表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
249/262

レックと、バイク部 7

虫が苦手な方、すみません


 ベキ、バキ、ベキ、バキ――木々が粉砕され、倒される音が響く。

 ドゴ、ドドドドド、ボゴン――巨大な岩石が転がってくる音が、時間がないと教えている。

 双眼鏡を手に、レックはおののいていた。


「………わわわわ、来る、来るッスよ」


 斜面でないはずだが、なぜか転がるダンゴムシが、先頭だ。

 斜面ほどの速度はないが、バトル開始まで、あまり時間がない。すぐ後ろから殺人カマキリや巨大ゲジゲジや、なぜか足が速いナメクジなど、SAN値をピンチにする有象無象うぞうむぞうが接近中だ。


 バイク部最年少も、涙目だ。


「何で虫さん大行進なの。ゴブリンの群れとかじゃないの、巨大狼が3匹くらいじゃなかったの~」


 14歳女子の意見に、レックも同感だった。

 森なのだ、せめてモンスターに変化したイノシシや、素直に大型ゴブリンの群れでもいいと、本気で思った。草原では牛サイズの巨大ホーン・ラビットや、ボス未満の2メートル近い大型ゴブリンたちが、バイク部の餌食となったのだ。

 迷いの森の根拠である、プチ・ダンジョンというべきモンスターの発生地では、さぞ、おいしい獲物があるだろうと、期待していたようだ。


 実際には、有象無象の皆様が、溢れていた。


 レックは、責任者の号令を待った。


「密集――」


 ロビン先生は言いかけて、14歳女子を見た。


「いや、ボーゼットは炎魔法を禁止とする………いいか、炎は絶対だからなっ」


 14歳女子は、涙目だ。

 ハート型ステッキのほかに、もう一本、こちらが本命らしい武器を取り出している。どくろマークが、凶悪だ。

 赤いどくろで、何を連想するのか、地獄の業火が目に浮かぶ。


 恐怖を隠しつつ、レックは前を向いた。


「先生、オレっちは?」


 大群の接近に恐怖しつつも、レックの経験が教えてくれる。


 レーザーで、楽勝だ――


 ダンジョンでの、経験だった。

 落盤の恐れがあったための縛りプレイで、レーザーが禁止であった。それでも水風船を拡大させれば、巨大な岩石と言うダンゴムシさんの突撃を防げた。


 SAN値が、ピンチになっただけだ。


 さらに、接近を許す前にレーザーで乱射すれば、片付けられる。

 幸い、バイク部は密集しており、レックが最前列に出て水風船で全方位を守ることも出来る。直系10メートル程度に拡大させ、バイク部を内側に守りつつ、レーザーを乱射すればよいのだ。


 森にダメージを与えてしまうが、すでにモンスターの皆様が破壊していらっしゃるので、よいだろう。人にさえ当たらなければ、よいだろう。

 大火災らしいボーゼットちゃんの攻撃魔法の暴発よりは、マシだろうと………


 即座に、却下された。


「ダメだ――マラソン部がいるっ!」


 ハーレーの兄貴が、叫んだ。

 本当に、すばらしい魔力レーダーをお持ちのようだ、レックはいつでも水風船を最大幅にする気構えをしつつ、双眼鏡を覗いた。


「どこッスか。オレっちには………ダンゴムシの大群しか――」


 振動が、巨体の接近が秒読みだ。

 レックにはそれしか見えず、人影など、見えなかった。それに、人の移動速度では、魔法で強化されても限界がある。空を飛べば別だが、陸路でバイク部より早く森に到着しているなど、考えにくかった。

 どうすればいいのかと、すこしパニックになりつつあるレックは、責任者であるとがったサングラスを見上げた。


『馬』――と刺繍ししゅうされたタンクトップのおっさんが、不機嫌だった。


「ちっ――見ないと思ったら………プレ・文化祭の準備って、こういうことかよ」


 ロビン先生にも、なにかが見えたようだ。

 ちょっと、イライラしておいでだ。

 おかげで、本当に誰かがいると確定した。そして、そういえばと、レックは考える。今朝はバイク部が、お出かけのレックを待ち構えていた。なら、他のクラブの勧誘は、どうだったか。

 馬術部は潔く、レースの結果を受け入れていた。バイク部の場合は、バイクを持っているということで、仲間というレックをあきらめていなかった。


 では、他のクラブは?


「――忍者?」


 レックの双眼鏡に、なにかが映った。


 人がいるはずだと、色々と双眼鏡で探していると、確かに見たのだ。

 一瞬であるために、見間違えということがある。しかし、レックの脳裏には忍者という忍者の姿が、プレイバックされていた。


 まっすぐと、前を見た。


「………うわぁ~――」


 爆発が、起こった。

 炎系統ではない、マジック・カノン系統やスラッシュなど、中級魔法が乱射されているお祭りが、開催された。


 魔法学校の、日常風景だった。

 レックは少し安心した、バイク部だけでは少し厳しいモンスターの大群は、すでにお客様の相手をしていたらしい。


「プレ・文化祭が来週だからな。材料費のためか?」

「派手なほうが、獲得競争に有利だからな、予算も自分達でってな」

「そっか………昨日の夜からお出かけってとこか」


 一輪バイクとサイドカーと、そして改造ゴーレムバイクの3人が、なるほどと納得をしていた。

 そういえば、レックも言われていた。プレ・文化祭の準備が待っている。休日が終れば戻るように、スケジュールをしっかりと組むようにと――


 休日は、2日しかない。出発とキャンプとモンスターの群れの捜索と言う時間を考えて、複数のクラブが合同で、あるいは競争で、昨晩からお出かけしていたらしい。


 そう、狩りの時間だった


「いくか」


 ロビン先生は、バイクにまたがった。


「早く行こう、毛皮しよう」


 14歳女子は、意味不明だった。


「そうね、解体なら、早いほうがいいから」


 大型バイクの姉さんも、同意のようだ。すでにヘルメットをかぶって、出発準備OKである。

 兄貴達もエンジンをふかせて、出発は決定である。迷いの森はよい稼ぎになるらしいが、競争でもあったらしい。


 バイク部に、出番はなかったのだ。


「遠足まで待って話だよな」

「久々の休みだから………まぁ、次があるさ」

「遠足だと、一人当たり20ポドルがせいぜいだし――」

「ツーリングだから、素通りってことで」


 遠足という言葉が気になったレックだが、ここから脱出できるなら、それでよかった。

 男子部員達の準備も終えた。すぐにでも出発できる状況での相談だった、武器を収納してゴーグルをつけたりヘルメットをかぶったり、そして、エンジンをかければ準備完了である。


 号令で、出発だ。


 そう思っていたが――


「これはこれは、バイク部と………おぉ、そこにいるのは勇者(笑)さまか」


 忍者の人が、降ってきた。


 たくさん、降ってきた。


「ぜひ、助太刀を」

「レーザーを』

「いや、魔女っ子を」

「まずは、お着替えを」

「まて、くのいちだろ」

「セーラー服は?」

「ヘアスタイルはどうする」


 論議はおかしいが、全員、忍び装束で降り立っていた。女子部員も混ざっているが、服装では分からない。男の娘も珍しくない今日この頃、油断してはいけないと、レックも見本となっている。


 なぜか、目の前に衣装が掲げられた。アイテム袋に、いつも収納して入るようだ、ちょっと怪しいクラブである。


 ハーレーの兄貴が、警告した。


「げっ――横っ」

「走れえええっ!」


 ロビン先生も、叫んだ。


 ワケが分からず、バイク部の全員が、急発進した。訓練を受けていないレックには反応が遅れて、最後尾だ。

 むしろ、出発すらしていなかった。


 レックは、悲鳴を上げた。


「ぎぃいいいやぁあああ」


 触手が、レックを狙っていた。

 地面から、ミミズ軍団の登場だ。




次回も、虫がでます。すみません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ