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第1話 下準備が大事

消したり貼ったりしました。

こちら最新話です。

なんてことのない日常回……?









◯◯◯





 理解していても、どうしようもないことはある。





◯◯◯





 アルカナ王国四ヶ所同時襲撃事件を終えた翌日。

 自然と早く目が覚めた俺は、三人(セナ、センセイ、ミカ)を起こさずにそろりそろりと起き上がった。小屋には十分なスペースがあるが、部屋はない。セナはセンセイにぴったりと引っ付いて眠っており、センセイはどこか幼い表情で手足を広げて「すかー……ぴー……」と寝息を立てていた。


 センセイ、いつもお疲れ様です。


 あと半刻もすればセナとセンセイは目を覚まし、いつもの日課(神鎮めの舞)を行うだろう。それまでは二人には、ゆっくり寝ていて欲しい。


 それよりも───だ。

 一人だけ客人用(?)に誂えたベッドで寝ているミカを見やる。

 前日に見た彼女の顔色は、病的なまでに血の気が失せていた。

 外はまだそれほど明るくはなく、顔色は窺えない。しかし、どこか苦しそうな表情をしているように思われた。それが俺の考え過ぎであれば、それに越したことはないのだけれど……。


「あー、どうすっかー」


 手早く身支度を整えながらも、今日の段取りを組み立てていく。先日大仕事を終えたばかりであったが、久方ぶりに帰ったセンセイとミカをおもてなししなければならない。

 それがミカを元気付ける一助になればいいが……。


 セナもセンセイも肉食系(物理)であるから、単純にお肉を豪快に焼くだけでも「わたしお肉好き」「我もお肉好き」「わたしの方がお肉好き」「いやいや我の方がお肉好き」と喜ぶこと間違いなしであった。しかしミカは教会での生活が長かったからか、肉ドン! タレドーン! 揚げ物ドーン!! マヨネーズブッパパ! といった大味な料理よりも、どちらかというと、野菜などの素朴な材料を丁寧に処理したメニューを好んだ。


 ん? 甘い物は、って? そいつは野暮な質問だ。

 甘味は女子にとって食事とは違う、心の栄養補給みたいなものなのだろう。


 そんなこんなを思案しつつも、頭の中でメニューを詰めていく───のはいいが、如何せん俺は、ミカと話せていない。

 忙しかったとは言え、元気のない彼女に、何があったのか尋ねる以前に、調子がどうかすら聞けずにいた。


「あーー、俺のバカバカバカ!!」


 戻ってきてからの表情といい、顔色といい、ここのところ食事もロクにとれてはないのではないか。

 それならば俺は───


「やれることをやってくしかないよなぁ」


 そうだ。近道なんてのは存在しない。

 人間関係ならなおさらだ。

 一つずつやれることをやるしかないのだ。

 だから俺は早速準備に取り掛かるべし



◯◯◯




 圧力鍋……圧力鍋があれば……。

 構造すらわからない俺には圧力鍋を再現するという、知識チート発動イベントは起こりようがなかった。


 昨日仕込めなかったので、ミカのために作るポトフは仕方なく時短料理版であった。といっても、ポトフに用いるお肉に挽き肉を用いるといった、少し代わった材料を使うものである。挽き肉を用いた方が早くスープが出来るのだ。だから正確に言えば『ポトフ』というより『ポトフ風スープ』になる、のか? それからついでに半分を別の鍋に移して、ロールキャベツのタネもいれて……などと考えつつ、鍋の具合を見て、それに並行してさらに別の調理に取り掛かっていると、背後に気配がした。

 振り向くと予想通り、


「おはよ、イチロー」


「おはよう、セナ」


 互いに挨拶を交わすも、俺は考えていたことを言いあぐね、それを誤魔化すかのように、調理を続けた。


「イチロー、何か言いたいことがあるのでしょう?」


 思わずドキリとした。


「……どうして?」


 俺の質問の意図を読めず、セナが首を傾げた。


「それくらいわかる。イチローから『言うべきか、言うまいか』と悩んでいるオーラが出ている。悩むことはない。イチローはわたしにどうして欲しいの? それをはっきり言って」


「ごめんな……それからありがとう」


「構わない」


「調理にはまだまだ時間が掛かる。だからセンセイと二人で、ミカを舞に連れて行ってやってくれ。それから、出来る範囲でミカを見ていてやって欲しい」


 俺が頼むと、セナが小さく溜息を()いたのがわかった。


「イチロー」


 セナが俺を名を呼んだ。


「なんだよ」


 俺は身構えた。


「デザートにはアップルパイだけでなく、シャーベットも所望する」


「それって……?」


「シャーベットで手を打ってもいい」


 キュンときた。やべーわ。

 彼女の言葉に、胸の中に急激に愛おしさが溢れた。


「ありがとう、セナ」


「どういたしまして、イチロー」


 そう応えたセナが、軽くに微笑んだのだった。

 


 




遅くなりましたが、コミカライズでしか読めないイチローと出会う前のセナとセンセイのエピソードである、その名も【EPISODE0】がマンガBANGにて公開されております。登録せずとも、EPISODE0はサイトをググるだけで無料でそのまま読める仕様となっております!!やったぜ!!よろしければこの機会にどうぞ……!!


EPISODE0の感想や年始の挨拶も活動報告にてやっております。お手すきの方はぜひぜひ……


それから、

最後までお読み頂きましてありがとうございます。

『おもしろい!』

『続きが読みたい』

『更新早く』と思った方は、

よろしければブックマークや『☆☆☆☆☆』から評価で応援していただけたら幸いです。

みなさまの応援があればこそ続けることができております。

誤字報告毎回本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 召喚された根幹の理由……以前「世界を救うために必要な存在が召喚される。例外は無い」って説明があったから、何がどうなってかは知らんが竜宮院が召喚されて何かしらの災い敢えてばら撒かなきゃ世界が…
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] ミカが結ばれるルートはあったんですね。やはりワンショットキルが正解だったか。 しかしこれだとパフィが竜宮院の魔の手から逃れられない事に…。 パフィとアンジェが…
[一言] 更新ありがとうございます。 ミカの夢の分岐、不慮の事故によりリューグーイン死亡パターンですが、あいつ腹に槍生やしても生きているため、実はミカの夢は夢でしかなかった疑惑が…… 例の腕輪、送ら…
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