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第38話 続 聖騎士 vs《遍く生を厭う者》②

○○○



 両腕を失ったときと比べたら───そう己を鼓舞するしかない。迷っている時間はなかった。


 すかさず《超光速戦闘形態アウト・ストラーダー・デル・ソーレ》を発動し、右手のグラムで得意気な顔をした《遍く生を厭う者(アイニカ)》をバラバラにし、温存していた《光収束(コンデンサ)》で消滅させた。

 目の前の敵が復活を果たす前に、右手一つですぐさまセナ謹製の鎮痛剤を飲み下し、ポーションを煽った。

 流血は収まれど、左腕は失ったままだ。


「どうすりゃいいんだ……」


 鎮痛剤を飲んだとはいえ未だズクンズクンと痛む左腕を押さえ、一向にまとまらない思考を何とか働かせる。

 そうこうしない内に《遍く生を厭う者(アイニカ)》が復活を果たした。


「『どうすりゃいいんだ』だって? 聖騎士よ! これは異なことを言う───」


 目の前にいる屍人の王は、縦にも横にも大きく荷重ギリギリまで筋肉をモリモリに搭載したマンガの筋肉キャラのような容貌で、いちいち持って回った話し方をするのが鼻についた。


「───貴様はただ死んでくれさえすればあとは何もしなくていい!!」


 大仰な身振りと共に《遍く生を厭う者(アイニカ)》が声を張り上げ───それと同時に地を蹴り弾丸の様な速さで突っ込んできた。《瞬動(アウトバーン)》による思考加速のお陰で、それすらスローモーションで認識出来ていた───彼の蹴りをスウェーで避けた───さらなる大剣での追撃をグラムで受け弾き───それでも終わらずに喰らいつくように十本もの暗黒の腕が俺へと射出された───一本、二本、三本、四本と俺は切り裂いた───しかし左手を失ってバランスを欠いたところを突かれ───間に合わ───九本目がついに俺の脇腹を食い千切り、十本目は俺の首筋に噛み付き───そこでようやく《超光速戦闘形態アウト・ストラーダー・デル・ソーレ》を発動し───暗黒の腕を完全にバラバラにし、《遍く生を厭う者(アイニカ)》本体を斜めから何度も削ぎ落とすように切り刻んだ。


「うう、ぐ、う」


 脇腹の傷は深かった。それだけでなく、《遍く生を厭う者(アイニカ)》によって呪いの様なものが付与されていた。

 そいつは俺に異常なほどの激痛と、回復の遅延効果をもたらした。しかも浄化するのに時間を要するタイプのものだ。

 闇魔法耐性のある聖騎士だからこそこれだけで済んだとも言えるが、戦闘の真っ只中ではそれどころではなかった。


 ポーションを呷り、思考を巡らせた。

 人間の脆弱性を認識しているくせに、《遍く生を厭う者(アイニカ)》は確信犯的な煽りで実演しながら『腕を生やせ』などと宣ってみせた───とそこで何かが閃いた。


「聖騎士、何を笑っている? 気でも触れたか?」


 完全回復した《遍く生を厭う者(アイニカ)》が俺に問うた。


「お前が言ったんだ───」


「何をいったい」


「腕を生やせと言ったのはお前だッッ!!」


 俺は《光収束(コンデンサ)》などで培った、光魔法で生み出した光の粒子を操作する技術で以て、光魔法によって擬似的な左腕を顕現させてみせた。


「悪くねぇ」


 光の左腕をにぎにぎぐっぱぐっぱと閉じて開いてをし、感触を確かめた。


「聖騎士よ、大層なことを言う……ただ偽物の腕が一本戻っただけだろう?」


 嘲るような《遍く生を厭う者(アイニカ)》に見せつけるように、さらに光魔法を発動し、


「なッッ───」


「ようやく驚いてくれたな。その顔が見たかった」


 光魔法による擬似的な左腕に加えて、多少見目は悪いものの本来存在しないはずの三本目と四本目の腕を背から生えるように顕現させた。

 俺はもう一本のグラムを取り出し、光の左手で握り二刀流とし、三本目四本目の腕は───


「ここからが、本番だろ?」


 俺はそう告げて、地を蹴った。

 




 






 





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ラストバトルみたいなものなんで、長いけどお許しを三つ首龍ほど長くはなりませんので……

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― 新着の感想 ―
イチローさん…それ体をすべて失っても光の魔法で復活できるのでは? まるでセナが光の粒子を身体にまとっているように。
[一言] 短すぎて評価できない
[良い点] やっぱ人間じゃねぇわこいつ。
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