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第6話 聖騎士 vs 《暗闇の猟犬》①

本日2話目になります

前話がまだの方はそちらを先にお願いします

○○○




 場所は王城。

 俺は万が一襲撃者に目撃されぬように兵士の格好で着替え、内部に紛れ込んだ。こっそりそれらしい服に着替えて、城内の関係者に扮したのだ。


 パフィの顔を見たかったが、俺が会いに行く所を誰かに見られたら厄介なことになってしまう。だから俺は自重した。

 その代わり───


 王城を護るのは、俺と王国騎士団から選抜されたメンバーに加えて、クラーテルのシスター達であった。


 シエスタさんや、団長であるエリスパパや副団長達に挨拶を交わし、軽く打ち合わせを済ました。積もる話もあったけれど、それもこれも、襲撃を全て防いだ後だ。


 余計な感傷は抱くまい───彼女と顔を合わさない───逆にそれは俺にとっても良かったのかもしれない。手筈通りに彼らの護衛はエリスパパ達に任せた。


 そうして、俺は部屋に一人で待った。

 じっくりと王城内の気配を読む。

 今ちょうどパフィ達が王城の隠し通路の入口を開き、足を踏み入れたのが分かった。


 襲撃に備えて待つ時間───思考は自然とセナのことになった。






「わたしも少しだけ外の世界に出てみようと思う」


 正面を向いたままセナが呟いた。


「今回の件を終えた後でいい。イチロー、わたしを助けてくれる?」


 一瞬何を言われたのか理解出来なかった俺も、すぐに「当たり前だろと」返答した。彼女がどういった心境なのか、何の切っ掛けがあったのか、俺には推測することしか出来ない。けれど確かなことが一つあった。彼女が勇気を振り絞ったということだ。それも特大の勇気を。


 無償に彼女が愛おしくて、俺に背中を預けるように座った彼女を持ち上げて正面に相対させた。


「イチロー、どうしてあなたが泣いてるの……」


「泣いてねーし。これはあれだ、心の汗だ」


 言うなりがばりと彼女を抱き締めた。

 そうだ。セナは長らく停滞していた時間を進めることを決心した。それはつらく苦しい決断であっただろう。

 けれど彼女は、最初の一歩を踏み出したんだ。





 思考が現在に引き寄せられた。

 まさに今、賊が城内に侵入した。

 人数は六……いや七人だ。

 こちらが人数の把握を終えた瞬間、ぱっと周囲の灯りが消えた。

 何らかの力によって強制的に暗闇が作られた。


 しかしそんな中、彼らの動きから困惑が手に取るように伝わってきた。城内にいるはずの人間がいないのだ。さもありなん。


 王城に来るのは《正体不明(アンノウン)》か《暗闇の猟犬(ダークネスハウンド)》のどちらか───前者と予想していたが、どうやら予想はハズれた様だった。


 相手の気配を頼りに部屋から飛び出し、駆け出すと共に暗闇の正体を探る。


 アイテムによるものか確かめるためにも───《祝の指輪アイテムエフェクトジャマーリング》を起動させる───しかし反応せずに光が戻ることはなかった。


「それなら───」


 次は───体内に眠る《護剣リファイア》へと語りかけた。今から《スキルディフェンダー》を用いる。護るべき者を護るためにもどうか力を貸してくれ。


「発動」


 しかし───


「反応せず、か」


《スキルディフェンダー》を《護剣リファイア》によって増幅してもなんの効果も示さなかった。つまりこの強制的な暗闇はスキルによるものでないということだ。

 消去法的に考えると、その正体は魔法によるものとなる。


「《灯り(ライト)》」


 既存の初級魔法により周囲を照らそうと試みる───も不発。


「これは……」


 違和感を覚えた。

 再び《灯り(ライト)》によって周囲を照らそうとするも、不発───しかし、二度目ではっきりと違和感の正体がわかった。

 魔法を発動させる際に、俺の光魔法の粒子が拡散、いや、引き寄せられたのを感じた。通常ならあり得ない動きだ。

 なるほど───暗闇を作り出した仕組みが朧気ながら分かった。


 しかし、そこで時間切れ。

 正面に一人目の暗殺者の濃密な気配を感じた。



 




コミカライズ版最新話もマンガBANG!にて本日更新となっております。

お手隙の方はぜひぜひ一読よろしくお願いします。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 本筋と関係ないんですけど、最早陰のヒロインと言っても差し支えないリファイアもちゃんとイチローの中で在り続けて今後も活躍してくれるようでなんかホッとしました(ヤツとの決戦で欠片になった影響で…
[一言] 更新ありがとうございます。 現れた猟犬、暗闇の正体の尻尾をつかめる。 光を引き寄せる……光を一点に集めて光がなくなった空間に暗闇を発生させている……? 空気を抜けば真空になるような感じ………
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