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異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
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魔法学校の、入学試験 5


 三次試験は、攻撃魔法の射撃だった。

 ただし、レックの場合は、冒険者枠であるため、そして、シルバー・ランクの<上級>であるために、テスト内容はハードモードだった。

 100メートル地点、400メートル地点、そして1キロメートル地点であった。


 では、並みの入学試験とは、どういったものだろう。


「いやぁ~、さっすがルイミーちゃんでやんすね~、百発百中ってのは、まさに――」


 レックは下っ端モードで、9歳の魔法少女の活躍を褒め称えていた。


 レックとは異なり、一般的な試験である。そのため、10メートル地点にある標的であり、3つとも、打ち抜かれていた。

 百発百中と言う言葉は、大げさではなかった。


 ドロシー姉さんも、ほめていた。


「3点バーストに、ウィンド・カッターに、ウォーター・カノン………どれも命中で、すばらしい成績ですね」


 標的は、3つである。


 例え外したとしても、レックのように的の人が無事であったとしても、的の破壊だけが目的ではない。魔法を見ることが、目的なのだ。

 威力に、射程に、制御力に………


 得意魔法のお披露目であり、複数であれば、いくらか試す余裕もある。

 ルイミーちゃんは、3点バーストで確実に標的を撃ちぬいた。そして、2つめは風魔法のウィンド・カッターで真っ二つに、3つ目は最大の威力のカノン系で、木っ端微塵にしたわけだ。


 レックは、褒め称えた。


「いやぁ~、ルイミーちゃんは6つのときから魔法を使えてたけど………まさに、天才って感じっすね」


 下っ端パワーが通常のレックだが、ほめ言葉は本心である。

 転生チートによって、魔力がばかげてパワーアップしたレックと異なり、ルイミーちゃんは自らの才能なのだ。オーク程度なら、確実に倒せるだろう。それどころか、3メートルサイズの、並みのボス・モンスターすら討伐できそうだ。


 レックの言葉は本心なのだが………


「ぷぅ~っ」


 可愛らしいほっぺが、リスのようになっていた。

 母親譲りのロングヘアーをなびかせて、魔法のステッキを前に突き出した状態で、ルイミーちゃんはほっぺたを膨らませていた。


 レックは、焦った。


「えっと、いったい――」

「レック君、キロ単位の乱射をしておいて、それは………」

「ふふふ~、噂には聞いていたけど、本当にエルフ並なのねぇ~」

「ぷぅ~っ」


 レックは、いったいどういうことなのかと、そして理解する。魔法学校へは冒険者枠として推薦され、そして、魔力値はエルフレベルであった。

 当然、実技試験はその能力に見合ったもので、遠くの的と言うハイレベルな試験内容である。

 外したとしても、土ぼこりが1キロはなれた場所からも見える、レーザーの乱射だった。中級魔法の、それも上位に位置する。


 カルミー姉さんが、のんびりと感想を漏らした。


「私達『爆炎の剣』の総攻撃を、連続で出来るってレベルかぁ~………やっぱり、転生者って言うのは、驚きよね~」


 かつてのレックを知っているため、驚きは本心であろう。ご自身もシルバー・ランクの<中級>という魔法使いのお姉さんである。魔法の杖と言う力を借りて、自らの魔力を高め、上級魔法に匹敵する竜巻を発生させ、ボス・モンスターを討伐するお姉さんである。


 追い抜かれたと、認めていた。


「やっぱ、オレってチートしてる?」


 レックは、申し訳なさが湧き上がる。

 ひゃっほぉ~――と、以前であれば飛び上がって調子に乗っただろうレックは、目の前でほっぺたを膨らませた9歳児を前に、反省していた。

 なんか、すんません――と、申し訳なさそうだ。


 ルイミーちゃんは、杖を母親に渡しながら、母親のカルミー姉さんの陰に隠れながら、レックを見つめていた。


「レックの癖に………」


 ご機嫌は、とっても斜めだった。

 悔しさに暴れださないだけ、ルイミーちゃんは大人な9歳児である。レックの実力は、認めているのだ。

 そのため、レックには申し訳なかった。転生と言うチートによって、レックははるかに高みにいるのだ。


「レックの癖にぃ~………」

「えっとぉ~――」

「あらあら~」

「では、最終試験に移りましょう」


 微妙な空気の中、メイドさんは宣言した。


 会場には、カメラアイ・ボールの皆様も集まっている。レックの長距離射撃のため、遠くへと向かっていた皆様だ。そして、レックが見事に標的を外して、土ぼこりを上げる現場を撮影してくれたのだ。


 現在、リピート再生されていた。


 前世、負けてるよな――と、レックの頭の中では、自称・高校4年生の前世がひざを抱えて、画面を見ていた。

 クリスタルから、空中に投影された映像は、標的の周囲を吹き飛ばし、その余波で標的が舞い上がるシーンが、よく見えた。


 レックは、乾いた笑みだった。


「へへへ………最終試験で、挽回ばんかいしないと――」


 とっても、不安な気分で、移動が始まった。

 リピート再生は、自動的に終ってくれるのか、まさか、カメラアイ・ボールの皆様が楽しむために流し続けるのか………

 いや、中の人はいないと思いたい。


 レックは、そして思い出す。


「あのぉ~、そういえば、最終試験の内容ってのは――」


 最初の説明だった。お姉さんぶるメイドさんは、なんと言ったのだったか


 最終試験は、油断しないように――


 実技試験の射撃場では、とても不安な結果となったレックである。これ以上に、一体何が起こるのか、せめて知りたかったのだ。


 ロングヘアーが、振り向いた。


「さぁ、バトルの時間です」


 両手を広げて、闘技場が目の前だった。


 魔法学校は、とても広大だ。ゴーレムの門から通り抜け、日本の学校のようなコンクリートやモルタルの校舎を抜けて、カフェテリア方式の食堂を抜けて………

 屋根つきの会場を背後に射撃の試験をしたあとは、闘技場までまっすぐだった。


 レックは、見上げた。


「コロッセオ?」


 屋根付きの通路を抜けると、そこは格闘漫画の世界だった。

 石畳に、観客に、ゴーレムがいたるところで、門番のように守っている。バリア発生装置らしいクリスタルもちらほらと、観客を守るためだろう。


 メイド姉さんは、にこやかに笑っていた。


「さぁ、レックよ………戦おう」


 中二が、顔を見せていた。





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