第18話 DIYとあとしまつ①
タイトルは(仮)です
ちなみに
【永久に機を織る鶴】がパフィさん
【プリンセス・ローズ】がアシュリーさん
【運命の女】がセナさん
これらが3人の日記ネームだったりします
○○○
これはライオネル皇国からの刺客と名うての暗殺者集団を退け、数日が経過した頃の話である。
場所は、隠れ山の奥の奥にぽつんと備え付けられている小屋───つまり俺とセナの住処であった。
みんなで昼食を終えると、各々がそれぞれの仕事に取り掛かった。まだ陽射しの強い真っ昼間である。小屋の外では、ぬばたまの黒髪に、紫の着物の女性───センセイと、いつもの豪奢なシスター服とは異なり、シャツにゆるっとしたパンツスタイルという一般的な衣服の女性───ミカの二人が、謎の工具を用いて、なにやらトンテンカンテンと力仕事に励んでいた。
ミカは汗を袖で拭き取り、「ふぅー」と一息吐きつつも、センセイの指示に従い、黙々と仕事をこなした。
また、センセイの方ももちろん、口を『ω』にしながら、謎の生物から伐採(?)された木材を、これまた謎素材で作られた工具で器用にも切り分け、加工するといった職人仕事を職人顔負けの技術でしゅぱぱぱとこなしていたのだった。
そんな二人はセナが見れば、嫉妬するほどに息の合ったやりとりをしていたが、さてしかし───
二人の様子を確認し、俺は小屋へと戻った。
中にいるのは三人。
俺、その横にはセナ、その対面には銀髪の少女アノンであった。
◇◇◇
話はあの襲撃の夜に遡る。
俺とアノンは、休むことよりも先にノルアルドとウィズを完全に拘束し、マスカレード侯爵と話を通し、屋敷の地下に二人を預けることとなった。
その日は、時間も時間であったので、俺達二人は、侯爵の「二人は命の恩人だ。ぜひ泊まっていって欲しい」という言葉に甘えた。
翌日、襲撃を防いだ時点で俺の仕事は終わっており、本件に関して後処理が残っているアノンとはそれぞれ別の家路につくこととなった。
ちなみに、アノンが別れ際にこちらをちらちらと見ていたが、「やることあるんだろ? 終わったらいつでも会えるさ」と伝えると、悲しげな顔でその場を後にした。
さて、それはさておき、小屋へと戻った俺は、セナへと、式符のお陰でたくさん救われたことを感謝し伝えた。式符を通して多くを把握していたセナであったが、彼女もまた心境の変化ゆえか、今回の事態について、いくつか気になることがあったようだ。
あぐらで座る俺の正面に、背を預けるようにすっぽりと収まったセナ───彼女を抱えて、尋ねられるがままに出来る限りの範囲で質問に答えた。
といっても、セナも式符を通してある程度は把握していた。だから、セナの知りたがっていたことは式符が消え失せた後のことであった。つまりはパフィのことであった。
「式符が消えた瞬間、パフィは何を勘違いしたのか悲鳴を上げてたぞ」
俺が告げると、セナが微かに笑った、気がした。
また逆に、俺も気になったことを尋ねた。
「式符のことだけど、俺とパフィ以外にも他の誰かに渡してただろ?」
セナがこくりと頷いた。
「あれは、【プリンセス・ローズ】に渡した」
プリンセス・ローズ?
意図せずオウム返しで呟いた俺。
しかし、セナはそれより詳しくは話さなかった。
どこか、照れくさそうなセナを見て納得した。
彼女も複雑な心境なのだろう。
変わることは難しく、どこかむず痒いものだ。
それに何よりセナも乙女だものな、言わぬが花ということもあるだろう。詳しく尋ねる方が野暮ってものだ。
俺も、何だか嬉しくなって自然に笑みがこぼれたのだった。
○○○
その翌日のことだ。
引き戸の向こうから声がした。
「セナ、ムコ殿、おるか?」
聞き慣れたはずの、凛とした声音だ。
けれど、一抹の不安を覚えた。
何かがいつもと違う───?
しかし何はともあれ、待望のセンセイの帰還であった。
そして、その背後にはミカがいたのだった。
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