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第12話 君の名を

もしよろしければ、

『インタールード1 第1話 竜宮院くんはぼく達の友達です』を先にお読みください


以下の人物が登場します。

ゲーマーかわいいショタの斎藤栄助

野球部で有名選手の田部孝介

元不良現陽キャイケメン鈴木聖夜









◇◇◇



「だいじょーぶ! 僕が何とかしてみるからさ!」


 彼がそう言うと、女子達が「わあぁーーー!!」と歓声を上げた。


「頼むぜ、本当に」


「まあ、俺は信じてるけどな」


 彼の大親友であるべーたーこと野球部の田部孝介が彼の肩を叩くと、元不良現陽キャのセー君こと鈴木聖夜(ナイト)が信頼を口にした。


「少し信頼が重いけど……まあ、僕に任せてよ」


 彼は、笑顔で頷いてみせた。

 その笑顔に再び女子が色めき立った。

 クラスメイト達は、彼に全幅の信頼を置いていた。


 学校では、まだ夏休み前だと言うのに、夏休み明け少ししてから始まる文化祭の準備のためにと、各々のクラスが出し物を決めてしまわないといけなかった。多くのクラスが出し物決めが難航している中、彼らのクラスも例に漏れず、中々決まらずにいた。


 そんな中、彼の所属するメンバーの内の一人の意見───トロッコ喫茶が、採用された。それはあまりにも奇抜な意見であったが、クラスメート達の反応は概ね上々であった。


 けれど、一つだけ問題があった。

 それは教室の広さである。

 自作トロッコというアトラクションに喫茶要素を足した出し物をするにはどうしたって通常の教室では広さが足りなかった。

 そのために()が、全学年全クラス中、数クラスしか借りることの出来ない視聴覚室などの広めの部屋を借りるべく、クラスのメンバー達から託されたのだった。




◇◇◇




 昼食は決まったメンバーが集まる。

 彼の属するグループは学年でももっとも目立つ六人がいるグループであり、トップカーストに位置した。


「そう言えば、今日サイトーは? トロッコ喫茶とかいう無茶な意見はそもそもあいつが言い出しっぺだろ」


 田部孝介が彼に尋ねた。


「心配だね、どうしたんだろ」


 彼らのやり取りに鈴木聖夜がしかめっ面になった。


「かーーっ! なんだよ、ダチなのに今頃かよ。アイツなら風邪だか何だかで休んでるってさ」


 同グループの女子二人は「あたし知ってたー」「私もー」と声を上げた。


「なら、僕達で見舞いにでも行かないかい?」


「おー、いいなそれ! なら部活後にでも寄ってやっか」


「じゃあ、俺らは遊んでっから部活が終わったら連絡くれよ。合流して一緒に行こうぜ」


「それあたしもさんせー!」


「私も行くわ。みんな行くならいくしかないじゃない」


「僕も賛成かな。視聴覚室を貸してもらえるかの交渉が終わり次第僕もみんなに合流するよ」


 よっしゃ決まりー! と鈴木が声高に叫ぶと、次は見舞いに何を持っていくかでがやがやと騒ぎだしたのだった。




◇◇◇



 グループの中心的存在は、まさに彼であった。

 彼はある種のカリスマの持ち主であった。メンバーの男子から厚く信頼されてるのみならず、女子は二人共が彼に好意を抱いていた。

 甘いルックスは可愛らしく、物腰は柔らかく人当たりも抜群に良い。そんなだから誰もが彼を意識せずにはいられないのだ。


 彼自身もそれを自覚していたけれど、だからといってそういったことを己の私欲に用いることに多少なりとも嫌悪を抱いていた。


 しかし彼は今回、クラスメイトの期待を背負うこととなった。だからこそ、視聴覚室を借りるのに、己のそういった点を利用するのもやぶさかでなかった。


 彼はいつもの態度や物腰を崩すことなく、視聴覚室を欲する他のクラスの代表達に対し根気良く交渉し続けた。また時にはなだめすかし、あるいは適切な交渉材料や代替案を提案することで、彼は見事にその権利を手にすることとなった。視聴覚室を借り受けるのは中々に大変なことであったが、強い意思によって、彼は何とかそれをやり遂げたのだ。


 文化祭管理委員の女子生徒が、彼に一枚の紙を手渡した。


「はい、貴方のクラスが視聴覚室を使うことに決まりましたので、ここにクラスや貴方の氏名を記載してください」




◇◇◇




「見舞いっつったらビスケット詰め合わせだろー」


 値段も考慮して、彼らはサイトーのためにと菓子セットを購入した。


「『サイトーへ』って書いた方がいいんかな?」


 鈴木が菓子の袋に付属してた紙を取り出した。


「せっかく買ったんだから書きましょうよ」


 女子の一人が賛成すると「だな」と鈴木は頷いて、カバンからペンを取り出した。そして、ペンを握るとおもむろに───


「すまん……サイトーってどんな漢字だっけ?」


「えーっ! そんなのも知らないの? セイヤ友達甲斐なーいっ!」


「うっせー! そんなのは良いから代わりに書いてくれよ!」


 鈴木からペンを渡された彼女はすらすらと紙に、これからおもむく友人の名前をしたためた。そこには妙に可愛らしい文字で『才木藤二郎』と書かれていた。




◇◇◇




「書きましたよ」


 彼は文化祭管理委員の女子生徒へと、言われた通りに記載した用紙を手渡した。その氏名欄には───


「はい、確かに承りました。斎藤栄助さん」


 







 


 



 


 







最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

『おもしろい!』『続きが読みたい』『更新早く』

と思った方は、よろしければブックマークや『☆☆☆☆☆』から評価で応援していただけたら幸いです。

みなさまの応援があればこそ続けることができております。

誤字報告毎回本当にありがとうございます!



竜宮院さんが帰らなかった世界線ですね

帰るか帰らないかは今のところ不明ですが……


ただ帰らなかった場合、竜宮院さんポジに真っ当な人材として斎藤くんがすっぽり収まってたりします

彼は竜宮院さんのお陰で垢抜けて、田部や鈴木といった友人も出来たのでクラス内でも一目置かれる存在になりました。


才木くんは初登場ですね。名前だけですけど。

才木藤二郎、略してサイトーですね


竜宮院なんかいらんかったんや!逆にいない方がみんなイキイキと暮らせてるんや!



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― 新着の感想 ―
[一言] まぁオッサンのまま帰っても復学できないからこの世界線だろうし、 肉体が当時のまま戻ったなら綺麗な玉子になっててまた違う未来か、 トラウマでやっぱり社会復帰できなくてこの世界線かもしれない …
[一言] 更新ありがとうございます。 リューグーインという超特大の疫病神を押し付けられた異世界は危うく滅びかけ、現代社会ではかなりよくなるという。 勇者というか完全に世界のガン扱いだったんだな、と。…
[良い点] なんと幸せな世界線なのでしょうかw 万が一、彼が戻ったりしても性根は変わらないでしょうから前よりひどいことになりそうですものね・・・。
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