突撃、アーマー5
レックはただ、謝りたかった。
日本人で、ごめんなさい――と
「あぁ………エンジェルが、マーメイドが………神秘の種族がぁあああ」
エルフの国は、懐かしき昭和の町並みであった。
石造りの、前世で言えば森の侵略を受けたアンコールワットのような遺跡という町並みも残っていたが、流行は昭和ファッションなのだ。
エセ東京タワーや幕張メッセもドキなどが、でかい顔をしていた。
王の都もまた、どこか万博や、懐かしき昭和の香りが見られた。あまり観光が出来なかったが、都市の内側においてはバイクに路面電車に、遠くのほうでは万博だった。
UFOもまた、古きよき円盤のデザインだ。
釣竿が、目に浮かぶ。特撮に出てくる円盤というUFOが、建物の頭にキノコの傘のように居座っていたのだ。
しかも、本当に基地であり、UFOが飛び回っているのだ。
すべて、日本人が持ち込んだに違いない。それはもう、地域や種族の垣根など飛び越えて、広がっているのだ。
特撮ヒーローも、大人気だ。5人仲良く、アーマー・5だ。
「ザコは任せてっ」
コハル姉さんのマシンガンが、火を噴いた。
「おぉ~っと、オレのUFOから逃れられるとでも?」
ケンタウロスの姉さんが、ホバーUFOで、突撃だ。
流線型のバリアが、巨大な光るナイフに見える。3メートルサイズのモンスターたちが、たちまちミンチで肉塊だ。
「ここは、おれっちに任せて――ふぁいあー」
ドワーフちゃんのミニ戦車が、火を噴いた。
10メートルサイズの巨大ムカデさんが、悲鳴を上げる。あまり狙いは良くないようだが、乱射も可能だ。
そして、乱射といえばエンジェル様も、大活躍だ。
「エンジェル・ガトリングっ」
エンジェルは、関係ないだろう。葉巻をくわえて、ガハハハハ――と、お嬢様風味の見た目を裏切り、おっさんモードだ。
ただ、あまり、上を向かないように注意が必要だ。ミニスカートであるため、お姉さんに失礼だ。
ハートがザコなレックは、紳士に視線をそらしていた。
ガトリングガンのブロロロロ――という轟音が、ボスやザコたちに悲鳴を上げさせていた。
マーメイド様は、滑空していた。
「悲しい空に、花を咲かせてごらんに入れましょう――いっくでぇええ」
なにを元ネタにしているのか、レックには分からない。関西弁が素であるのかも、分からない。そもそも、異世界の言葉は脳内で変換されている、異世界おしゃべりモードのはずだ。関西弁に、意味があるのだろうか。
ただ、レックは言いたかった。
「ひでぇ~………」
バリアの中で、うずくまっていた。
エンジェルやマーメイドが空中を飛び回り、ガトリングガンにミサイルが飛び回り、洞窟は戦場だった。レーザー禁止状態のレックであるが、自重する意味があるのか、まるで分からない。
振動が、洞窟を揺さぶっていた。
皆さん、神秘の種族たちであるのに、武装はすべて、ややSFだった
レックは、おそるおそると、叫んだ。
「あ、あのぉ~、フレンドリーファイアーは、ナシの方向で――っ」
このフラグは、もちろん回収された。
2秒後、ミサイルと大砲とガトリングガンの流れ弾が、レックの付近に着弾した。爆発力は、さすがアーマー・5である。レックは見事に吹き飛んだ。
ご都合主義の補正もあるのだろう、ボスの巨大ムカデが、大きく口を開けていた。ぬちょ~――としたよだれが、目の前だ。
「ちっきしよぉおおお、フラグ、早すぎぃいいいい」
レックは、両手に握っていたサブマシンガンを捨てた。
威力など、知れている。それが感覚で分かる程度に、マジカル・ウェポンは使い慣れてきたレックである。ナイスな位置に、レックは吹き飛ばされていた。
具体的には、大きく口を開けたボスの口へだ。
事故であれば、すごい偶然だ。
わざとであれば、さすが神秘の種族たちだ。見た目は少女達だが、実年齢は聞いてはいけないのだろう。
如意棒を、手にしていた。
「レック、チャンスは一度よっ」
「いっけェ、勇者ぁああ」
「いっけけええええ」
「頼みました」
「やったらんかいっ」
5人のアーマー戦士の声を受けて、レックは叫んだ。
「アームドっ!」
レックの魔力が如意棒に流れて、瞬時に6メートルほどに伸びた。ついでに魔力の球体もしっかりとチャージした、トドメの一撃だ。
使用魔力はレーザーより少ないが、直撃の威力は匹敵する。先端に魔法の輝きは、ランスの突撃だ。
馬や、バイクで突撃すればかっこいいだろう。情けなく爆発で吹き飛ばされ、ボスの口へと一直線だ。
レックは、叫んだ。
「テンプレだああああっ」
そして、爆発だ。
目の前が、真っ白になった。




