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異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
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エルフの国の、ロボット研究所


 スーパー・ロボットのエルフちゃんがご帰還をした。

 その翌日、レックは、ご機嫌斜めのコハル姉さんと共に、研究所という印象の建物の前にいた。


 観光案内の一環ということだが――


「なんで、私がこんなところに………」


 パンツスタイルだった。

 日本人は、この世界にどれほどファッションを持ち込んだのか、パンツスタイルと言うか、半ズボンだ。

 キャロットパンツと言うサスペンダーつきの、半そでがボーイッシュで可愛らしい。


 もちろん、レックもサスペンダーつきの、半ズボンスタイルだ。


 オユキ姉さんは、また忍者スタイルを選ばれなかったことに、ご機嫌を悪くされていた。レックとしては、着せ替え人形に徹するしか道はなかった。


 姉妹に加えられたレックは、抵抗をやめていた。


「ロボット研究所………あぁ、これ、《《日本語》》なんだぁ~」


 意識しないと、分からない。

 レックにとっては、日本語も、この世界の文字も、同じに感じてしまう。これが、転生者の特権と言うか、補正と言うものらしい。


 そのために、パーキングエリアへ向かう一本道にも、気付かなかった。案内の通りに進んだつもりで、《《日本語の案内》》に従ったのだ。

 《《日本語》》で書かれている。それがすでに、転生者向けのトラップだった。


 では、誰が仕組んだのか。


「おやおや、お若い方、ようこそ、スーパー・ロボット研究所へ――」


 博士が、現れた。

 よれよれの白衣を着て、ビン底めがねの、ぼさぼさの白髪ヘアーの博士と言うジジイが、現れた。


 レックは、ジジイの襟首えりくびを締め上げた。


「あんたのせいかぁあああああっ!」


 責任者が、現れた。


 言われなくとも分かる、様々な汚染をもたらしたのは、目の前のマッドサイエンティストをコスプレしている白髪頭のジジイであると。


 エルフを、返せ。


 理不尽な怒りを、ぶつけた。


「あんたが、あんたが――っ」


 某研究所のように、見た目は一般家屋で、ところどころ、仕掛けがあるに違いないつぎはぎが見える。

 その一つが予想通りに展開して、ロボット発進カタパルトがせりあがった。どこまでも本格的なロボットが、立ちあがった。


 叫び声が、上がった。


「ラウネーラ、ゴーっ」


 スピーカーで、叫んでいた。

 いつから待ちわびていたのだろう。レックたちが遊びに来る約束は、確かにしていた。

 まさか、朝からずっとコクピットで待ちわびていたのか。いや、エルフの魔法で接近を感知したのだと、信じたい。


 となりのエルフちゃんは、ご機嫌斜めだ。


「アイツ………いつの間にこんな改造を――ったく、どんだけ」


 コハル姉さんは、ますます不機嫌だ。

 レックは、コハル姉さんのご機嫌を取る余裕がなく、ただただ、立ち上がったスーパー・ロボットを見つめていた。


 レックは、見上げていた。


「あぁ、あれは、あれは――」

「ふはははは、見て驚けっ――」


 締め上げていた博士は、得意げだ。


 ロボット発射のカタパルトは、一つではなかった。

 屋根が外れたり、通路の石畳が持ち上がったり、飾りと一目で分かるヤシの木が、ぽっきりと不自然にカーブを描いたり………


 コンドルタイプ、狼タイプ、モグラタイプと、様々なパーツメカまで出撃だ。


 5体合体の、アレである。

 サポートメカの、皆様である。


「うわぁぁあああ………みんな、飛んで、飛んで、飛んでぇええ――」


 全てが、飛び上がった。

 煙を吐きながら飛び上がったロボット達は、空中で、影を一つにした。

 空をにらむと、今日もよい天気だ。太陽がまぶしく輝き、その影の中で、さらに輝きが増した。


 クライマックスシーンが、目の前だ。


「みんなの力を一つにっ」


 みんなって、誰だ――

 レックは心で叫んだ。前世の浪人生は、涙をぽろぽろと流しながら、天空を見上げていた。

 コハル姉さんは苛立たしげに、博士は得意満面だ。


 5対のロボが、合体した。


 そして――


「グレート・ラウネーラ、参上っ」


 名乗りやがった。

 ズシン――と、大きく土煙を上げて、巨大ロボットが着陸、仁王立ちをしていた。色々と、ごちゃごちゃとくっついて、恐ろしかった。


 合体した動物達のため、5メートル少々だったラウネーラ・ロボが、10メートルを超えたサイズだった。


 このロボなら、レックが苦戦したオークのボス3兄弟も、一撃だ。サイズだけで匹敵しており、オーバー・キルという攻撃力は、考えたくもない。


 コハル姉さんが、まったく目立たない。あぁ、警戒していたのは、子供同士の意地っ張りとか、そういうレベルだったのだ。


 いつか、レックは警告をされた。

 前世に引きずられないようにと。そして、コハル姉さんと親しくなる前、転生者と判明した時点で、警告を受けた。


 ガラケーを自慢していた、見た目は女子中学生エルフの警告だった。


『前世に引きずられるヤツラで、本当にヤバイのは――『スプルグ』の転生者』

『出会ったら、すぐに逃げなさい――』


 見た目は12歳のコハル姉さんは、確かにそう言っていた。


『スプルグ』の転生者に出会ったなら、逃げなさい――と


『スプルグ』の転生者ご本人が、現れた。


「ふっ………そうさ、ボク――私はエルフ。しかし、《《前世》》の『スプルグ』では、天才美少女パイロットと呼ばれていた。二人の人格が手を組んだ存在、それが私なのさ………そして、これが真の姿なんだっ!」


 気取っていた。

 石組みの門構えの上に降り立ち、あさってのほうを見つめていた。

 細い肩のどこからか、たそがれた背中のかっこよさがにじみ出る。熱血の名作ロボットアニメを、このジジイが教えたのだろう。せっかくの美少女は、全てを悟った主人公になっていた。


 コハル姉さんは、爆発した。


「だから、なんなのよ、それはぁあああっ」


 レックも、同感だった。

 スマホでも持ち込んでいれば、映像として見せることができたかもしれない。タブレットでも何でも、しかし、記憶を受け継いだだけの転生者である。


 ムリである。


 なのに、口伝えだけのはずなのに、中二は異世界を侵食していた。かく言うコハル姉さんもまた、変身ヒロインのセーラー服のアーマー戦士なのだ。


 アーマー・マシンガンとしてポーズをとる姿は、目の前のパイロットスーツのエルフちゃんを馬鹿にできない。


 そう、エルフはすでに、汚染されているのだ。


 ややSFというか、アニメによって………




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