表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
231/262

初めての、部活? 11


 まるで、サーフィンだ。


 馬の姉さんが仁王立ちになっている姿を見て、レックは思った。上空の立体映像を見つめると、サーファーが波に乗っているように見えたのだ。

 相棒のホバーUFOの上で仁王立ちになっている姿が、かっこいい


 そして、お名前が判明した。


「………ハナコさん?」


 ハナコさんという、とっても和風なお名前だった。

 いや、メガネという馬術部顧問の馬の人も、ジロウ先生である。バイク部顧問はロビン先生で、テクノ師団のおっさんはゴルックとバラバラでは会ったが、和風の名前があっても、おかしくなかったのだ。


 馬の姉さんは、きょとんとしていた。


「そっか、オレらは名前で呼び合ったことって、なかったっけ………」


 姉さん――としか呼ばず、あまり会話をすることもなかったレックは、いまさらながらに、新鮮さを感じていた。


 衝撃も、感じていた。


「………?」

「へっ――」


 レックは疑問を、そして、馬の姉さんことハナコさんは、笑みを浮かべていた。


 そして、レックの肩に手を置いた。


「いいから、前を向いてな――」


 レックは、ハナコさんの言うままに、前を向いた。


 そういえば、何かを通過した気がするが、気のせいなのだろう。レーザーを放って、照射時間が終ったと思えば、全て1つのことに意識が奪われたのだ。


 そっか、ハナコさんって言うんだ――と


 なれなれしく、アーマー・5(ふぁいぶ)の皆様と名前で呼び合うことはなかった。バトルシーンばかりで、そのあとはプライベートの付き合いはなかった、女子の中で、ひたすら呼ばれるのを待つ付き人が、レックにふさわしい立ち居地なのだ。


 解説が、相変わらず叫んでいた。


『魔法騎士団が、まけたぁあああ』

『まぁ、相手は勇者(笑)ですからね、立ち向かった勇気をたたえるべきでしょう』


 プレイバックされていた。


 200という数は50人ずつ4列に並び、そして、レックのレーザーを真正面から受け止めて、防ぐという隊列だった。

 シールドの実地テストという本日だったわけだ。いずれという話だったが、せっかくレースをして入るので、やってみたと言うわけだ。


 結果――


「………わすれてた」

「はっはっは~――、気にするなっ」


 馬の姉さんは、ご機嫌だ。


 サーファーのように相棒のホバーUFOに仁王立ちになって、どのようにしているのか、そのまま操縦していた。

 一直線であるためか、いいや、違うとレックは思い出した。


 姉さんの命令によって、思い出した。


「レック、そろそろカーブだ、左に曲がるんだからな、狙うのは、広報の、右斜め下だからな――」


 命じられるまま、レックはレーザーを放った。

 真下に放ってしまえば、即座にひっくり返る。右斜め後方へ1つ、それも、かなり離れた場所を狙って、レックはレーザーを放った。


 地面に向けて、とっても長い棒を伸ばすイメージだ。

 あるいは、巨大な棒で舟をこぐ人をイメージして、今はコーナーターンで足を地面に付ける荒業の気分だ。


 漫画やアニメでは足をカーブにつける無茶をするが、リアルですれば、骨折だよな、事故だよな――と、レックの前世はつぶやいてる。

 ついでに、馬の姉さんは、ハナコさん――と、スマホにメモしていた。レックの脳内は、平和なようだ。


 レックは、目を見開いた。


「げっ――」


 馬の姉さんも、うなった。


「させるかっ!」


 いやらしいトラップだ。

 カーブを曲がったところに、5メートルを超える岩山が、立ちはだかっていた。バリアのおかげで命に別状はないだろうが、それでも、激突の衝撃はバカに出来ない。

 いや、急角度であるために、上空へと躍り出る可能性のほうが、とっても高い。


 馬の姉さんは、叫んだ。


「かがんでろっ――」


 馬の姉さんこと、ハナコさんの命令だ。

 レックは、言われなくとも頭を抱えて縮こまる。水風船を発動させるべきだろうが、馬の姉さんには、なにか考えがあるようだ。本能的に水風船を発動させれば、邪魔をしてしまうと、レックは必死に押さえた。


 正解だったようだ。


「はっはぁあああ~」


 姉さんは、ノリノリだった。

 大波を乗り越えたサーファーのように、ノリノリだった。ホバーUFOには、空中で踊る能力まであったのだろうか、ホバー程度の浮遊の魔力では不可能だが、風が、味方になってくれた。


 風に乗ったお魚さんが、大笑いだ。


「あははははは、あんた、それやるか?」


 マーメイドの姉さんは、空中を旋回しながら、大笑いだ。


 5メートルを越える岩山へと、正面衝突をした。

 ただ、垂直というわけではない、そして、衝突までのわずかな時間がある、ホバーUFOの能力で接触することはなく、むしろ、その勢いを利用して上空へと躍り出たのだ。


「ちょ――」


 レックに、何ができよう。

 そして、眼下の光景の皆様も、何ができるだろう、しばし見つめて、レックはその光景を見つめて………


 すべての轟音を、馬たちを、置き去りにした。


「おっさきぃいいいいっ」


 ハナコさんが、ご機嫌だ。

 落下速度を利用して、風の流れをもホバーUFOの能力で利用して、風に乗ったかのように直進したのだ。


 まさに、波乗りだった。


「………?」


 レックは、座っているだけだった。バリアの命令があれば即座に、地面の衝撃が危険であれば水風船にするつもりだった。

 浮遊感のみがあり、無重力気分のまま、今となった。


 色々と追い越した気がするが、実感がなかったのである。


 代わりに、解説が興奮していた。


『逆転、逆転、逆転だぁああああ』

『すばらしい機転ですね。ハナコ選手のホバーUFOの能力に加え、勇者(笑)レックのレーザーの勢いがあったからこその荒業でしょう。しかし、今の操縦テクニックは、まさに大波に乗ったサーファーといった――』


 とっても、興奮していた

 会場の興奮も、歓声となって聞こえてくる。上空の立体映像から漏れてくる音声だけではない、スタート地点のコロッセオが近づいているためだろう。

 遠くで、にゃぁあああ~っ――という、どこかのエルフちゃんの叫び声が聞こえたが、絶望の悲鳴ではなく、勝利の高揚であった。


 冷静な声が、水を差した。


「まだ2周もあるのに、気の早いことですね ――」


 バサ――と、エンジェルのツバサが羽ばたいた。


 1周目を通過した合図だった

 いつの間にか用意されていたのか、上空ではカメラアイ・ボールの人たちが補佐をしていた。

 順位も、映し出されていた


 レック&ハナコペア――1位


 続いてロビン先生とジロウ先生が2位と言う、4人のレースが、2チームのレースのようになっている不思議である。


 しかし、レックは思った。


「あと、2周か――」


 ちょっと、お疲れだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ