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異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
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初めての、部活? 9



 金髪のツインテールが、ばさばさと暴れている。

 大正ロマン溢れる女学生のはかまも、ばさばさと暴れている。日本人の転生者のやらかしの1つ『ゴキ○リほいほい』という拘束魔法の余韻である、スライムがべっとりとしていても、風の勢いに任せて、大暴れだ。


 レックは、叫んだ。


「ぎゃぁああああ――」


 涙目だった。


 レーザーを推進力とする。

 それはアイデアとしてはすばらしく、超高圧の水鉄砲ということで、水を推進力にして進む速度は、かなりのものだ。

 ホバーUFOのおかげだろう、むしろ、地面にタイヤが接地しているバイクでやらかせば、タイヤが大変なことになる。回転と角度の問題が発生して、即座に転倒事故が発生してもおかしくない。

 ホバーUFOに感謝だ。


 もちろん、運転テクニックにも――


「右だっ」


 レックは、返事をする代わりに、レーザーの角度を調整した。

 6つの水球から放つことが出来る、そして、水球はある程度は動かすことが出来る、レックを中心に6方向に展開させ、上下左右前後という完全に自分を覆う防御魔法として、レンズ形状にすることも、水風船で柔軟性を与えることも出来る。


 UFOの周囲に、6つの輝きが、光っていた。


「ちがう――逆だ」


 馬は、お怒りだ。


 すでに、レースでは周回遅でもおかしくない、レックを渡すまいとする部活の皆様の執念をもってしても、巨大バイクと漆黒の馬は、止まらなかった。

 魔法の射撃に弓矢に雨あられと言う中を、馬たちは走っていた。

 上空の立体映像では、通さぬ――と立ちふさがったマジック・アイテムのシールドを手にした集団を蹴散らしていた。


 ファンタジーだから許される、リアルでやられたら激突事故だ。しかし、そのような感想は今さらである。

 映画の突撃シーンが、繰り広げられていた。


 馬の姉さんは、あそこへ追いつくつもりなのだ。


「よっし、このまままっすぐ――」


 レックは、推進力となっていた。


 遊園地で乗ることも出来るゴーカートほどのホバーUFOは、ややSFと思っていたレックのバイクよりも、一歩も二歩も先を歩く技術だ。

 地上20~30センチに浮遊させ続け、推進力に加えて、ブレーキも安定させる必要がある。バリアを発生させるバイクよりも、はるかに技術が上のはずだ。


 しかも、モノサイクルというか、モノホイールというか、巨大なタイヤの内側が運転席という乗り物が、UFOへと変形するのだ。

 UFOデザインに、どこか昭和のまぶしさを覚える今日この頃、レックはわめいていた。


「す、すす、すっ――」


 スピードを、抑えてください――


 口にしたくても、口にできない。レーザーを放っているのはレックである、一度の放出時間は数秒という、言い換えれば、連続で攻撃魔法を放っているようなものである。


 6つの水球から交互に放てば、かなりの時間にわたって加速させることが出来る。すでに、剛速球の速さを超えて、弓矢の速度すら越えているだろう。スピードレーサーにとっては入り口でも、レックには、涙目である。


 馬の姉さんは、笑っていた。


「なにビビってんだ。魔王のどてっぱらに穴をあけたときなんか、すげぇ速さで飛ばされてたじゃんか――ラウネーラのロボットによぉ~」


 余裕のようだ。


 そして、ご機嫌のようだ。つまりは、ホバーUFOでは出せない速度に達している、少なくとも、ご納得いただける速度に達しているということだ。

 それでも、グレート・ラウネーラによって射出された速度には到達しておらず、もっと飛ばせ――という気分かもしれない。


 レックに余裕など、あるわけもない。


 ただ、確かに――と、他人事のように思い出すのは、魔王様との最終決戦という、昨年の出来事だ。

 10メートルを越える合体ロボット、グレート・ラウネーラの新たなる武装は、勇者を弾丸として射出するロング・ライフルだった。

 バリアでコーティングして、おそらくはレールガンのイメージなのだろう、魔力で包んで、魔力を圧縮した爆発力で、一直線だった。


 砲弾の速度ということで、弾頭のレックはドリルを発生させた、トドメの一撃だったわけだ。

 そのときに比べれば、まだまだぬるいというお話には、納得だ。


 馬の姉さんは、前を向いていた。


「よっし、あとは方向転換と調整に残しておけ――」


 馬の姉さんの命令に従い、レックは連射をストップさせた。


 6つの水球のうち、前の3つは左右と、そして緊急ブレーキとして準備している。残り3つも右へ曲がる、左へ曲がる、そして、直進として連射していたのだ。


 3メートルサイズのボス・モンスターの団体程度なら、ミンチになるだろう、乱射であった。

 幸いにも、冒険者仲間を傷つけたことはない。レックの魔法の特性を理解しているために、砲台の代わりにヘリから乱射をしたり、無人地帯へと置いてけぼりを食らわされりしていたのだ。

 または、レーザー禁止と宣言される、縛りプレイであった。


 魔法学校の敷地内では、久々のレーザーであった。


「………うわぁ~――」


 レックは、つぶやいた。


 ホバーでなければ、運転技術があっても意味はないだろう。砲弾が乱射されたような惨状が、眼下に広がっていた。

 ショット系やアロー系のほかに、カノン系も乱射されたらしい。あるいは、土魔法で地面を陥没かんぼつさせたのかもしれない、もしくは、設置型の魔法の大爆発だろうか、バイクレースの妨害にしては、とってもハデだ。


 ただし、人は散らばっていない。


 救護班は優秀だ。無事であっても逃げ出している。後続車両にぶっ飛ばされたくないだろうし、そして、アイテムも回収されたようだ。後続のレックたちを気遣ったのか、人的被害の心配をしなくていいのが、安心だ。

 でこぼこを超えた凹凸おうとつが目立っているだけだ。


 解説が、叫んだ。


『おぉ~っと、勇者(笑)とアーマー・UFO、追い上げてきたぁあああ』

『ホバーUFOと勇者(笑)レックのレーザーの相性もあるのでしょう、地面に接していないために――』


 レックには分からないが、盛り上がる展開らしい。馬の姉さんの機嫌もよくなっており、それだけでも分かろうというものだ。


 逆転の芽は、残されていると、馬の姉さんが笑みを浮かべた。


「見えてきた――いや、聞こえてきたって所か………」


 不敵な笑みが、レックには見えた。


 それはフラグである。しかし、勝利のフラグでもある、轟音が鳴り響き、トルネード系統の魔法すら発動されているのだろう、風の動きも、とってもおかしい。


 この状況で、走り続けるバイクなどあるのだろうか――


「レック、しばらくはオレの操縦でいく」


 馬の姉さんのご指示に、レックはうなずいた。


 へい――と


 ナイフのように鋭かったUFOのバリアの形状も、ソフトになっている。ナイフのような鋭い流線形から、弾丸のような流線型への変化である。


 上空の立体映像を見ているから分かる、レックはただ、通り過ぎていく背景を見つめるだけである。

 ホバーUFOの上で体育すわりをしている、思えば、この状態で落とされないのも不思議である。縛り付けられると思っていたが、そういう不思議技術らしい。


 剣に杖に、巨大な水晶やロケットランチャーらしきものに、そして砕けた盾が無残にも散らばっていた。


 解説は、盛り上がっている。


『さぁ、盛り上がってきました。リタイアかと思われた勇者(笑)レックとアーマーUFOがタッグを組んで、先を行く先生方に食らいつく勢いです』

『勇者(笑)レックのレーザーはすばらしいですね。残念ながら、人がいる場所では使えないようですが、勢いが生かされているのはホバーの――』


 レックは、ぼんやりと見上げていた。

 ふと足元を見ると、地面に横たわりながら、あるいは座りながら、襲撃者の皆様も上空を見つめていた。

 レックたちが追い上げている様子を上空からの映像で確認している。いくつも立体映像が浮かんでいるため、どれを見ているのか分からないながら、よく分かった。


 レックは、つぶやいた。


「魔法学校、すげぇ~――」


 悟った顔で、見上げていた。



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