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異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
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魔法学校の入学式 3


 魔法学校

 正しくは王立魔法学校と言うらしい、見た目は、日本のセメントや木造やモルタルの学校といった建物が所狭しと敷地に並び、その周囲を、境界線としてのレンガブロックが取り囲んでいる。


 まるで、要塞だった。


「では、みなさま――クリスタルの輝きが、われらを導く、そう、輝きに導かれる彼らに続いて、さぁ、ゆこう――」


 案内のドロシー先生が、進み出た。

 ちょっと中二が顔を出していたが、それがドロシー姉さんと言う、魔法学校の先生である。

 つられてコハル姉さんと言うエルフちゃんをはじめ、アーマー・5(ふぁいぶ)の姉さん達が続く。

 主役であるはずのレックは、後ろからついていく。

 メイド服を戦闘に、大正ロマンファッションに身を包んだエルフちゃんに、パイロットスーツのエルフちゃんに、馬の姉さんに、ドワーフちゃんに、マーメイドにエンジェルと言う姉さんに………


 そして、レックである。


「クラスメイト、どこ?――」


 レックのつぶやきは、レックの脳内にいる前世も、つぶやいていた。


 クラスメイト、どこ――


 ぞろぞろと、レックたちの前には新入生だろう子供達と、そして、在校生だろう列も続いている。

 ぞろぞろ――と言う表現でも不足なほど、たくさんのクラスメイト達が普通なのだ。


 だが、レックは――


「………ぼっちかぁ~――」


 姉さん達の後ろから、こそこそと歩いていた。

 冒険者枠と言う話は聞いていたが、勇者(笑)枠でもあるのだろうか、入試の実技その他の成績によって選ばれたクラスは、ぼっちクラスだった。


 魔法学校の敷地は広大であり、教室も50人は詰め込める規模なのに、なんとも贅沢な、レックの独り占めクラスだった。

 寂しく、レックが歩いていると、気付けば目的地のようだ。


 メイドさんが、振り向いた。


「では、みなさんは保護者席へ――レック君は、新入生の席へどうぞ?」


 この言葉を合図に、コハル姉さんたちは保護者席へ、そしてレックはドロシー先生に連れられ、新入生の席へと向かった。

 客席へ続く階段を無視して、コロッセオの扉を抜けて、明るい、大きな舞台のある広い空間へと………


 レックは、見上げていた。


「なんで、コロッセオ?」


 ここは、魔法学校だ。

 魔法学校を舞台にした有名な映画なら、巨大な不思議食堂に集まっていた。普通なら体育館で、あるいは文化会館で………


 レックは、周囲を見渡した。


「?????」


 ワケが、分からなかった。


 言われるままに石畳と言う闘技場の舞台に上がると、先客が待ち構えていた。

 古式ゆかしい大正ロマン溢れる女学生のファッションに身を包んでいるのは、レックだけである。

 それは、予想していたが………


「レック、遅いっ」


 ルイミーちゃんが、お怒りだった。

 あくまでポーズである、ほほをリスの人にして、腰に手を当てている、お子様のお怒りポーズである。

 いつものお姿に見えて、本日はちょっと違っていた。


 槍を、手にしていた。


「あぁ、マーメイド姉さんからもらったやつッスか」

「うん、すっごく軽いんだよ?」


 ぶんぶんと、槍を振り回していた。

 クリスタルの輝きに導かれ、ガチャに訪れたときのことだ。マーメイドの姉さんは、マジック・アイテムのやりを手にしていた。

 マジカル・ウェポンのミサイルを乱射するマーメイドの姉さんには不要だったようで、ハズレ扱いをされていたが、一般には十分な実用品である。


 他にも、お子様達が武器を構えていた。

 新入生同士でトレードをするのも伝統のようで、交渉しつつ友情を、派閥を形成していくようで………


「ルイミーの姐御あねご、ここはあっしらが」

「へっ、勇者(笑)だかしらねぇが、俺たちにかかれば――」

「あんたらの出番はないわよ、ここは私のマジック・ショットの乱れうちで」

「野蛮ですわね、ここはわたくしのストーン・トルネードで――」


 ルイミーちゃんは、お友達がたくさんいるようだ。

 入学して早々、新しく出来たのだろう。レックは、さすがはカルミー姉さんのお嬢様だと、ルイミーちゃんへの評価を、更に高めた。


 4人の仲間を、手に入れていたようだ。


「お友達でやんすか、へへ、よろしく――」


 こどもの、あそびだ。


 レックは16歳になったばかりである。2月の末の出来事であり、つい最近の騒動であり、いくつかの記憶は抹消したいと、本気で思っているが………


「レックはなにを使うの?マジカル・ウェポンは使っちゃだめなんだよ?」


 勇ましいルイミーちゃんから、いつものお子様に戻ってくれた。

 放たれた言葉は、爆弾だった。


「………??」


 レックは、周囲を見渡した。


 間違いなく、コロッセオである。

 闘技場と言うスタイルで、数千人どころか、けたをひとつ上げても問題ないだろう収容人数を誇っている。そして中央部には、巨大なブロックで作られた舞台がある。

 メイドさんに指を刺されるまま、ぼうぜんと歩いて、上った舞台である。


 レックが入学試験の実技試験でお世話になった、メイドさんと対決した舞台である。


「入学式………ッスよね?」


 見渡すと、武装していた。

 新入生らしき子供達が、武装をしていた。

 ルイミーちゃんは、マーメイドの姉さんから送られた、ハズレ扱いのマジック・アイテムであるやりを高らかに、おそらくはウィンド・カッターなどの威力を上げるアイテムなのだろう。

 他にも、ハンマーに弓矢にナックルにシールドにと、武器を持ったお子様達が、本気の瞳でレックを見つめていた。


 メイドさんが、近づいてきた。


「はい、ルールは実技試験の最終試験と一緒です………おぼえてるよね、クリスタルのバリアが赤色になったらリタイアですよ」


 さらに、レックは縛りプレイである。

 試験においては水風船を軽々と破られ、メイドさんのナイフが眼前に迫ったものだ。レックの振り回す如意棒にょいぼうなど、かすりもしなかったのだ。


 同じルールかと思っていると――


「水風船も禁止ですよ。レック君が一方的に有利になる要素は、消しますので」


 縛りプレイの、ハードモードらしい。

 どうやら、防御は紙で、武器はザコという状態で、バトルらしい。お相手は、将来が有望なお子様達だ。

 とっても、ピンチだった。


 レックは、何気なくコロッセオの熱気に耳を傾けた。


『――さぁ、さぁ、はった、はった………勇者(笑)VS 子供達。勝つのはどっちだ』

『魔法を封じられて、マジック・アイテム限定で戦うんだろ………それでも――』

『いやいや、勝負にならないじゃ――』

『それって、どっちが――』

『ボクは勇者(笑)に賭けるにゃぁ~』


 どこかで耳にした、猫耳パイロットスーツの叫び声が、レックに確信させた。

 なぜか、大博打を打つプラチナブロンドと言う、素直に銀髪と言っていい、本日はツインテールのラウネーラちゃんは、大損するのがお決まりなのだ。


 前世は、語る。


「フラグ………か」


 レックも、悟った。

 負けフラグか――と




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