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異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
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ノンストップ・お正月


 正月は、三が日と言う。しかし、それはレックの前世である、日本の常識に過ぎない。では、異世界のお正月は?

 エルフの国の、お正月は?


 ツインテールのレックは、乾いた笑みを浮かべていた。


「へへへっ、まるでオレっちだ」


 おはしで、小さなキノコをつまみあげた。

 本日のレックの装いは、ツインテールに、ミニスカ巫女服であった。宴会場の片隅でお雑煮を楽しんでいると、キノコの人に、まだ息があったらしい。

 まるで、レックの心境を現したような姿であった。

 もちろん、偶然である。ちょうど二股に、人間がうなだれているポーズにも見えた。目の前では、巨大スクリーンが立体映像で、勇者(笑)レックの戦いが上映されていた。


『バースト――連射っ!!』

『おぉ~っと、勇者(笑)の新たなる技の誕生だぁ~っ』

『それでこそ、勇者(笑)でありましょう、次々と――』

『ねぇ~、私が引きちぎったほうが――』

『ダメですよ、神様。勇者(笑)さまの活躍を信じましょう―-』


 レックVS魔王様に加えて、お正月スペシャルとして、レックがバーストを乱射して、氷漬けの魔王様を解凍するシーンも追加されていた。

 おかげで解体が楽になったと、マッチョたちに挟まれて、抱きしめられたものだ。もちろんその光景も、上映されていた。


 キノコが、脱走を図った。


「おっと、まちやがれ――」


 レックは、あわてて食いちぎった。

 口の中で、断末魔が聞こえた気がするが、情けは無用なのだ。放置すれば、10メートルを超える巨大キノコとなって、戻ってくるかもしれない。

 さすがは、エルフの国のキノコである。モンスターに分類されていないのが不思議だが、ファンタジーに常識を持ち込むほうが、おかしいのだ。

 それに、キノコ退治の専門家の、赤いチョッキのおじ様がいるのだ。


 今は、大臼おおうすを前にしていた。さまざまなバリエーションがあるため、あのような姿も似合うと言えば、とても似合う。


 レックは雑煮を楽しみながら、見つめていた。


「あんな敵キャラも、いたっけ――」


 キノコの次はお餅を口に入れつつ、レックは見ていた。

 巨大化をした4頭身の髭のおっさんが、羽織袴を羽織って、大きく振りかぶっていた。

 しかも、ジャンプつきだ。


「いくぞ、ラッキーっ」


 相棒を、呼んだ。

 青いジーパンに赤いチョッキのおじ様の相棒といえば、ドラゴンである。それは、転生者が、正しくは日本人が持ち込んだ知識であろう。

 ラッキーが、お返事をした。


「げろげ~ろっ」


 イグアナが、お返事をした。

 頭から尻尾まで5メートルか、7メートルか………イグアナと言うスタイルのドラゴンが、ところどころ羽毛があるが、イグアナスタイルのドラゴンが、お返事をした。

 レックなどは、中の人の存在を疑うが、ここはファンタジー溢れる異世界である。しかも、常識の通用しないエルフの国なのだ。


 本日のイベントで、大活躍だ。


「さぁ~、盛り上がってきました餅つき大会っ、キノコ退治の名人、ドワーフのイワマルが、登場だぁ~――」

「勇者(笑)ではないが、日本人の影響を受けたドワーフは――」


 司会のエルフに解説のエルフに、お正月はすでに5日目を越えて、延長試合を行っている。氷付けの魔王様は解体されて、オールナイトの宴会が初日であった。

 前日の大晦日の料理大会から続いているエルフもいるらしく、二日目は大食い大会のほかは、上映会でのんびりしていた。

 これでフェードアウト思ったのが甘かった、遠方のエルフから、各党大会から色々と、あらゆるイベントを突っ込んでくるのだ。


 本日は、餅つき大会だった。


「やってみぃ~やぁ~」


 ドワーフが、ジャンプした。

 キックジャンプで飛び上がり、力いっぱいうすをめがけて振り下ろすシーンは、大げさながら理解できる。

 合いの手が、ドラゴンだった。

 とても長い爪で、どのようにもちをひっくり返しているのか、二本足で立ち上がり、片手を出しては引っ込めて、もちを転がしていた。


 レックは、となりのエルフちゃんを見つめた。


「………あれって――」


 色々と、不安だった。

 エルフ姉妹は、にっこりだった。


「おもちつきよ?」

「日本人の、お正月よ?」


 そろって、本日の気分はツインテールのようだ。背中まで髪の毛が伸びているレックは、セミロングと言う長さだろうか、春までには、もう何センチか延びるだろう。

 背の高さも伸びてほしい、もちろん《《4姉妹》》として、レックもツインテールだ。


 もち米の代わりにミンチがこねられているのか、中身がとっても怖いレックは、話題を変えることにした。


 ボロボロの、ロボを指差した。


「そういえば、あのロボ――」


 禁句だった。

 焦りが、間違った方角へと、レックの手を伸ばさせた。ライバルを前にしたお子様と言う反応が、発生する。


「ふんっ、やっぱりレックもロボなのねっ」


 エルフちゃんが、突然に不機嫌になった。

 最新のファッションで注目を集めても、ロボの登場で掻っ攫われるために、仕方ない。見た目どおりの12歳の精神は、永遠なのだ。


 そこへ、さらなる12歳が降り立った。


「ついに、新たなステージだにゃ~」


 銀色ヘアーが、降り立った。

 パイロットスーツは白をベースに、赤い縁取りはお正月の楽しさの演出だろうか、猫尻尾には鈴が、とてもにぎやかなエルフちゃんだ。

 語尾は当然、にゃ~ ――である。


「あの姿は見納めだから、みんな、別れを惜しんでるんだにゃ~」


 ラウネーラちゃんが、とってもご機嫌だった。

 まるで、タイミングを見計らっていたかのようだ。だが、レックには穏やかではない。ご機嫌斜めなエルフちゃんの下へ、ご機嫌斜めの原因が降り立ったのだ。

 大喧嘩になれば、巻き込まれるのはレックである。


 気にしないラウネーラちゃんは、拳を掲げた


「改造が、待ってるにゃ~っ」


 尻尾もピンと伸びて、気合十分だった。


 周囲から、気配に気付いたエルフたちもパワーアップコールで、盛り上がる。ロボがボロボロでも、ラウネーラちゃんがご機嫌である理由らしい。特撮だろうがアニメだろうが、ピンチでダメージと言うロボは、復活するのだ。


 パワーアップをして、復活するのだ。


 次は、新たなるサポートロボの登場だろうか、グレート・ラウネーラを超える、超進化・ラウネーラロボの登場に、胸が高鳴るレックである。


 おとなりの金髪エルフちゃんが、涙目だ。


「レックも、ロボがいいのね………せっかくの衣装も、全部ロボが持っていくのね」


 見た目は12歳と言うエルフちゃんが、悔しそうだった。

 引っ張りだこで、どこへ連れて行かれるのだろうか、エルフの国は、スーパー・ハードなのだ。日常の食料と言うオークの皆様は並みのボスクラスであり、10メートルサイズのロードという巨大すぎるオーガの団体様が訪れても、おかしくない。


 さらに恐るべきは、新たな魔王様が、仲間の敵と訪れる可能性であり………


「フラグらないでくれよ、頼む、フラグらないで――」


 フラグしないで下さい、フラグしないで下さいと、レックは神様に向かって、お祈りをしていた。

 本日のファッションは、十二単じゅうにひとえであった。歩くことができないが、エルフ様たちが着せたのだろう。控えている奥方達がにこやかに、移動の補佐をしておいでだった。


 唐突に、レックは手を引かれた


「そうだっ、餅つきといえば、日本人だからね――」


 エルフちゃんが、邪悪な笑みを浮かべていた。

 飛び入り参加が歓迎と言うエルフの国のイベントである。餅つき大会であっても例外ではない、手を引かれたレックは、悲鳴を上げた。


「またぁああああ~?」


 正月でも、勇者(笑)に休みはないらしい。


 そしてついに、2月になった。





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