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異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
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初めての、部活? 10


 金髪のツインテールが、ばさばさと風に揺れる。

 実際にはそれほどでもない、ホバーUFOの不思議な力場のおかげだろう。レックは体育すわりをして、上空を見つめていた。


 映画のワンシーンが、気になっているのだ。


「ファランクスか………」


 行進していた。


 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ――


 とある集団が、一糸乱れぬ動きで行進している。

 徒歩というより、小走こばしりと言う速度である。急いで防御陣形を展開させようと、巨大なシールドを手にした若者達が、あるいは見習いだろう少年も混じっている。一糸乱れることがない、巨大な壁となっていた。


 レックの前世は、立ち上がった。

 ファランクス、きたぁああああ~っ――と、盛り上がっていた。ファンタジーに夢見る学生さんだったのだ。異世界ファンタジーで見かけるバトルシーンが、目の前で展開されていると、興奮していた。


 解説が、叫ぶ。


『なんとぉ~、本気でしょうか――勇者(笑)レックの攻撃が、許可されました』

『えぇ~、ただいま隊列を組んでいますのは魔法騎士団の訓練生を含んだ合同部隊であり、勇者(笑)レックの攻撃を防ぐシールドを――』


 練習相手ということだ。


 元々、レックのレーザーはカノン系に匹敵するとされている。

 貫通力があるために、むしろジャベリンだと、しかも、連続照射時間が数秒ということは、ジャベリンの連射に匹敵すると言うことだ。

 かするだけでも、並みのボスを倒せる威力は、大群を前にしては最強だった。

 ただ、強固な外骨格を持っていたり、巨大すぎて皮膚が分厚かったりというボスの皆様には、集中砲火が必要となっている。レックもエルフの国で経験をした、分厚い皮膚のオーク3兄弟を前にしては、かすっただけでは、かすり傷だった。


 つまり、防げるのだ。


「レック、横を見てみな――」


 馬の姉さんが、指を刺していた。

 片手運転は危ないです――そんなセリフを口に仕掛けて、レックは指を刺された方向を見つめた。


 ホバーUFOの右手側に、カメラアイ・ボールのお人が現れた。

 さすがである、レックのレーザーによって、通常を超える速度で移動中でも、空を飛んでいれば、軽々と追いついていた。


 画面が、浮かび上がった。


『レック~、ぶちかますにゃ~』

『もちろん、レーザーしか撃っちゃだめよ。レックの必殺技、ドリルは魔王も粉砕するからね、当然よね?』


 金と銀のツインテールちゃんが、現れた。

 見た目は12歳の元気いっぱいのお年頃に見えて、そんな生易しいお人ではない。いや、人ではないエルフちゃんたちだ。


 どうやら、レーザーの使用許可が下りたらしい。応援の言葉と共に、カメラアイ・ボールの人は上空へと飛び去っていく。


 馬の姉さんが、振り向いた。


「レック、やれっ」


 頼もしい笑顔だった。

 噛み砕いてやる――そんなセリフが似つかわしい、獰猛どうもうな笑顔であった。種族はケンタウロスであるが、ミノタウロスではないのかと、ちょっと思った。


 細身であり、マッチョ要素の代わりにスレンダーという背の高いお姉さんであるが、人格としては猛牛に等しい。


 レックは、お返事をした。


「レーザーっ!」


 6つを、一度に放った。


 横並びになっている、なぎ払うように、縦横無尽になぎ払った。

 ゴブリンやスライムといった雑魚モンスターの大群はもとより、3メートルサイズのボスモンスターが混ざっていても、なぎ払う攻撃だ。

 ちょっとだけ、だいじょうぶかな~――と心配したレックだが、上空の立体映像を信じるしかない。アップシーンでは、巨大なシールドが重ねられている、一枚の壁として完成されていたのだ。


 そして、レックは反省する。

 訓練中といっても、魔法騎士団を舐めていたと反省する。


 本当に、舐めていたと――


 解説は、叫んだ。


『勇者(笑)レックの攻撃が、はじかれましたぁ~っ!』

『さすがですね、勇者(笑)レックの攻撃魔法――レーザーは、貫通力は中級魔法のジャベリン系に匹敵するといわれています。並みの防御では貫通、よくて吹き飛ぶ――』


 別の画面では、改良版などと説明が加えられていた。

 レックたちと遭遇するまでのカウントダウンが、おおよその距離でめまぐるしく変化している。20秒もないだろう、突撃までのカウントダウンだ。

 もちろん、魔法騎士団とレックたちとの対決を楽しみにするコロッセオの熱気も上空へと映し出されている。


 馬の姉さんは、叫んだ。


「遠慮するな、レックっ!」


 馬の姉さんは振り向きつつ言うと、そのままレックを持ち上げた。

 猫の子を持ち上げるように、持ち上げた。


「ちょっ――」


 レックは、あわてた。

 運転中で危険だという不安と、そして、何を目的としているのかと不安だ。

 振り落とされない不思議な力場は、それなりの範囲に安定している。流線型となっているUFOのバリアの範囲は、まるで空気が止まっているように、和やかだ。


 レックは、運転席の“前”へと、下ろされた。


「どうだっ」


 馬の姉さんは、満足そうだ。


 異議は、認めない――


 そのような状態で、レックは何とお返事をすればよいのだろう。迫ってくる光景が、ホバーUFOのバリアが防いでいるとはいえ、色々迫っていた。

 当面は、巨大な壁となったファランクスが、迫っている。レーザーでなぎ払うことができなかった、このままでは、正面衝突である。


 いや、その前に――


「ちょ、あぶ――」


 ――危ないです


 レックは口にしたかったが、それは、レックが運転席の前に座ったためである。しかし、抗議しようと振り向くと、本当に危なかった。


 ライダースーツのお姉さんが、レックの後ろで仁王立ちになった。


 ゴーカートサイズのホバーUFOは、それでも幅が3メートル近くはある。バリアが流線型に広がっているために、乗用車ほどのシルエットだろう。


 姉さんは、笑った。


「ほらほら~、次で決めないと激突だぜ~」


 ちょっと、ぶちきれておいでのようだ。手ごわい獲物を見つけて、獰猛に笑顔を浮かべて、今にも走り出しそうだ。

 いや、ホバーUFOで走っているのだが………


 レックは、叫んだ。


「レーザーぁあああっ」


 ヤケだった


 そして、狙った。

 200という数のシールドは、一枚の巨大な壁となっている。前列はしゃがみ、後列がサポートをして、その上に、更に後ろの列からシールドを載せて、隙間を生み出さないファランクスだ。

 レーザーでなぎ払う程度では、簡単に防がれるのだ。


 なら、一点突破だ。


 ホバーUFOが通り抜けるための道を、それだけを考えればいい。巨大なレンガブロックの塀のように、幅広いシールドを手にしている集団が、近づいている。


 解説席は、盛り上がる。


『勇者(笑)レック、再びレーザーだぁああ』

『今度は狙い撃ちのようです。ハナコ選手も立ち上がり、どうやら本気の――』


 上空の映像では、レーザーの集中砲火に耐えるファランクスの映像が映し出されている。どのように撮影しているのか、圧力に耐えている必死の表情まで写っていた。

 テクノ師団のフルフェイスでありながら、表情が見える。Y字に溝があり、表情が垣間見えるのだ。


 だが、レックの頭は、1つのことで埋め尽くされていた。


「………ハナコさん?」


 ちらりと、後ろを振り向いた。

 仁王立ちをしている馬の姉さんが、レックを見た。


「なんだ、急に――」


 馬の姉さんは、不思議そうにレックを見ていた。

 ファランクスと壁まで数秒に迫っている。レックのレーザーの照射時間も、すでに限界を超えて、どちらが勝利するかという瀬戸際だった。


 だが、レックの頭を占めているのは、たった一つだった。


 ハナコさんという、馬の姉さんの名前だった。



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