表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
176/262

新装備と、勇者(笑)


 レックの前世は、燃えていた。

 戦隊シリーズにおいては、序盤では武器を持ったヒーロー達が戦い、そしてクライマックスではスーパー・ロボットの登場なのだ。


 巨大モンスターには、巨大なるロボット様がお約束は、半世紀以上にわたる、日本の伝統なのだ。


 ロボが、ファイティングポーズをとっていた。


「いや、お前じゃねぇから」


 テクノ師団の隊長殿が、ツッコミを入れていた。

 バイクが変形した3メートルほどのサイズのオート・ロボットが、今にも戦おうと、相手を挑発していた。

 相手が悪すぎる、100メートルを超える魔王様なのだ。


「がはははは、オレ様のロボも、いつかは――パーツか、そうだな。パーツで合体のコアにするなら………しかしなぁ~、ラウネーラのような魔力がないとなぁ~」


 馬のおっさんは、本気で悩んでいるようだ。レックは、決してツッコミを入れてはならないと、自らを抑えていた。

 バイクへの愛が深い、馬の人なのだ。モンスターと戦うためのバイク・ロボのはずだが、傷が付けられれば、とってもお怒りになるのだ。

 馬キックの嵐が、見舞われるのだ。


 結果、モンスターの団体様が全滅するならよいと思うが、相手が悪すぎた。


 レックは、改めて見上げた。


「グレート・ラウネーラ様………待っておりやした」


 10メートルを超える巨体を、見上げていた。

 100メートルを超える魔王様に対し、さすがにサイズが不足である。それでも、15歳のザコと言う自分を放り投げられるより、はるかに安心という巨体なのだ。


 エルフちゃんが、レックにしがみついていた。


「レックぅ~………出番が終わり――なんて、思ってないわよねぇ~?」


 巨大なヘビー・マシンガンがレックを羽交はがめにしていた。レックごときザコが逆らえるわけもない、アーマー・マシンガン様のお言葉だった。


 レックは、微笑ほほえんだ。


「へへへ、あっしごときザコなんて、とてもとても………もう、グレート様がお出ましになったんなら、あちらの実況席で、お手伝いなど――」


 下っ端パワーで、微笑ほほえんだ。

 こき使われてもいいが、もう、100メートルを超える巨体へと投げられるのは、勘弁願いたい。


 魔王様が、もう、すぐそこだ。


 ずしん、ずしん――と、近づく音が地響きで、恐怖をあおる。走ってこないのは、サイズから不可能なのか、いや、そもそも100メートルを超える巨体である、常識など、無意味であるが………


 魔王様が、到着された。


「おぉ~、到着だね」

「へへ、グレートの姉さん、出番でやす」


 みんなが見守る中、魔王様が到着した。

 姿は、オーガをベースとしている、ただし、首は1つでなく、腕もたくさんで、ツバサまである。

 そして、尻尾もある。どのような攻撃をしてくるのか、まだ、反応が鈍いが、本気を出される前に倒したいのが、人情というものだ。


 グレート・ラウネーラ様は、ジャベリン?を構えた。


 レックは、固唾かたずをのんで見守る。そのまま、突撃するのか、あるいは、強力なビーム攻撃でも始まるのか、一方の魔王様は、炎でも吐くのか………


 武器を構えたポーズで、可愛らしいお子様の声が響いていた。


「この新装備………どう使うんだにゃ~?」


 可愛らしい、お子様の声だった。

 ごっこ遊びであれば、とてもかわいらしいシーンである。魔王様が目の前で、グレート・ラウネーラ様というスーパー・ロボットから放たれては、大変だ。


 しかし、それは勝利を前にした、おふざけというものだ。張りぼてでないことは、グレートになる前の戦闘力で、レックは知っている。

 目から放たれるビームだけで、レックのレーザーを、上回るのだ。


「へへへ、ご冗談をって………ねぇ?」

「うぅ~ん、あの博士だから………ねぇ?」


 レックの不安は、レックを羽交はがめにするエルフちゃんが、増幅させていた。

 このときのために――というタイミングで射出された武器なのだ。なら、一度しか使えない、暴走の恐れがあるなど、とてつもないリスクも、お約束である。

 勝利も、約束されているはずだ。


 不安なレックの頭上から、じい様の声が響いた。


「あぁ、勇者(笑)カノンと言ってな、単発なのがネックだが、勇者(笑)と言う弾さえあれば、何度でも撃つことが出来るのだ。そう、勇者(笑)こそ、カギなのだっ!」


 ロボット研究所の、博士のジジイであった。

 空中要塞からの、フラグだった。


 ――『勇者(笑)こそ、カギなのだっ!』


 この言葉は、いったいなにを意味するのだろう。白衣を着たジジイによる、自慢げな笑みが目に浮かぶ。

 フラグが、レックの胸のうちを駆け巡る。


 巨大な手のひらが、レックの前に現れた。


「さぁ、魔王の元へいくんだにゃ~」

「がんばってね、勇者(笑)さま」


 レックは、あがいた。


 グレート・ラウネーラが手にしていても、巨大なジャベリンというサイズである。

 射出カタパルトにも見えるし、ロング・ライフルにも見える。SF作品やロボットアニメでは珍しくない、ライフルである。


 では、弾丸は?


 ややSFに発展した世界であれば、クリスタルであり、魔力が答えであろう。なら、わざわざ『勇者(笑)カノン』などと、名前をつけるだろうか。


「フラグった、フラグった、フラグったぁああああっ」


 レックは、あがいた。

 必死に、あがいた。


 せっかくスーパー・ロボットが現れたというのに、なぜ、射出されねばならないのか。グレート様の手に捕まれば、砲弾として、ロング・ライフルの中を超高速で通過して、魔王様に突撃させられるのだ。


 そのときだった。


「はぁ~、はっ、はっは~、真打しんうち、登場っ!」


 おっさんの、笑い声と、宣言だった。

 レックたちの目の前で、なにかが光り輝いた。やや距離があるものの、声の主は、ジャンプで、こちらへとやってきた。

 マントをなびかせて、ゲームに登場しそうな、勇者様スタイルだ。


 かなりの力を持つ人物らしい、そういえば、ダンジョンの町から魔王の封印された神殿への移動は、転送魔法だったと思い出す。


 エルフちゃんが、見上げていた。


「青の鎧に、氷の剣………あぁ、こっちに来たんだ――」


 お知り合いのようだ。

 説明してほしかったレックだが、その必要はない。鎧のおっさんには、マントをばさ――と、ひらひらとさせて、自己紹介を始めた。


「待たせたな、月夜の勇者エリック、氷の魔剣を手に、ただいま登場!」


 新たな勇者(笑)が現れた。かつて勇者(笑)と呼ばれ、永遠に勇者(笑)だと言うおっさんである。


 ぬ~――と、グレート様の手のひらが、現れた。


「もう、だれでもいいにゃ~っ」


 ラウネーラちゃんに、捕獲された。


 金髪のツインテールちゃんは、レックを羽交はがめにしたままだった。だが、ちょうど目の前に飛び降りた勇者(笑)様がいるのだ、捕まえない手はない。


 名乗りも早々に、『月夜の勇者エリック』は、捕らえられた。何か、叫び声が聞こえたが、気にする人間は、ここにはいない。


『月夜の勇者エリック』は、光になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ