表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
197/262

クリスマスと、女子会 1


 冬の始まりの朝、丸々とした毛並みの小鳥達が、チュンチュンと鳴いている。

 雪が降ってもおかしくない、そんな空模様を見つめているレックは、見つめていることしか出来なかった。


 エルフちゃんが、ご機嫌だった。


「レック、だいぶ髪の毛が扱いやすくなったわね~………春までには、私と同じくらいの長さになるのかな?」


 コハル姉さんと言うエルフちゃんは、レックの髪の毛で遊んでいた。

 お出かけの、準備であった。

 レックが逆らうわけがない、見た目12歳のエルフちゃんに命じられるままに、床に座っていた。


「へへへ、春に姉さんと出会って、もう冬になりやしたからね………」


 ポニーにツインにと、コハル姉さんとおそろいというヘアスタイルに遊ばれる日々は、いつもの光景だった。


 ファッションも、おそろいである。


「もう、クリスマスウィークだもんねぇ~」

「へへっ、サンタさんの季節っすねぇ~」


 レックは、鏡を見るのが怖かった。

 男の娘として転生したのかもしれない。そんな気持ちになって、エルフの国では《《4姉妹》》として日々を過ごしていた。

 本日のファッションは、町並みに合わせて、サンタコスプレである。

 見た目が12歳と言うコハル姉さんの場合は、ミニスカが魅力を持つというよりは可愛らしく、カラーはライトグリーンであった。


 レックのサンタは、レッドだった。


「はい、できた」

「………へへっ、いやぁ、たのしみだな~」


 ミニスカ姿の15歳の少年は、17歳の少女にも見えるだろう。レックは、鏡を見るのが怖かった。

 そんな言葉を口にするわけは無い、レックの心の中の、わずかなる抵抗に過ぎない。すでに、あきらめているからだ。

 鏡の中では、姉妹が仲良くコスプレをしていた。


 そう、《《姉妹》》である。


「さぁ、でかけるわよっ」

「………へぇ~い」


 レックは、お返事をした。

 荷物は、アイテム・ボックスに入っている。ホテルの部屋の戸締りをしっかりとして、朝からお出かけだ。


 まるで、クリスマスデートである。

 15歳の少年としては、夢に見るシュチュエーションだ。彼女いない暦イコール年齢は、前世もレックも、同じなのだ。


 だが………


「転生者って、本当に色々してくれるよね~」

「へへへっ、なんか、すいやせん?」


 コハル姉さんに手を引かれて、仲良し《《姉妹》》は、町を歩いた。

 イルミネーションは、電気というより魔法のクリスタルを使っているのだろう。前世ではありえない、空中に浮遊する明りやオブジェが、色々と輝いていた。


 立体映像も映っており、ややSFというクリスマスのイルミネーションが、王の都を、ハデに彩っていた。

 遠くに見える万博も、円盤の皆様も、クリスマスのイルミネーションに輝いている。そんな町並みを、レックはミニスカサンタで歩いていた。


 ミニスカなのに寒くないのは、久々のミニスカに羞恥心がよみがえったからか、魔法のおかげなのか………


 レックは、微笑んだ。


「春になれば………入学式か――」


 現実を忘れるべく、未来に思いをはせた。

 片手は、見た目12歳のエルフちゃんに奪われている。だが、もう片方の手には、受験票がセットのクリスタルが握られていた。

 コハル姉さんが教えてくれた、簡単なデータのやり取りが出来るという。合格すれば、教えてくれるらしい。

 通信はできないが、受信限定だが、この世界においては革新的だろう。レックの脳内では、前世の浪人生が、学者ぶっていた。


 まるで、ポケベルだ――と


 ケータイが普及する以前の、最新の通信装置だったという。4文字の数字が送信されて、8451であれば、ハヨコイ………緊急の呼び出しという意味らしい。

 使ったことは無くとも、知識として知っていたのだ。


 突然、ベルの音が鳴り響いた。


 ぴりりりり――と、この世界では聞きなれない電子音が、鳴り響いた。


「あぁ~、私だぁ~」


 エルフちゃんが、上機嫌だ。

 ケータイを持っている人間は、とても少ない。最新のファッションに身を包み、ご機嫌なコハル姉さんは、どこからかケータイを取り出した。ミニスカのポケットに入るはずの無い、むしろ映画で登場するトランシーバーという通信機器が、現れた。


 ぽちっと、エルフちゃんは電話に出た。


「は~い、もしもし、わたし~――」


 とっても、嬉しそうだ。

 みつあみの金髪を揺らして、キョロキョロと周囲を見ながら、お話をしていた。待ち合わせのために、ケータイを使ったらしい。位置情報は表示されないのか、それ以前に、魔法で探知できそうだが………


 巨大な腕が、レックには見えた。


「………あの、コハル姉さん………?」


 ミニスカサンタが、歩いてきた。

 姿は、確かにミニスカのサンタ様である。ミニスカであるのか、ロングがミニに見えてしまうのかは、分からない。

 太ももが、ムキムキだった。


「あぁ~、こっちこっち~」

「あぁ~………待ち合わせの相手って、アリスちゃんッスか」


 周囲より、頭がくっきりと出ていた。2メートルオーバーのマッチョは、サンタスタイルであった。いいや、魔女っ子スタイルのサンタバージョンといったほうがいいかもしれない。


 カラーは、紫であった。


「あらん、レックちゃんもコハルちゃんも、よく似合ってるわねぇ~」

「はぁ、はぁ、レック君………分かってるじゃん――」


 余計な人まで、セットだった。

 水色のロングの姉さんは、とても久しぶりだ。瓶底メガネに博士の白衣という残念ファッションの姉さんは、転生者の先輩の一人である。


 気付けば、周囲にカメラが浮いていた。


「ほら、ポーズを忘れてるよ、カメラ目線も忘れずにねっ」


 腐女子の姉さんが、ヘカトンケイルというマジック・ハンドの能力を駆使して、カメラを操っていた。テクノ師団に所属のアラサーの姉さんである。


 レックは、自動的にポーズをとっていた。


「………ヘカトンケイルでしたっけ………おひさしッス――」


 目視できないマジック・ハンドの数は不明だ。レックは見えない手によって、いつの間にかポーズを決めていた。

 エルフちゃんも、酸化をしていた。


「ひざの角度はこうね?」

「コハルちゃん、ウィンクも忘れちゃダメよ?」

「うひひひ、アリスちゃんも分かってるじゃん」


 クリスマスカラーの大通りでは、ファッションショーが行われていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ