かべた。せっかくの伯爵のもてなしなのだ、ご機嫌を損ねては、大変なのだ。


 ただ、マヨネーズが、ちょっとばかり、多かったのだ。


 多かったのだ………




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