表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
134/262

ダンジョンの町と、あふれ出し 3


 本日も、いい天気だ。

 ダンジョンの町の岩場では、ピクニックシートが広げられている。入り口が遠くに見えて、徒歩で20分から30分と言うところだ。

 岩山の中腹が、ダンジョンの入り口である。斜面は緩やかであり、ちょっとした運動にも最適なのだ。


 ピクニックシートに向けて、レックは恐る恐ると、口を開く。


「………おれ、討伐中なんッスけど――」


 お祭りだった。

 ダンジョンの町が、眼下に見える、ここは岩山の中腹である。皆様、ちょっとしたイベントの感覚で、集まっていた。

 レストランや宿のマスターに、手下と言う猫耳の皆様をはじめ、もちろん、ウサギ耳のバニーガール軍団もいる。

 アーマー・5(ファイブ)の皆様も、お先にピクニックシートで、リラックスだ。


 レックは、とりあえず前を向いた。


「トルネードぉ~」


 言いつつ、威力は上級魔法と言うトルネードだ。モンスターの大群は、危険な鉄球と言うダンゴムシもろとも、吹き飛んでいく。


 一部、100メートルも離れていない距離にまで、鉄球ダンゴムシが転がっていた。ごろごろと転がる速度は、そして巨大ゆえに目の錯覚で、危なかった。


 なのに、ピクニックであった。


「ほらほら~、よそ見しないの~」

「そうだにゃ~、ホコリが入るにゃぁ~」


 エルフちゃんたちは、サンドイッチをつまんでいた。

 中身はなんだろう、チラッと見た限り、エビフライの尻尾が見えた。この世界の流通は、意外と発展している。バイクにアイテム袋にと、色々あるのだ。


 海の幸も、手に入るのだ。


「ツイン・トルネードッ」


 レックは、叫んだ。

 水球は6つである。3つでトルネードを生み出せるため、ツインも出来るのだ。ちょっと疲れるというか、チャージの隙が怖いために控えていたが、出し惜しんでもいられなかった。


 さもないと――


「ほら、油断――」

「だにゃぁ~」


 エルフちゃんたちが、なにかをした。

 レックもすごいのだが、もっとすごいのが、エルフちゃんたちである。巨大なバリアが、展開されていた。

 ツイン・トルネードで広範囲をなぎ払ったはずだが、取りこぼしがあったようだ。


 ズゴン、ズゴン――と、ぶつかっていた。


「………うわぁ~」


 ダンゴムシは、飛び跳ねることを覚えていたようだ。

 上空から、まっすぐとレックたちへ向かって、落下していた。それだけではない、レックのレーザーの影響で、少々、岩石のオマケが転がっていた。


 ダンジョンとは、洞窟の迷宮である。この岩場においては、鉱山の中腹と言うところから、徐々に地下へと広がっていく。

 入り口は、中腹なのだ。


 湧き出した付近を砕けば、土砂崩れだ。


 レックは、振り向きざまに、腰を90度だ。


「姉さん達、あっざ~す」


 前世もご一緒に、お辞儀をしていた。

 レックの脳内の出来事であるが、気分はご一緒に、お礼を申し上げていた。

 エルフたちは、ついでに色々を魔法で砕いたり、貫いたりしていた。水鉄砲限定のレックと異なり、エルフちゃんたちは、様々な魔法を使えるのだ。


 マジカル・ウェポンは、お遊びだ。

 ショット系の輝きが数百ほど、色々と撒き散らされていた。小さなスクリューも加わって、下級魔法ながら、攻撃範囲と貫通力は、レックのレーザーに劣らない。


 きらめく星の瞬きが、きらめいた。その数は、数百と言う、もう、全滅させたのではないかと言う輝きだった。


 戦いの途中であるが、もはや、終盤だ。

 姉さん達ベテランは、こうした事態に備えるために、後ろで控えているのだ。レックはキャパオーバーを自覚しつつ、さすがだと、腰が低い。


「ぅお~、さっすが、姉さん達」


 レックの油断と言うより、本当に、キャパオーバーである。

 探知魔法の範囲は目視より狭く、それでも、範囲内であれば、モンスターの数や大きさ程度は分かるのだが、その程度だ。

 エルフと比べることなど、恐れ多いのだ。


 サンドイッチを片手に、エルフちゃんたちが命じた。


「ほらほら、まだ来るわよ?」

「トカゲの丸焼きだにゃぁ~」


 ボスが、やってきた。

 レックが以前戦った岩ドラゴン――と名づけた、ロック・サラマンダーと同系だろうか、ごつごつとした、岩石のようなトカゲが迫ってきた。

 テクノ師団のバルカン砲撃を受けても暴れるだけで、レックの突撃後、トドメは上空からの『ラウネーラきぃいいいっく』――という岩ドラゴンだった。


 30メートルはあったと思う、トルネードを連射しても、傷をつけるまでに時間がかかったものだ。


 どうやら、同類らしい。


「ツイン・トルネードっ」


 またも、叫んだ。


 岩ドラゴンのサイズは、尻尾だけで20メートルを超えていた、数十メートルサイズの巨大モンスターだった。

 分類としては、ロック・サラマンダーとも言うべきという。ホンモノのドラゴンの皆様を前にすれば、分かるらしい。


 まだドラゴンを見たことがないレックには、十分、ドラゴンと呼ぶべきモンスターだった。


 レックは、固まった。


「ごっ、ご兄弟ッスか」


 一匹だけでは、なかったようだ。

 トルネードでひるんだところに、土煙が収まったところに、にゅるりと、巨大なご兄弟が顔を出した。

 前回の大発生では、たった一匹にも苦戦をした岩ドラゴンが、サイズはやや劣るものの、追加で3匹現れた。


 どうせ、レーザーで楽勝と言う気分だったレックは、気持ちを改めた。


「あふれ出し………やっぱ、ピンチじゃん」


 水球たちを、配置につかせた。

 背後には、コハル姉さんとラウネーラちゃんと言うエルフがいる。見物人の皆様は、ここまでピンチと思っていなかったのなら、運が悪かったと思ってほしい。


 広域バリアを展開した。


「スキル・水風船っ」


 レンズのバリアでは、2メートルに満たない。レックだけでは十分で、遠距離攻撃に限定すれば、必要ないと踏んでいた。

 岩ドラゴンが相手なら、柔軟性のある水風船だ。相手を近寄らせないバリアとしては、強固なレンズよりも、こちらが上だ。

 2メートルもなかった直径が、10倍に膨らんだ。


 このまま、レーザーも出来る。


「レーザー、乱舞」


 狙いなどない、乱射だった。

 将来的には、某・宇宙世紀のように、自分から遠くはなれた場所に水球を送り、レーザーを全方位で集中砲火させたいものだ。

 前世の浪人生は、その光景を目に浮かべて、遠くを見ていた。


 現実は、SFアニメというより、パニック映画だった。


「つづいて~、ツイン・トルネードっ」


 レックは、大忙しだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ