表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
114/262

バニーガール軍団と、転生者


 バニーガール

 いつから存在していたのか、少なくとも50年前には、日本でも活躍していただろう。お酒を飲む場所に、パーティーにと、方々に出没したはずだ。


 男性のバニーガールがいても、男女平等な現在、おかしくはない。太ももがムキムキと、そのキックは大木をもへし折っても不思議はない。


 スキンヘッドバニーが、レックを抱きしめていた。


「待っていたぞ、新たなる勇者よ」


 バニー・ボーイとお呼びするべきか、2メートルを超える長身に、肩幅も岩石であった。ウサギと言う証のウサ耳が、ジョークであった。


 もちろん、バニースーツだ。


 太ももがまぶしいアミタイツで、いいや、鎖帷子くさりかたびらかもしれない。金属製とも限らないチェーンで、通気性と軽量化に成功している。

 鋼のような筋肉を、鋼のチェーンで防御するバニーガールが、支配人のようだ。


「おう、ベルバートも、久しぶりだな。クリスティーナも寂しそうにしていたぞ?」

「い、いやぁ、オレも管理職でよ、なかなか若い頃のように――ほら、そいつな、バイクに乗って一人旅を気取ってやがってよ、お前らの集落にも案内してやってくれ」

「ちょ、ぶうぶうっ」


 胸板に、抱きしめられた。

 レックの抗議は、ムキムキとうごめく胸元で、さえぎられた。背後では、豊かな胸元のバニーガールさんたちが笑っている。

 姉さん達に無礼を働こうとした冒険者も、このような目にあうのだろう。確かに、とても豊かなお胸である。


 ムキムキと、うごめくほど豊かなのだ。

 まるで、動く鋼だ。


 なお、レックが心の中で中佐殿――とお呼びするテクノ師団の隊長さんは、ベル坊こと、本名はベルバートと言うらしい。

 出会ってから半年近く経過して、初めて知ったレックだった。


 なじみのバニー・ボーイは、いい笑顔だ。


「まあ、ベルバートならそう言うと思ってたがな」


 スキンヘッドが太陽に照らされて、きらりと光って、ちょっとまぶしい。そして、そろそろ解放して欲しいと思ったが………

 抱きしめられていたため、普段より目線が高くなったため、レックは“それ”に、気付いた。

 隊長殿よりも先に、気付いたのだ。


 バニー・ボーイは、笑っていた。


「ほら、噂をすれば――」


 どす、どす、どす――という効果音がセットで、突進してきた。

 何者と言うか、もののけと言うか………


 レックを抱きしめたまま、スキンヘッドバニーさんは、笑みを浮かべた。


「べぇ~、るぅ~ちゃぁあああああんっ」


 ボンレスさんが、現れた。


 肩幅は、やわなレックの倍はあろう、たくましさだ。その太ももは、長年のジャンピングによって鍛えられ、レックの胴体を超えている。

 むしろ、マッチョと言い換えたほうがいい。ただし、年齢は残酷である、おなかのお肉が、ややボンレスハムだった。

 強引にバニースーツを押し込めたためだろう、ボンレスさんは、気にしていないらしい。豊満なバストと共に、激しく揺れていた。


 隊長殿は、逃げ出した。


「さらばっ――」

「――ベルちゃぁあああああん」


 脱兎だった。

 ウサギの皆さんがいらっしゃるのに、脱兎の勢いで、ウサギさんの群れから、おっさんは脱走を試みていた。


 エルフちゃんたちは、笑っていた。

 ウサギさん達にまぎれて、笑っていた。


「おぉ~、さすがは、かつて勇者(笑)と呼ばれただけはあるね、まだまだ現役だ」

「それはそうだよ、隊長さんで、現役だもんにゃぁ~」


 そして、消えた。


 レックは、エルフを分かったつもりになっていた。その移動能力は、人間をはるかに超えていると。


 甘かったようだ。


 隊長殿が、悲鳴を上げていた。


「がっ、はなせ、コハル、ラウネーラ………うぅああああああ」


 気付けば、両サイドからおっさんを捕らえていた。

 しょせん、人間だ。エルフたちに比べれば、いつまでも小僧に過ぎぬのだ、その間に、ボンレスさんが到着した。


 疲れを感じさせないあたり、普段からジャンピングしているのだろう。ゆらゆらと、ボンレスハムがゆれていた。

 レックは、見ていた。


「もぉ~、昔はイチャイチャしてたのに~、立場が違っても、私達はずっと――」


 むっちゅ~――と言う効果音は、効果音だけだろうか。

 レックは、かつて美人だったボンレスさんと、かつて少年だったおっさんとの再会を、生暖かい瞳で見つめていた。


 ムキムキなる胸板に抱かれて、つぶやいた。


「良かったッスね、再会できて」

「あぁ、時期が時期だからな、きっと来るって言い張って………愛の力ってヤツか」

「うん、うん、良かったわね、クリスティーナ姉さん」

「長老の一人だからね?」

「同じ転生者同士って………どんな名前だっけ?」


 バニーさんに囲まれて、レックは見ていた。


 そのため、聞き流していた。久々の異世界人との遭遇だというのに、ムキムキに抱かれて、心は遠くへと消えていた。


「転生者?」


 いや、気付けたようだ。

 レックの好奇心が復活し、口を開きかけた。ここへはダンジョンの攻略のために訪れたが、レックの目的としては、違うのだ。

 お仕事は別に、不思議な世界を見て回ることが目的だ。転生者と言う不思議もまた、興味を引かれるのだ。

 新たな興味が、かけてきた。


 ワンワン――という、お犬様の鳴き声が聞こえた。


 人懐っこい、はっ、はっ、はっ――という声のオマケつきだ。誰かの飼い犬に違いないと、しかし、ダンジョンであるために、警戒心が湧き上がり――


 目が、点となった。


「………ブルドック?」


 ブルドックだ。

 どう見ても、ブルドックと言う印象のブルドックが、はっ、はっ、はっ――と、土煙を上げてかけてきた。


 ただ………


「げっ――」


 でかかった。

 少なくとも、エルフの国で遭遇した、ドワーフのおじ様の相棒クラスの、巨大なブルドックに見えた。


 しかし、バニーの皆様は、警戒している様子がない。

 エルフちゃん立ちは同じだが………


「ほら、私達の子供も大きくなって」

「放せ、放してくれぇ~………」


 おっさんの悲鳴は、だれも気にしていなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ