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異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
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お祭りの、ダンジョンの町 1


 ダンジョンの町


 ゲームやラノベではお約束の、情報を仕入れたり、なにか事件が起こったりする現場である。常にモンスターの素材が手に入るが、モンスターがあふれ出せば、滅亡まで秒読みだ。

 その日が来ないことを祈りつつ、ついに起こったのが、本日だった。


 レックは、立ち尽くしていた。


「ブリキの人、すげぇ~………」


 強かった。

 武器ショップの受付であり、マスコットキャラ?だと思っていた、ぎこちない動きの、油をさしてください――と、お願いされそうな姿はそのままに、強かった。

 武器ショップのオヤジの命じるまま、大砲を乱射、それだけではない、腕が変形、カノン砲となって、魔法のビームを撃ち始めた。


 アーマー・5(ファイブ)の姉さん達も活躍で、レックの出番など、最初から必要なかった騒ぎである。


 慰めるように、ウサギの姉さんが抱きついてきた。


「どうしたの、ぼぉ~っとしちゃって?」


 バニーガールさんが、レックに抱きついてきた。

 安全なボウヤであるための、気安さだ。しかし、15歳男子と言うレックには、とても刺激が強かった。

 緊張に、背筋がキリリ――と、固まった。


「あの………当たってやして――」


 胸元がレックの腕にあたり、当ててんのよ――状態だ。レックの腕が、胸の谷間に沈んで、緊張する。


 ナイフの気配に、緊張する。


 いたるところに、武器が隠してあるのだろう。腰にはナタのようなナイフがあり、ロングブーツの内側にも、デリンジャーがあるだろう。バニーガールさんは、ベテランの冒険者だ。

 ランクで言えば、ブロンズの<上級>は、ありそうだ。


 お仲間のバニーさんが、気付けばレックの両サイドにいた。


「きゃ~、かわいい、緊張してるの?」

「きゃはは、やめなよぉ~」


 バニーガールに囲まれて、レックはドキドキだ。

 それなりに警戒していたにもかかわらず、レックはお姉さん達の接近に気付くことが出来なかった。


 もし、暗殺を目的とするウサギさんなら、絶望だ。


 レックのドキドキは、止まらない。すでに、モンスターの返り血を浴びた斧やナイフを握り締め、にっこりと微笑んでおいでだ。

 片手にショットガン、あるいはマグナムを持っている。ジャンプ力は、さすがはウサギ耳のお姉さんだ、一撃を与え、即座に離脱戦法でモンスターを翻弄ほんろうし、トドメのマグナムやショットガンなのだ。


 さすがは、洞窟のカナリアという、ウサギさん達だ。彼女達でも危険と思う、それは、大変ヤバイ状況だという、洞窟のカナリアなのだ。


 レックは、空を見上げた。


「へへへ、皆さん、さすがッス――おれ、出番がないッス」


 コウモリたちは、全滅まで、秒読みだ。

 胴体部分だけで、人間サイズというモンスターたちは、マーメイドやエンジェルさんの魔法に加え、魔女っ子マッチョにそのほか、途中参加のダンジョンの町の皆様によって、次々と落下中である。

 前を見ると、猫耳さんたちは、ナイフの代わりに包丁で、3メートルサイズのサラマンダーを解体していた。

 ビームサーベルより、切れ味がよさそうだ。解体職人も兼ねているかもしれない、本日のディナーは、トカゲのステーキだろうか。


 トタトタと、戻ってきた。

 アイテム袋にお肉たちを入れて、戻ってきた。


 エルフちゃんたちが、喜んでいた。


「それ、バーベキュー?」

「デミグラスソースも、よろしくにゃっ」


 バリア係のため、ピクニックシートからは動いていない。次々と出される料理を、色々と手にしていた。

 小さな体の、どこに入るのだろう、そんな人間に向けた疑問は、エルフに抱いてはいけない。

 なぜなら、エルフなのだ。


「手下ども、ヤバイや面も駆けつけてくる、今のうちに、仕込み終わらせとけ」

「少し早いが、アイテム袋から、イスモテーブルも、色々出しとけよ」


 猫耳さんたちは、現地調達のお肉でバーベキューの準備を始めていた。戦いも全て、日常というたくましさだ。

 アイテム袋から、巨大なコンロが、次々と現れた。

 もちろん、イスもテーブルも、岩場においてのバーベキュー大会の会場が、出来上がりつつあった。


 レックは、首をかしげる。


「………多すぎないッスか?」


 さすがに、多すぎる。

 30人前ならば普通だが、300人前と言う勢いだ。

 そう思うほどの材料が、すでに猫たちによって下味段階だ。レックを取り囲んでいたウサギ耳のお姉さん達も、お手伝いを始めていた。

 お皿の分配に、折りたたみ式のテーブルを組み合わせて、ちょっとしたピクニックが、宴会の会場へと変わっていく。


 むしろ、お祭りだ。


 その理由が、見えてきた。

 轟音が、近づいてきた。

 ただし、モンスターたちとは異なる、明らかに人工的な、むしろ、エンジンの爆音という大群だった。


 前世が、レックに言わしめた。


「………暴走族?」


 大漁――と、大きく書かれた旗をはためかせて、バイクの軍団が現れた。

 ぱぱらぱ、ぱぱらぱ――という音声のオマケつきだ、確実に、日本人がもたらした汚染に違いない。


 いいや、それよりも悪いはずだ。


「「「「「ひゃっはぁああ、まつりだぜぇええ」」」」」

「「「「「汚物は、消毒だぁああああっ」」」」」


 世紀末が、やってきた。


 モンスターの素材で彩られた、様々な衣装のおっさんやお姉さんや兄さんや、本当に色々な皆様が、やってきた。


 片手運転で、危なくないのだろうか、それは、運転が未熟なレックが思う、余計なお世話だろう。ナイフに、剣に、サブマシンガンに、ショットガンにと、思い思いの武器を手に、大暴走だ。


 魔法の力で視力を強化しなくとも、見えてきた。


 レックは、つぶやいた。


「オレ、この戦いが終わったら、旅に出るんだ」


 フラグだった。

 すでに経験した、フラグだった。



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