お待たせの、スーパー・ロボット
ホバーUFOが、輝いていた。
「はははは、だれも、オレの前を走るんじゃねぇええ」
背の高い、スレンダーなケンタウロスのお姉さんが腕を組んで笑っていた。
輝く赤毛をなびかせて、UFOによる魔力の刃のスラッシュ攻撃が、凶悪である。黄金のパイロットスーツに変身してUFOのバリアを変化、巨大なナイフで突撃だ。
「おれっちも、まけてないぜっ」
半ズボンスタイルのドワーフの姉さんが豪快だ。
乗員1名のミニ戦車が、冗談のピンクと卵色でカラフルに、左右一対のカノンがギラリと、輝いていた。
一対のカノン砲が、乱射されていた。真正面からは、カエルさんが睨んでいるように見える不思議である。
空も、にぎやかだ。
「くらいなさい、エンジェル・ガトリングっ」
エンジェルは、関係ないだろう。葉巻をくわえて、ガハハハハ――と、ブロロロロ――という轟音が、ボスモンスターたちに、悲鳴を上げさせていた。
赤いレザーのミニスカートという、攻撃的ファッションは、スタイルのよさを良く理解していて、恐ろしい。
金髪に青い瞳が、空を滑空しながらバルカンを乱射の、死に神だった。
パラグライダー?で滑空のマーメイドさんも、仲良く死に神だった。
「悲しい空に、花を咲かせてごらんに入れましょう――いっくでぇええ」
なにを元ネタにしているのか、レックには分からない。マーメイドの姉さんが、エンジェルさんと共に、空中からミサイルを乱射していた。
セーラー服の意味があるのか、突っ込んではいけない。テクニカルな翼にセットの、パラグライダーモードである。
殺戮を背景に、レックは恐る恐ると、手を上げた。
「えっと………ロボに一票?」
ずっと、レックは主張してきた。100メートルを超える魔王様の登場なのだ、巨大ロボットの出番で、よいではないか――と
しかし、こだわりのあるエルフちゃんたちに、拒まれていたのだ。
勇者(笑)による討伐に、こだわりがあるのだ。何度も投げられ、そして、はじかれた本日である。
賭けのボードが、悲しくたたずむ。賭けてくれた皆さんには申し訳ない、レックの勝利は、大博打だ。
敗北のオッズは、1.1倍だ。
「はぁ~………そうよね~、小さくても、男の子だもんね~………」
コハル姉さんが驚いていることから、予想していない状況らしい。少なくとも、エルフの国からの知らせではない。中継されていれば、画面越しにレックの活躍を応援してくれているはずだ。
酔っ払いの悪魔達が、叫んでいるはずだ。
ラウネーラちゃんが、腰に手を当てていた。
「ふっ、やはりボクのロボが出てこないと、始まらないようだにゃ~」
胸を張って、自慢げにコハル姉さんを見ていた。プラチナブロンドと言う、銀のツインテールがゆらゆらとゆれて、かっこいい。
そして、コハル姉さんは悔しそうだ。
「王子君………めったに見れないからって………楽しみにしてるって」
「ふっ、ボクのロボのよさを分かるとは。さすがザーサの息子だにゃ~」
「チビのザーサも、あんたのパイロットスーツを着て遊んでたもんね、ぶかぶかだったけど、かっこうをつけちゃって」
「人間の成長は早いのにゃ~、でも、心はいつまでも少年なんだにゃ~」
チビのザーサとは、今の王様のことである。なんとも、エルフとの時間の流れを感じさせるお話であった。
どうやら、王様の所へも、中継されていたようだ。そして、王子君と呼ばれる、ホバーUFOで王城の庭を暴走していた少年が、ワガママをおっしゃったらしい。
ロボを、出せ――と
ラウネーラちゃんは、クリスタルを取り出した。
「さぁ、出番だにゃぁああっ!」
ロボが封印されている、クリスタルであった。
「あのぉ~、バトルは始まってるんッスけど………」
タツヒコの兄貴が、恐る恐ると、手を上げていた。
背後では、コハル姉さんを除くアーマー・5の姉さん達が、トリガーハッピーをしていた。
ゴーレム軍団も巻き添えかもしれないが、だれも気にしない。
整列していたゴーレム軍団は、個別操作というよりも、自動攻撃システムというべき、勝手に襲い掛かっていた。
いっせいに動き出したこと、整列していたことから、単純な命令に従うようだが、敵味方の識別が、怖いのだ
間違えて、教われないかと、不安なのだ。
この疑惑は、フラグでないことを祈りたいレックは、上を見ていた。
「クライマックス………ッスね」
クリスタルの輝きが、巨大なシルエットを浮かび上がらせていた。
上空に光の柱が立ち上り、その中にロボのシルエットが浮かび上がり、ホログラムのようで、それはすぐに実態となる。
スーパー・ロボットの登場だ。
「あぁ~………みぃ~んな、そっちにいっちゃうのね………」
コハル姉さんのつぶやきに、ちょっと休憩――とばかりに、アーマー・5の姉さん達が、集まった。
ロボの登場シーンにあわせ、集合状態だった。
「コハル、あきらめろ。男でなくても、燃えるってもんだ」
「おれっちも、あと魔力が倍ほどあれば………」
「あなたの本当の能力も、大概よ………巨大ゴーレムモードだっけ?」
「昨日、ダンジョンで活躍したやん。今日はタンクで、カノンしとき」
スーパー・ロボットの登場なのだ。
ラウネーラちゃんが、とう――と、光の中へと飛び込み、そして、一つとなる。なんとも、輝かしい光景であった。
ジジイが、うるさかった。
「ほれほれ、ワシのゴーレム軍団が、どんどんボスを倒しとるぞ。ほれほれ」
往生際の悪いことだ。コントローラーは、ただの飾りだろう。非常停止ボタンの意味があるのかもしれないが、せわしなく十字キーやスティックを動かしているふりは、ふりだけのようだ。
モンスター同士の、共食いに見えて、グロテスクだった。
振動が、実況席を揺らした。
スーパー・ロボットの降臨だ。
「え~、実況のドロシーです。ただいま、スーパー・ロボットが降り立ちました」
「クリスタルの輝きが、救世主をこの世に解き放った。もはや――」
「すごいもんだ………っと、食材食材――」
「あきらめなよ、ゴーレム軍団が食い散らかしてるぜ?」
「これ、タツヒコ、倒してると言わんかっ」
横長のテーブルに、カメラ・ボールの大群を操るだろう制御盤らしき、クリスタルの輝きに………
お手伝いのタツヒコの兄貴だけが、常識人に思えたレックは、改めてロボを見上げた。
「たのんます、僕らの希望、スーパー・ロボ――」
「レック~、あんたの出番もあるんだからね、忘れないでねぇ~」
金のツインテールちゃんが、巨大なヘビー・マシンガンを手に、レックにしがみついてきた。鋼鉄の腕が、レックを締め上げるようだ、2つのヘビー・マシンガンがレックを羽交い絞めにしている。
頭上では、名乗りが始まった。
「やっほぉ~、ピンチにお助け、異世界から、救世主がきたんだにゃ~♪」
ラウネーラちゃんはご機嫌に、名乗りを上げていた。
空を飛んで、スーパー・ロボットが、救世主が登場する。モンスターに囲まれたピンチには、救いの主は、なんとも希望にあふれることか。
語尾は、もちろん『にゃ~』――で、ある。
「異世界って………スプルグの要素って、あんたの記憶だけじゃない」
「ってか、ほぼ昭和ッス」
ゴーレム技術は、古代からあったらしい。
デザインも様々に、古くは江戸のからくり人形が活躍したことだろう。さらに古代は、もしかするとスフィンクスが襲い掛かる光景があるかもしれない。
遺跡があると、王都で聞いたレックは、遺跡めぐりのたびも悪くないと思ったものだ。そんな自由は、勝利のあとだ。
今は、スーパー・ロボットだった。
5メートルオーバーの人型ゴーレムに、80年代のロボットアニメの印象を色々と素材をくっつけた、子供の落書きである。
とにかく、かっこいい――を、煮詰めたデザインなのだ。角に、トゲトゲに、ビームが出そうなクリスタルの輝きに………
コクピット・ハッチがオープンした。
「やっぱり、ボクのロボって、最高っ!」
お久しぶりの、スーパー・ロボットの登場だ。




