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第8話 三日間①

贖罪の旅路じゃ暗いので、もっとなんかいい感じのタイトルに変えていきます!



◯◯◯



「レイトよ。ギルバートが我らをこの地へと呼んだ理由は、何もメリッサのことだけではないのじゃろ?」


「それは」


 オーミの質問に、レイト司祭が答えあぐねた。


「言い難いか……わかった。なら言わんで構わん」


 彼女はすぐ様切り替えたようで、「ここを出るぞ」と部屋の外へ足を運んだ。二人はどこに行くのか疑問に思ったが、オーミの後ろを黙ってついていった。そうしてたどり着いたのは教会内にある部屋の一つであり、彼女は二、三度ドアを叩いた。


「ヒルベルトよ、入るぞ」


 オーミは中の人物に声をかけた。

 すぐさま、「は、はい! いえ! しばしお待ちを!」という返事と共に、彼が焦って椅子をズズっと引き、こちらに駆け寄る音が扉越しに聞こえた。


「オーミ様……お入りください」


 扉を開けたヒルベルトが三人を中へと招き入れた。


「その、ところで、ギルバード様からの依頼は───」


「ああ、仔細確認した」


 ヒルベルトの遠慮がちな質問に対し、オーミは簡潔に答えた。


「それで、どうでしょうか?」


 おずおずと尋ねたヒルベルトは要領を得ない。

 しかし、質問の意図は明白だ。


「メリッサの症状は酷いもんであったが……そうだのう、我とミカであれば何とかなる」


 その言葉にヒルベルトの表情に喜色が浮かび、


「では───」


「だがな、色々と準備があるんですぐには取りかかれん。我はこれより三日ほどレモネから離れる」


「三日……ですか?」


 ミカにとってオーミの言葉は寝耳に水であった。

 かつてなら何も感じなかったが、今の彼女にとってアウェイとも言えるレモネの土地で独りで過ごすことは何よりも心細いことであった。その感情が声音に出ていたのか───


「ミカ、我は必ず戻って来る。それに(ぬし)ならば我がおらずとも、と信じておる」


 オーミがミカの肩に手を乗せた。


「たった三日、されど三日。三日は短くも長い。

 だからミカ、我が戻るまでの三日を無駄にせず、己に出来ることに時間を使うんじゃぞ」


 それから、とオーミはヒルベルトに対し、


(ぬし)ならギルバートに連絡を取れるじゃろ?」


 確信を持って尋ねた。


「もちろん可能でございます」


 ヒルベルトが首肯した。


「これより出来るだけ早く我とギルバートとの話の場を作って欲しい。ヒルベルトよ、頼まれてはくれんか」


「私なぞにそのような丁寧なお言葉を……わかりました、これからすぐにギルバート様にお繋ぎします」


 ヒルベルトの様子はいつものおどけたものとは大きく異なっていた。彼のそれは敬虔なクラーテル信徒のものであった。


 彼はオーミが何者であるか知らない。

 ギルバートからは『やんごとなき御方』としか聞いていない。しかし彼にはそれで十分であった。特殊な能力を持たないヒルベルトであったが、オーミからは、聖女ミカから感じる触れ難き静謐とも言うべきものを、直感的な理解によって強く感じ取っていた。


「というわけでミカ、ここでいったんお別れじゃ。

 我はこれからギルバートと話してくる。それが終わり次第に街から離れる。その間はヒルベルトとレイトを頼るように」


 オーミはヒルベルトとレイトを一瞥した。


「行こう」


 彼女は、三人をそれぞれの本分へと促したのだった。




◇◇◇



 レイト司祭が酸っぱいものを食べたときの様な表情をミカに向けて話しかけた。


「行ってしまいましたね……」


 表情といい、声音といい、彼がオーミのペースについていけてないことは明白だった。オーミはパワフルで嵐の様な人物だ。


「そうですね……」


 彼の言葉にミカは、思案するように相槌を打った。

 それなりに付き合いのあるミカにとってもオーミの全てを理解することは不可能だ。初対面のレイトならなおさらだろう。


「それで───聖女様は今日はどうなさいますか? ヒルベルト様の用意してくださった宿に戻られますか?」


「いえ、このまま修道院内を案内してください」


「へっ?───あ、いえ、それはどうして」


「答える前に、一つ尋ねたいことがございます」


「はい、なんなりとお尋ねください」


「修道院に、新しいシスター二人を住まわす余裕はございますか?」


「二人くらいなら……ってまさか」


 ミカの言葉にレイト司祭が何やら感づいた。


「私達は使命を持ってこの街に来ました。ですので、せっかく素晴らしい宿を用意してくださったヒルベルト様には申し訳ありませんが、私達はこの街の修道院にて他のシスター方と同じ様に過ごしたいと考えております」


 ミカが頭を下げた。


「わがままだとは存じ上げております。ですがどうか私のわがままを聞いてはくださいませんか?」


 レイト司祭の答えは決まっている。

 そんな風に言われて断れるわけがない。

 しかし中々頭を上げない彼女に、レイト司祭はかつて経験したことのないほどの焦りを覚え、汗を飛ばしながらも必死にミカに頭を上げるように訴えたのだった。






大発表です!

本日、本作のコミカライズがニコニコ静画様(ニコニコ漫画)にて掲載されることとなりました!

時間的にはもうされております!


ニコニコ漫画様のコメント欄はめちゃめちゃノリが良くて、ユーモアあふれるコメントがバシバシと流れる場所だったりします!


だがしかし、作者は紙メンタルですので、ちょっとのことでメンタルがグズグズになってしまう可能性があります。

ですので、ここまでお読みくださった皆様、よろしければお手隙のときで構いませんので、ニコニコ漫画のコメントに何かいい感じのコメントをしてやってください……。


麒麟氏、めっちゃチェックすると思いますので、何かほら、「なろうから来ました!」とか「いえーいきりんさん見てるー」みたいなのとか「竜宮院◯ね!」みたいななんか、そんな感じのいい感じのコメント、どうか本当にお願いします(切実)


あとがきが長くなってしまいましたので、

活動報告にて、ニコニコ漫画様のことなど、もう少し色々と書かせていただきます。よろしければそちらもお目通しくださいませ。

それではみなさま、どうかよろしくお願いします(二回目)


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― 新着の感想 ―
[良い点] こういうときって人のいい司祭さんみたいなキャラが一番貧乏くじ引かされるのありますよねぇ [気になる点] わからなくもないけどヒルベルトは最後には謝ってほしいなぁ…実害あったから憎しみあるの…
[気になる点] 傍から見れば、何も失わずに救われ、上位存在に贔屓されている聖女が、尊厳を汚され、傷つき失った者に手を差し伸べるのは本人の意図にかかわらず傲慢と取られかねませんね 『女神』側の事情もあ…
[一言] 更新ありがとうございます。 完全にアウェイであろう修道院、修行を兼ねてだとしても、ミカにはきついものがありそうですね。 まさに針の筵。 コミカライズニコニコ静画掲載おめでとうございます。…
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