第11話 王都での三日間②(ロズウェル事件)
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王都での竜宮院の暴走から半年が過ぎた。
この半年間は、基本的にはのんびりと過ごしてきたけれど、それでも無視出来ないほどには、いろいろなことがあった。
半年というのは、遠い過去とは言い難いものの、思い出に浸るには最近こと過ぎる微妙な期間だったりする。
けれど、そうだな。
時には立ち止まって、慌ただしく過ぎ行く日々をゆっくりと思い返してみてもいいかもしれない。
実際にあの日が俺達にとっての、一つのターニングポイントであったのだから。
俺達はあの日、ようやく竜宮院の問題を片付けることが出来た。もちろん彼によって二度と元に戻らぬようになったものも多く、本当の問題解決にはかなりの時間を要するように思われた。
けれどそれこそ、この世界の人々がどうにかするべきことでもあった。俺に出来ることは精々、俺の周りの人間を助けることだけだ。
アノンから頼まれた通り、俺達は三日間を王都にて過ごした。
予定通りの三日目には、彼の言うままに従って訪れた劇場では、アノンプレゼンツの舞台を観覧することとなった。
俺と一緒に舞台鑑賞した面々からはわりと、好意的な意見が多く、何だか自分が褒められているようで、どこかむず痒かった。
それはそうと、俺を主役にした舞台は、第二弾、第三弾と続編が制作されることも決まっているようであった。
俺は、アノンから脚本のために話を聞かせて欲しいと頼まれたアンジェやエリスが嬉々として了承していたのが、気になると言えば気になったが、俺はすすっと視線を反らし、見ざる聞かざる言わざるを決め込んだのだった。そうしなければ、恥ずか死んでしまう。
これは余談ではあるが、舞台に関してとても興味深い話を耳にした。
前回の竜宮院脚本の舞台に出演していた『聖騎士ヤマダ』役の役者さんは、実在するとされる最低キャラを演じたお陰で、キャラと同一視され、罵声を浴びたり、人格否定されたりと散々な憂き目にあっていたそうだ。こんな話を聞かされた俺は被害者であった。泣いて良いですか?
ただしかし、今回の舞台では、そういったネガティブなイメージを打ち消すためにも、元『聖騎士ヤマダ』役の役者さんには出来れば真『聖騎士ヤマダ』役、それが難しければ代わりに何らかの良いポジションのキャラの役を割り当てられることが決まったそうだった。難しければ? 確かに……ボルダフで観た舞台の『ヤマダ』は体型的にちょっと……ん、んん(咳払い)
話は変わって、忘れてはならないのがサガ達だ。
サガは、俺達が舞台を観ている間、舞台なんて興味ないと副官さんや聖騎士のアダム、ネリーのコンビ達と共に、酒場でパーリーピーポーウェイウェイを決め込んでいたのだった。
役目から開放されこれからどうすればいいのか途方に暮れるネリーを相談に乗るという名目で連れ去ったサガとアダムは、多くの人間を巻き込んで翌朝まで飲み明かしたそうだ。
これは後日、顔面蒼白にしたメガネの副官カミュ氏から聞いた話だ。そのときの料金は、仲間の分はもちろん、居合わせただけの者達の分も全てサガが持ちで、今回もらった報奨の一部をデロリと溶かしたそうであった。昭和の大スターかな?
カミュ氏のメガネがズレて見えたのは俺の見間違いではなかったはずだ。なむー。
ただ、やっぱりサガの酒の飲み方はかなりのヤヴァイ。
喉の焼けるようなアルコール原液みたいな酒をかっぱかっぱ流し込んでは陽気にガハハと叫んでいた。
サガの肝臓……何とか頑張ってくれよな。などと感傷浸りつつも、魔法やポーションなんかがこの世界で肝臓に直で効くポーションなんてものがあっても不思議ではないので、その辺はもう大丈夫だろうと思い込むことにした。
ん? どうして、サガの酒の飲み方を知ってるのかって?
一緒に飲みに行ったことがあるからだよ。それも二回も。
一度目は、封印領域の征伐祭ゼロ日目で、二度目は、舞台観賞の前日だった。
そう、舞台観賞した前日に俺は、サガとアダムという屈強な男性に脇を抱えられ、酒場へと連れていかれたのだった。これはまさに連行とか誘拐と言い換えても良い。
あのときの俺の気持ちはまさに、ロズウェル事件のグレイそのものであった。
あれは王都で過ごした数日の中でも、濃い夜であった。
もとい「濃いメンツで飲んだw」というやつだ。
今から、その夜の話をしていこう。
話は、ぎゃあぎゃあと騒がしい夜の酒場に連れられ、大酒飲みのおっさん二人と共にテーブルを囲んだところから始まる。
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