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第8話 サイド・アソート・パック①

②はまたどこかでやります。

とりあえず①だけです。


それぞれテイストの違う物語となっております。

《探索者娘三人組の場合》


 大型テーブルに五人の女子が腰掛けていた。


「それでねっ! 『ヴオオオオ!』って声が響いたのっ! 驚いた私達が顔を上げるとねっ、三メートル半はありそうなハイパーグレートオークがいたのっ!」


 そう述べたのは採取組の中でも一番小さなリル。彼女は日本でも中学生で通じる愛嬌のある見目(みめ)をしていた。


「いえ、あれは四メートルはありましたわ。そんな巨体が急に現れたもんですからもう終わりだと思いました」


 採取組で一番大きな少女トォールが答えた。彼女は三人の中で一番丁寧な言葉使いであり、三人の中で最も豊かな身体つきをしていた。


「そうそう! オークの口元からこぼれた涎が顔にかかったとき『あ、死んだ』って思ったな」


 二人を補足したのが、三人の中でも、ちょうど真ん中の背丈でショートカットのスレンダー美少女ミディ。彼女は言葉遣いと身なりのそのどちらもが、どこか中性的であった。


「そんなときだよねっ」とリルが、ここからが話の肝だぞと言わんばかりに声を上げた。


「そうですね、忘れられませんわ。凛々しいお顔と勇気ある行動」とトォールはどこかぼぅっ(・・・)とした表情で追従した。



「『お前達は逃げろ! ここは俺に任せて先に行け! 大丈夫さ、お前達を護るためなら俺は何者にも敗けやしない!』」


 ミディが両手を広げて、その人物のマネ(?)をした。


「その場から逃げるかどうか逡巡する私達に────」


 ここ(・・)こそが今日最大の見せ場なのだぞと。



「『───別にアイツを倒してしまっても構わんのだろう?』」


 そういってキメ顔でみんなの方を見た。


「ズルいーっ! リルが言おうとしたのにっ!」



「あぁ、クロ様、貴方は今どこで何をされていますの?」


 ずっと聞きに徹してた二人の内一人が、


「おーい戻ってこーい」


 相変わらずぼぅっ(・・・)としてるトォールの目の前で手を振った。



「つーかさー、私この話100回は聞いてるんだけど……」と聞き手の内のもう一人がポツリと漏らした。


「そもそもクロ様って何?」「さあ」「ねぇ」「何?」「これいつまで続くのかな」「一月(ひとつき)じゃ全然足んないと思うわ」



 誰かが救った彼女達の夜は、今日も騒がしく夜が()けてよいくのだった。










─────────────────────





《ミラン親子の場合》



「かあちゃん、今日は仕事休みだろ?」


「ええ、そうよ」


「なんかさー、近頃休みの日もおめかししてないか?」


「ななな、何の話?」


「なんかかあちゃん、最近さー」


「もう、なんなの! そ、それよりミラン」


「なに?」


「あー、仕事の方はどうなの?

 最近ほら、無理とかしてない?」


「それ昨日も聞いたよね? 何回言わせるんだよ」


「あはは、そうね、私なに言ってるのかしら。あー、それよりミラン」


「だから、なに? オレももう少ししたら仕事の時間なんだ」


「最近、ほらほら、最近ほら、何かあるでしょ」


「かあちゃん、いい加減にしないと怒るぞ?」


「い、いやねぇ。何も怒ることないじゃない」


「かあちゃん最近さ、何か変だぞ!」


「私は何も変じゃないわよ! ほらこのとーり身体も元気だし! ロウさんのお陰でね」


「かあちゃん逆に怪しすぎるよ」


「そうそう、ロウさんに今度お礼しなきゃね。最近ロウさんとは会ってないの?」


「んー、」


「どうなのミラン? ロウさんやっぱり忙しいのかしら」


「たまに街で会うけどねぇ。『大飯食らいが二人いるから街には前より顔出すようにするよ』って言ってた。


「私のこと何か言ってなかった?」


「『かあちゃんが感謝してた』って伝えたら『別に気にすることはないよ。それよりマーロさんには無理をしないように伝えてくれ』ってさ」


「ああ、ロウさん」


「何かかあちゃん熱でもあんのか?」


「熱なんか、ないわよ! もう! それよりミランいつロウさんに会うの? 会ったときにはウチに連れてきなさい」


「なんでそんなに必死なのさ」


「必死とか必死じゃないとかそんな話をしてるんじゃないの。今度ロウさんに会ったときは必ずウチに連れてくるのよ? いいわね?」


「わかったよ! 話が終わったならオレは仕事に行くからな! かあちゃんも、ロウにいさんの言ってた通りゆっくりしろよ!」


「わかったわ。ミラン気を付けてね。変な人には付いていってはダメだからね!」


「はーい」



◇◇◇



「ロウさん───」


「かあちゃーん! 帽子忘れたーっ!

 って何ガラス瓶抱き締めてるの? これポーション入ってた空瓶じゃん」


「こ、これはキレイに洗って返さないといけないなって」


「かあちゃーん、いったい何回洗うんだよー」


「ね、念には念を入れてよ! もうっ!」



 誰かが護った彼女達の一日は、今日も平穏に過ぎていくのだった。







────────────────




《眼鏡の商人ちゃんの場合》


 彼の瞳の奥にある、鈍色の光を見た。

 寂しい色だと思った。それと同時にそんな色をさせたままではいられないと思った。

 自分でも戸惑いを覚えるほどな不思議な衝動であったが、だからといってその感覚を手離そうとは思わなかった。


 もしも、彼と会うことがあれば、彼の過去を聞きたかった。

 そして私の話を聞いて欲しかった。

 これまで艱難に耐えてきた人が持つ悲しい過去を、そのお互いの心を、もしも真実の意味で交わし合うことが出来るのなら、それこそがこの世の中で最も(まこと)の幸福なのかもしれない。


「黒髪で、どこか陰を感じさせる青年よ。それで間違いないわ、彼ほどの実力があれば、さぞや名のある探索者に違いないわ」


 だから今日も私は彼を探している。




 誰かが助けたこの女性が、その誰かを探し求めるのは、苦難に喘いできた彼女が、平穏に向けて一歩踏み出した証左なのかもしれなかった。










最後まで読んで頂きまして本当にありがとうございます。


『おもしろい!』

『っぱ山田よ!』

『早く更新しろ!』


と思った方は、よろしければブックマークと広告下にあります『☆☆☆☆☆』から評価で応援していただけたら幸いです。


みなさまの応援や感想やレビューなどが私のやる気となっております!

本当にいつもありがとうございます!




山田は根性あるし優しいので、

日本でも何気に山田狙いは少なくなかったけど「えー、山田を好きだって私が言ったことで他の子が山田の良いところに気付いちゃったら……」となって周りに言えてない子が結構いる感じです。



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― 新着の感想 ―
[一言] 恋バナで本当に好きなひとを隠す際のちょうど良い隠れ蓑にされる竜宮院
[良い点] ヤマダ氏に助けられた面々が 彼の事をそのまま忘れずに入れれば良いな、と切に。 惚れる必要はなくてよ?(苦笑 [気になる点] この面々も勇者を視界に入れたら記憶が改竄されてしまうのだろうか…
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