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異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
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魔法学校の、入学試験 3


 運動場に、土ぼこりが待っていた。


 レックの前世の運動場とは、少しイメージが異なる。いくつかの区画に分かれている、土壁で区切られて、区切りは明確であった。

 むしろ、射撃場であった。


 レックの前に、カメラアイ・ボールが浮かんでいた。


「へへへ、やっぱ、SFッスか」


 テクノ師団の保有する、魔王様との戦いの後もたくさん見かけた、カメラアイ・ボールの人が、レックを見ていた。

 それなりに、普及を始めているのではないか。バスケットボールサイズの、木目のボールが、空中に浮かんでいた。


 通信能力を保有し、自分を守る程度のバリアも張れて、とっても高性能なボールの人であった。


「ピッチャ~、張り切っていきましょ~――」


 しゃべりやがった。

 レックは、長く使っていなかったスナイパー・ライフルを思い出す。


「………おい、親戚か?」


 レックはアイテム・ボックスからスナイパー・ライフルを取り出すと、問いかけた。解説の田中さんまで、近くにいる予感がした。

 モンスターの討伐において、長距離からの攻撃において、ツッコミをしてきたスナイパー・ライフルは、おしゃべりだったのだ。


 メイドさんが、待ったをかけた。


「レック君、魔法学校の試験ですからね。マジック・アイテムの使用はいいですけど、マジカル・ウェポンは禁止です………入学案内、読んでない――って、言ってたっけ」


 残念な子を見る瞳で、レックの肩に手を置いていた。

 冒険者としての試験において、マジカル・ウェポンの使用は当然、認められている。攻撃魔法を扱えなかった当時でも、マジカル・ウェポンのおかげで、生き延びることができたのだ。


 だが………


「ここは、魔法学校ですよ。訓練でも、基本的にマジカル・ウェポンの使用は禁止です。モンスターの襲撃など、攻撃力が必要なとき意外は、使わないようにね?」


 当然のお言葉に、レックは素直に従った。

 最近、まったく出番のないマジカル・ウェポンであるが、言葉を交わすこともなく、アイテム・ボックスへと消えていった。


 レックは、隣の目線に気付いた。


「えっと………ルイミーちゃん、なんでやしょ?」


 小物モードで、しゃがみこんだ。

 手を合わせて、ゴマスリモードで、9歳児を見上げていた。


「アイテム・ボックス………ずるいっ」


 リスのように、ほっぺたを膨らませたお顔であった。そして、手をぶんぶんと振り回していた。

 魔法のステッキで殴りかかってこないだけ、ありがたいとレックは思った。魔法の練習では、小さなステッキが魔法少女のお約束である。


 この世界でも、一般的な魔法使いには、必須である。


「私たちも使えないからね~………残念だけど、生まれ持った才能の違いってことよ。レックちゃんの場合は、転生者として覚醒する前から?」


 唯一の、特技であった。

 マジック袋や封印の宝石があるため、必要ならそれらを購入、あるいはレンタルをすればいい。しかし、レックのアイテム・ボックスの容量はそれなりにあり、次世代の魔法使いを育てる意味でも、カルミーたち『爆炎の剣』は、レックを荷物持ちとして、何度も誘ってくれたのだ。


 メンバーとして迎えるという話すら、あったほどだ。


「へへへ、水汲みが面倒だって、気付いたら使ってやしたからね………」


 アイテム・ボックスという能力が覚醒したのは、村人生活の偶然だった。水汲みの往復が面倒と言うことで、楽をしたいと、気付けば手にしていたのだ。


 魔法とは、そういうものだった。


「はいはい、お話は試験が終ってからでね………実技試験の内容は、自分の得意とする魔法を使って、標的に当てることです。冒険者枠の場合でも、改めて実力を見せてもらうことになってますので………レック君は、あれね?」


 メイドさんは、改めて指差した。


 射撃場は、長距離の攻撃にも対応している。とても、とても広い空間に、一定間隔で標的が設置されている。

 キロ単位でも、設置されていた。


「見えないッスよ………」


 レックには、見えなかった。なにかが輝いたかな――と言う程度だ。


 そして、そのためにカメラアイ・ボールの人が、遠くで見守ってくれているらしい。やっと気づいたが、射撃場に備え付けの画面には標的が映し出されていた。


 もちろん、クリスタルによる空中投影だ。


「ショット系は10メートル、アロー系は20メートルを最低ラインとした射程距離ですけど、上級魔法になると、キロ単位ですからね」


 レックのレーザーは、上級魔法並みの射程を手にしているわけである。


 ただ――


「双眼鏡、貸してくれません?」


 レックには、見えなかった。




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