第27話 Before The Catastrophe①
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聖騎士ヤマダは、白い少女セナに勇者リューグーインと対峙するという決意を伝えたその翌日から、山を降り、頼れる仲間達と共に、精力的に行動することとなった。
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ヤマダと共にボルダフに訪れたオーミは、気ままな猫の様であった。彼女は、ヤマダと行動を共にしたかと思えば、姿を消し、またしばらくすると、いつの間にかヤマダの背後で「ふむふむ、なるほどのー」などと相槌を打っていたりと、まさに神出鬼没という言葉が似合うムーブを繰り返した。
しかし、ヤマダはもはや彼女のことを敬愛し、最上級に信頼を置いているため、彼女が行方知らずになっても「ああーどっか行ってんなー、けど俺のために動いてくれてんだろ」程度にしか思わず、深く問い質すことはなかった。必要なら、自分から話してくれんだろ。少しばかり、盲目的な信頼とも言えるが、それでも彼の考えに間違いはなかった。
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覆面の情報屋アノンは、ヤマダが山から降りてきたその日、改めて彼から頭を下げられ、勇者との戦いに手を貸してくれと頼まれた。
慌てて頭を上げるように伝えたアノンは、自らが彼の助けになってみせるとはっきりと答えた。
ヤマダの表情が綻んだのを見たアノンは、彼の様子がこれまでと違うことに気付いた。決意した男の表情に胸が高鳴るのを感じた。
アノンは湧き上がる気持ちを圧し殺し、かねてより持っていた考えをヤマダに提案したのだった。そして、その先にこそ───
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剣聖エリスは、聖剣───《護剣リファイア》を師匠であるヤマダへと渡した。どこか神聖な雰囲気を醸し出すオーミからの指示であった。ヤマダが国からの招集に応じた場合、必ず彼にとっての最重要アイテムとなるからと説明された。
長らく自身を助けてくれていたという話を聞いたこともあり、彼女はそれを手放したことで形容し難い寂しさを感じたのだった。
だだ、彼女もまだまだ未熟の身であるからか、それが表情に出てしまい、ヤマダに感情を悟られてしまった。
しまった、と思ったのもつかの間、ヤマダはしばし目を閉じた後に、マジックバッグから何かを取り出した。
「代わりに、こいつをやる」
それは、ヤマダが用いていた白い魔剣───グラムコピーであった。エリスは恐れ多いと遠慮はしたものの、ヤマダの押しの強さに負け、ついにそれを受け取ったのだった。
それからというもの、彼女は暇さえあればグラムコピーを眺めていたのだった。
「にやにやしていて、何だか気持ち悪いわ」
小屋で養生を続けるエリスのその姿を見て、白い少女がジト目で呟いたのだった。
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オルフェリア・ヴェリテは自らが師父と仰ぐヤマダから、今度の国の招集に参加する旨を聞かされた。その際、彼が何と戦おうとしているのか、そして、何が起こっているのかも説明されたのだった。
その話はあまりにも突拍子もない話であったが、かつて自らが覚えた違和感を説明するにたる話だと気付いた。彼と出会ってからそれほどの時間を共にしていないが、そんなものよりも共に過ごした密度こそが大事であると彼女は考えていた。共に背中を預け合った彼は、そんなくだらない嘘を吐くような人間ではないとオルフェリアは感覚的に知っていた。
勇者の能力は未だに判明していないけれど、もしもそれが、魔力などの超常の力を元に用いられたものであれば、自分と───この《双剣陰陽》が彼の力になれるのではないか。オルフェリアはヤマダがあの日、みんなを庇い一人で漆黒の暗闇に飲み込まれたことに忸怩たる思いを感じた。だからこそ今度は、絶対に彼の力になってみせると決意を固めたのだった。
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怜悧冷徹のエルフ───プルミー・エン・ダイナストは自らの本拠地であるグリンアイズへと戻り、事件の後始末に奔走していた。
超特急で街へと戻ったその日から彼女はひたすらに仕事をし、ようやく一段落ついたというときに、ボルダフにいたヤマダやオーミやアノン達から連絡があった。
プルミー自体も、国からの招集に参加するように言われていたが、どうやらそこにヤマダも参加するのだそうだ。当然だと思った。彼こそが本来の栄誉を受け取るべきだと思ったのだ。
しかし、彼らの話そこで終わらずに続いた。
全てを聞いたあと、ヤマダから力と知恵を貸して欲しいと頼まれた。彼女は悩む前に頷いた。これも当然だった。記憶が二つあるなどという荒唐無稽な話をしたとき、真剣に聞いてくれたのは他ならぬ彼だった。そして、三つ首龍から己の命を救ってくれたのも彼であった。
まずプルミーは、娘のアンジェリカを呼ぶべきだと提言した。娘は、巷では賢者と呼ばれているほどの魔法使いであった。三つ首龍戦で用いた雷魔法を創り上げるには、莫大な知識が必要なはずであった。この様な場合、知恵を出す者は多ければ多いだけ良かったりする。
そうして、プルミーとアンジェリカは彼を助けるべく、彼らとの話し合いを何度も重ねた。閃いたのはプルミーであった。彼の持つソレと似た能力を持つアイテムであれば、間違いなく彼の助けになるはずだ。
彼女は、次の話し合いの際、その考えを知らせたのだった。
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誤字報告毎回本当にありがとうございます!
②まである堪忍して欲しい。




