表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
105/262

『なぜ天才は、変態なのか』レックによる短い考察 3



 水色のツインみつあみが、震えていた。


 感動に、打ち震えていた。


「これよこれ、男の子といったら、半ズボンでしょっ!」


 びしっと、レックを指差していた。

 すでに、着せ替え人形と言う扱いはあきらめているレックである。望まれるままに、フリルのシャツに、半ズボン(サスペンダー付き)を身につけた。

 良いところのお坊ちゃまと言う印象もある、あるいは、少女漫画に登場する弟と言うキャラクターなのだろうか………


 レックは、遠くを見ていた。


「エルフの里のみんな、元気かな………」


 いつもの、扱いだった。

 15歳の冒険者にしては、レックは貧弱な坊やである。それは、魔法の力があれば、見た目の体格は意味を成さないためである。

 2メートルを超えるマッチョと、魔力を帯びたレックでは、単純な力比べであれば、レックが上回る。

 相手も同等の魔力の持ち主では、見た目どおりの結果である。


 マッチョが、くるくると回りながら、喜びを表していた。


「ふふふ、ねぇ、コハルちゃん。ミニスカートだけが、すべてではないの」


 いつの間にか、魔女っ子のアリスちゃんが、登場していた。

 ご本人はミニスカートの自覚がないのか、サイズが合わないために、ミニに見えてしまっている。2メートルサイズのマッチョな魔女っ子は、かわいいアピールに忙しいようだ。


 ホバー馬車で呼ばれた転生者の一人である。

 前世を日本人にもち、覚醒したのは何十年も前と言う。そして、90年代ファッションをこの世界に持ち込んだ犯人だ。


 それぞれに、王都ですることがあると、一時解散していた。国王との謁見えっけんの予定日は、2日後である。

 その前に、厄介ごとと言う、王都へ呼ばれた目的の一つを済ませていた。


 テクノ師団からの要請ということだったが、まるで転生者の会合のようだ。


「お姉ちゃんみたいに、忍者ばっかりもつまんないけど………」

「エリザベートお姉さまは、ちゃんと色々着せ替えしてたわよね?」

「はぁ、はぁ、なんで呼んでくんなかったのよ。仕事ほったらかして、写真取りに行ったのに」


 変態の度合いが、増していた。

 変態と思っていた博士も、なぞの女子圧力を前に、おとなしい。今研究室で一番えらいはずのジジイが、哀れであった。


 哀れな半ズボンの少年、レックは魔力値の計測装置に触れる。

 見た目は、体重計だ。


「久々の計測、いきまぁ~す」


 このままでは、魔力値を巡って、賭け事が始まるかもしれない。罰ゲームは、レックが背負うことになるだろう。どれほどのファッションが隠されているのか、知りたくないのだ。


 博士が、ノロノロと近づいてきた。


「ほぉ、アレクセイより上か………ベル坊といい勝負――おや、まだ上がるのか」


 魔力値は、どうやらかなり上がったようだ。

 そして、変態ジジイは、エルフの国で、『勇者の飯屋』の頑固親父と知り合いのようだ。かつての勇者様であるが、魔力は、どうやら多くなかったようだ。

 苦労をしたのだろう。


 コハル姉さんたちエルフも、興味を抱いた。


「う~ん、3000は欲しいけど――」

「人間にしちゃ、上のほうじゃないかな?」

「まぁ、わたしとおそろい、なら、やっぱりステッキにしましょうよ。赤と水色の魔女っ子スタイルで、一緒に戦うの」

「うへへへ、いいわねぇ、写真は任せて?」


 いったい、この世界の転生者たちは、なにと戦っているのだろう。

 もちろん、モンスターたちとである。自然現象として、魔力があふれる年になると、たくさんモンスターが発生するのだ。

 並みの冒険者では、手出しできない強力なモンスターも、登場する。


 一方で、レックのような転生者も登場する。魔力の余波と言う助けを借りて、異世界の知識を備えた人間が現れるのだ。


 往々にして、並外れた魔力を持ち、この世界にはない知識で人々を救うのだ。人はそれを、勇者と言う。

 エルフはそれを、勇者(笑)と呼ぶ。


 テクノ師団が、もっとも顕著な例だろう。

 懐かしき昭和の町並みや、スーパー・ロボットなどはオマケである。技術の提供によって、ヘリやマジカル・ウェポンシリーズと言う、魔力の値が低くとも、シルバー・ランク冒険者のパーティーを上回る力を得ることが出来るのだ。


 バイクという、魔力頼みであるものの、自由度が馬を超える乗り物もある。

 すべて、テクノ師団の手柄だという。中心となったのは、日本からの転生者たちのようだが………


 全員、変態だった。


 そして、変態は、まだいらっしゃるようだ。どこかからか、声が聞こえてくる。


「けけけ、新たなる転生者か――」

「くっ、くっ、く………身の程知らずが、ノコノコと――」

「しかり、しかり………とく、参じましょうぞ」

「はっ、我らが来たからには――」


 物陰で、秘密会議をする悪役のセリフである。しかも、大物臭のする、ヤツは最弱――などと言う会議である。

 まだ、だれも負けていないため、最弱指定される人は、いないようだ。


 ノリのいいエルフちゃんは、プラチナブロンドをはためかせて、叫んだ。


「くっ、だれだ、姿を現せっ」

「ノリ、いいっすね~」

「ラウネーラだもん」

「いい、その表情、いただきっ」


 カメラのフラッシュが、まぶしい。

 レックは、ただただ、嵐が過ぎ去るのを待った。


 四方から、白衣たちが現れた。


「マイナスドライバーのシュン」

「プラスドライバーの、ジョン」

「ガジェットのジライヤ」

「そしてオレ、設計のコジロウ」


 ドライバー兄弟が、ややこしい。どうせ偽名だろうから、ちゃんとキャラ付けして欲しかった。

 ジライヤさんは忍者ファッションである、エルフの国でくのいちコスプレをしているオユキ姉さんとは、気が合いそうだ。

 すでに、友人かもしれない。設計図の山を背負っている白衣の人は、秋葉戦士のようにも見える。

 そろって、ポーズを決めた。


「「「「四天王、ここに参上っ」」」」


 爆発が、起こった。

 ヒーローショーでお約束の、4色の爆発ではない。誰かがミスをしたのだろう、本当に、爆発が起こった。


『警告、システムが異常を検知しました。施設内の安全のため、エマージェンシーが』


 お約束だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ