表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は、ややSFでした  作者: 柿咲三造
104/262

『なぜ天才は、変態なのか』レックによる短い考察 2


 魔法とは、何だろう。


 とりあえずは、漠然とした感覚として理解している。そして、それ以上の理解は必要ないらしい。

 博士と言う変態は、ふんぞり返っていた。


「物を落とせば落ちるように、磁石は金属を引き付けるように、そういう“力”がある。それだけだ………前世ではエセ科学とされていた、エーテルだったな。そんな力が、ここではある。魔法と呼ぶなり、好きにすればいい。他にもな、不思議な素材もあるぞ。レムリア大陸だったか、いや、アトランティス大陸だったな。オリハルコンと言う――」


 レックは、聞き流した。

 いくつかは、レックも知る知識である。ファンタジーでは普通の知識である、ジジイと言う変態がいつの時代の転生者であるか分からないが、その手の知識は、かなり古くから知られていたようだ。


 エルフちゃんたちは、すでに退屈であるのか、研究室を歩き回っていた。

 フラグではないか、なにかに触って、大爆発、あるいは暴走と言うフラグではないかと、レックは気が気ではなかった。


 変態が、レックの肩をつかんだ。


「いいかね、ここはアトランティス時代に滅びたとされる超古代文明がだな――」


 その後も、レムリア大陸やムー大陸と言うファンタジー用語が飛び交い、ついに宇宙人まで現れた。

 古代に宇宙人が地球を訪れて、人類に知識を与えた。そのため、神々と呼ばれ、伝説として伝えられてきたのだという。

 作り話だ、宗教の話だと思っていたが、転生して分かったと言い放った。地球へと転生した、異世界の知識を持つ人々の仕業だと。


 もちろん、レックは聞き流した。


「死後の世界を見たという、楽園を見たという、そして、不思議な島にたどり着き、戻ってきた人の話があったが、それは――」


 まだ、続いていた。

 今度は、伝説や神話のジャンルに飛んでいた。

 ファンタジー知識は、前世も少しは知っていた。受験勉強のために辞書を開くより、ラノベに手が伸びていた残念な受験生だった。


 ネット接続までの判断は、秒だった。


 そうして得られた知識であるが、博士曰く、すべて転生で説明できるという。

 前世の記憶が、断片的に影響を与えたのだと。魔法が存在しないとされる地球でさえ、影響があるのだ。

 なら、魔法の力に満ちているこの世界ならば、どうなるのか。


 熱く、語っていた。


「いいかね、少年。ラウネーラの出身のスプルグでは、こちらで言う巨大ロボットが日常的にある。そう、ラジコンコンテストがスーパー・ロボットであり、イワマルには会ったか、あのドワーフめ、ワシには再現できぬと、エルフの国へ――」


 異世界スプルグ。

 プラチナブロンドの、ラウネーラちゃんの前世がいた世界である。

 前世でも美少女パイロットとして名前をはせていたと自称するが、もちろん、異世界のことである、確かめるすべはない。


 異世界ギダホー

 キノコで巨大化するヒーローとそっくりに、巨大化するドワーフのおっさんの前世のいた世界である。

 巨大生物がひしめき、ポーションのような薬で巨大化、しかも、自分と異なる存在へと変化させ、生き延びた種族だという。


 変態は、空を指差した。


「そして、異世界ギョールだ。あの馬め、ケンタウロスらしく弓矢を放っていればいいものを、馬が生えているのに、走れよ。バイクが気に入ったのはいいが、前世のように考えただけで動けるようにしろだと?漫画の読みすぎだっ!」


 ファンタジーという世界で、ジジイが叫んだ。

 前世では、そのように親に叱られていたのかもしれない。


 前世の浪人生は、空中を見つめていた。

 自分で考えて、主人の思うように動くロボットは、それなりに存在している。お掃除ロボットが、絶賛活躍中だ。


 ただし、思うだけで操るシステムは、いまだ存在しない。


 つまり――


「無茶なのだよ。まぁ、操縦者が腕時計から命令する方式には、成功したがね」


 小声で、ブツブツとAIが、AIが………と、つぶやいていた。

 最近の転生者も、テクノ師団に在籍しているらしい。そして、そのおかげで半自立式のロボットが完成したようだ。


 面白く、なさそうだ。


「とにかく、ラウネーラのような莫大な魔力の持ち主でない限りは、スーパー・ロボットは実現できぬし、馬のようにエルフ並の魔力でない限り、ロボットも動かせん」


 ジジイが、立ち上がった。

 レックは、おびえた。


 必死に下がるが、天才は、空から降り注ぐ災いなのだ。


「さぁ、科学の発展のための尊い犠牲になるのだ」


 災いだった。


 気付けば、両サイドにお子様が現れた。


「レック、成長期なんだし、ちゃんと測ってもらいなさいね」

「ボクには届かないだろうけど、まぁ、がんばりたまえ」


 エルフたちが、現れた。

 このタイミングを、狙っていたようだ、魔力値を計測する装置が運ばれてきた。

 コハル姉さんはお師匠様と言うか、お姉さんぶっている、いつもどおりだ。そして、ラウネーラちゃんは、ライバルを挑発するキャラのセリフで、えらそうだった。


 だれが教えたのだろう、本当に、問い詰めたかった。

 レックがそう思っていると、バタバタと言う、スリッパの音が近づいてきた。


「ラウネーラちゃん、コハルちゃん、サングラス、忘れてるわよ」


 第2の変態が、現れた。


 レックは、思った。

 犯人だ。

 とがったサングラスを両手にしたお姉さんこそ、コハル姉さんたちに異世界ファッションを教えた、犯人だ。


 巨大な瓶底めがねの、ぼさぼさツインみつあみと言う、ヘアカラーは異世界らしい水色であるのに、見事に残念女子のスタイルを確立していた。

 もちろん、白衣もボロボロだ。


「マキノくん、キミは、地方への――」

「コウゾウじいちゃん、いいから、女の子の身だしなみが優先なのっ」


 年老いた父親と、介護をする娘に見えるのは、なぜだろう。

 年齢は、『爆炎の剣』の魔法使い、カルミー姉さん世代のアラサーだ。オーバー30の、あるいは、若作りのアラフォーかもしれない。


 心で年齢を推測することは、自殺行為だ。


 瓶底めがねから、サングラスにチェンジしていた。

 そして、レックに肉薄した。

 警戒していたというのに、瞬時に、レックに肉薄していた。


「さてと、ボウヤ………前世での年齢は忘れようね、記憶を完全に継承しているわけでもないでしょうし――」


 ツインみつあみが、迫ってきた。


 どこから取り出したのか、サスペンダー付きの半ズボンを手にしていた。いつの間にか、大型のカメラを首からぶら下げていた。

 なぜか、鼻息が荒かった。


 レックはずるずると下がりながらも、疑問を口にした。


「ぜ、前世?」


 まさか――と、疑問を口にした。

 コハル姉さんたちにファッションを教え、知識を授けた犯人は、まさか、まさか――


「はぁ、はぁ………ショタ男子、きたぁあああああ」


 レックは、思った。


 変態は、一人で十分だと。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ