初めての、部活? 3
馬術部――
馬に乗る、優雅なる世界である。
異世界ファンタジーに限らず、お嬢様や貴族の皆様が優雅に放課後を過ごすイメージとして、前世は記憶していた。
イメージできたのは、そこまでだった。
「ゆくぞ、次郎丸――」
馬のが、高らかに足を上げた。
ひひ~ん――と言いそうだ、馬術部の顧問のケンタウロスが、名前をジロウと言う細身の馬の人が、ポーズを決めていた。すでに人間モードになっている、姿は侍ファッションであり、メガネがトレードマークだ。
くい――と丸いめがねのお兄さんが、オールバックの漆黒ロングのお兄さんが、くいっとめがねを整えながら………
次郎丸が、いなないた。
「ひひぃ~ん――」
こちらは、馬である。
まさか、ケンタウロスモードで、馬の背に乗るのではあるまいか。そんな恐れが無縁であったのが、ちょっと安心で、見てみたかった気持ちもあって………
他のケンタウロスも人間モードになって、相棒にまたがっていた。
そして、それぞれに迫力をかもし出していた。勝利に命をかけるライダーたちの熱気が、レックをおびえさせる。
レックの出会ったケンタウロスの人は、全員が、バイクに命をかけていた。モノサイクルと言う一輪バイクをバイクと言う分類にするのか、あるいはロボットに変形するバイクのおっさんもいたのだ。もはや、混沌だった。
馬に乗る馬の人がいても、むしろそれが最初の姿かもしれない。
バイク部顧問のロビン先生が、バイクをうならせた。
「勇者(笑)とのレースか………腕がなるぜ――」
大型バイクが、さっそく土煙を上げている。このまま、フライングをしそうな勢いで、土煙を上げている。
となりのアーマー・5の姉さんも、負けていない。
「今度こそ、決着をつけてやる――」
ロビン先生は大型バイクを、そして、ケンタウロスの姉さんは一輪バイクというモノサイクルのエンジンを、ばるるん――と、響かせた。
いや、モノホイールというのだったか、SF気分が沸き上がる。
そういえば、ダンジョンの街から始まり、勝負は付かなかったのだ。妨害や飛び入りのおかげであった。
続けて、レックもばるるん――と、エンジンをうならせるべきだろう。
「レックちゃん、準備はOKですか?」
エンジェル姉さんが、今にもフラッグを振り下ろしそうだ。
レックは、あわてて集中する。エンジンは、すでにかけている。しかし、スタートダッシュが大きく運命を変える。コロッセオはとても広く、学校の周囲は、広大だ。
すでに、準備は終っていた。
「ゴーっ!」
振り下ろされた。
天使のツバサが羽ばたくのと、そして、赤いフラッグが振り下ろされるのは、同時であった。
まさか、闘牛ではあるまいに、皆様がいっせいに土煙を上げた。
レックも、負けずと土煙を上げる。巨体がそろっている中では、圧倒的に不利である。風圧だけで、吹き飛ばされても不思議はない。転倒してもバリアで守ってくれるとは言え、ちょっと相棒が気の毒である。
かろうじて、レックはスタートした。
「………って言っても」
すでに、自転車ではありえない速度に達している。目が慣れてきたといっても、すこし先にあると思っていた岩が、すぐに目の前と言う速度だ。
のんびりと、とろとろ走りたい気持ちで――
レックは、目を見開いた。
「岩?――そんなの」
――あったっけ
頭の中では情報の処理に忙しく、先頭を行くケンタウロスの皆様に追いつくことが優先で、そして、色々と忘れているようで………
コロッセオから脱出したところで、解説が始まった。
『さぁ、始まりました。バイク部顧問のロビン先生が勝利するか、馬術部顧問のジロウ先生が勝利するか、それとも商品の勇者(笑)レックか、飛び入り参加のアーマー・UFOが掻っ攫うか――』
『楽しみですね。勇者(笑)レックは、ここで負けると入部が確定ですからね、おや、射撃部とガンマン研究会とアーチェリー部が、なにやら装備を――』
目の前で、爆発が起こった。
先頭集団にめがけて、色々と飛んで言った気がする。しかし、ものともせず、そして、少し道が悪いな――という状況でも、レックは岩山を走り続けたライダーなのだ、動じることなく、追走する。
目の前で、爆発が起こったとしても………
「………???」
おや、魔法の弾丸や弓矢も降ってきたようだ。レースという時間が始まって、まだ数秒もたっていないようで、レックはただ、前を向いていた。
時間が、のんびりと進んでいた。




