第14話 超龍決戦( vs 《封印迷宮より現れしモノ》②)
○○○
「お前達ッッ!」
プルミーさんが後方へと威風堂々たる様子で声を張り上げた。
「刮目せよッッ!! 空を埋め尽くさんばかりのこの光の雨をッッ!! そして蹂躙されし三つ首の龍をッッ!!」
プルミーさんが従えし者達───年齢も性別も職業もバラバラの彼らであったが彼女の言葉ではっきりと何かのスイッチが入った気がした。
「これでも彼らは全く本気を出してはいないッッ!!」
彼らのボルテージの確かな高まりを感じた。
「此度の戦いに参戦してくれし猛者はここにいる三人ッッ!! 一人目は《七番目の青》所属のオルフェリア・ヴェリテッッ!! 二人目は賢者アンジェリカ・オネストッッ!! そして三人目は光魔法の最大にして最強の遣い手である探索者ロウッッ!!」
まったくおかしな状況であった。
目の前では未だに降り注ぐ光の雨が敵をメタメタにしているのに、方や後ろでは大勢に紹介されているのだ。
というかアカン! 有名人になってまう!!
『サインくれっ!』とか『握手してください!』とか『惚れました!』などと言われてやいのやいのとファン達に囲まれて、『いえいえ、僕はそれほど大した探索者ではありませんから……ティヒヒ』なんて謙遜する羽目になってまう!!
「しかし驚くなかれッッ!! 私にはわかるッッ!! お前達は彼らに勝るとも劣らない猛者達だッッ!! そんなお前達の力を存分に発揮するためにもッッ!! 私を信じッッ!! 私についてこいッッ!!」
彼女の演説に「「うおおおおおおおお!!」」と雄叫びが上がった。彼らのテンションは最高潮へと達したのだった。
「いい演説ですね。ちょうど時間いっぱいでした」
光の豪雨がやみ、晴れた視界の先には無傷とまでは言わずとも、ほぼ初期状態の《三つ首の液体龍》がいた。光魔法耐性あり、と。
彼のモンスターが激烈なる咆哮を上げた。明らかな敵意と憤怒を感じさせた。
三つ首龍が水をすくうかのように地面へと手を突っ込むと、握り締めた大容量の土をそのまま力任せにこちらへと投げ、同時に尻尾で地を叩き礫を散弾銃のように飛ばした。
龍の怒りはそれでも収まらない。彼はそれを一度と言わず二度三度と、こちらが疲弊し全滅するまで続けようとしたが───それは叶わず。その初動の頃には既にアンジェリカは、
「《焔時雨》」
発動の準備を終えていた。
俺の使った《光時雨》の火魔法版であった。
アンジェリカの固有魔法であり、俺と共同開発した懐かしの魔法でもあった。
大量の破壊を振りまく───はずであった龍の土魔法は、無限の魔力を持つとされたアンジェリカの放った無数の炎の針の前にはひとたまりもなく、それどころか、あっという間に数を逆転させ、一つ二つが礫をすり抜け着弾───かと思った数瞬後には、勢いの衰えることのない炎の針が三つ四つ五つ六つ着弾───そこからは延々と三つ首龍にダメージを与え続けた。
夢ではなく、自身が直面してようやくわかった。
ボボボボボ───着弾箇所からの発火はならずとも、微小ではあるが、それでも確かなダメージを与えられているように感じられた。
「これでいいのよね?」
アンジェリカが俺に問うた。先程伝えていた通りに彼女は動いてくれた。俺の言った実験とは、三つ首龍の弱点を炙り出すために順番に属性攻撃していくことであった。
「ああ、ばっちりだ」
アンジェリカは「そう……」とだけ答え帽子で表情を隠した。
今のところわかっていることがいくつかある。
切断が効果のない三つ首龍に、風魔法は効かないはずだ。
同様に液状化生命体の彼に、水魔法も効果が薄いと考えられた。
光魔法はほぼ無効とされた。火魔法は多少の効果があり、残るは───
「アンジェリカ頼めるか?」
彼女はこくんと頷き、作戦を簡潔に伝えた。
《焔時雨》が尽き、龍が三つの首をわちゃわちゃと動かし、怒りを表わした。
三つの龍の顎が光り出したのがわかった。
馬鹿の一つ覚えである龍の破壊光線の前兆であった。
「プルミーさんに、オルフェリアさん」
俺の呼び掛けに、彼女達が返事し、
「オルフェでいい」
「同じく。プルと呼べ」
彼女達の提案を受け入れ、
「今から、俺が単騎駆けします。液体の身体を持つボスは、一度倒したことがあります。アレが同じかはわかりませんが、やって損することはありません。その間、二人には護りを任せます」
そう伝えて、俺は《三つ首の液体龍》へと駆け出した。
「《煉獄の門》」
背後からプルーさんによる召喚によって燃え盛る厳かなる門が現出し、
「《流転:Ying》」
オルフェが何かを呟くと、手に握られた双剣が暗く鈍い色となった。そして、ちょうどそのタイミングで───三つ首龍から放たれた三つの光線が一つに交わり彼らへと襲い掛かった───瞬間、ゲロビを吐き出し続けるバカ野郎の足元に到着した俺は、
「貫通拳ッッ!!」
既に体内で練りに練られた魔力で以て、奥の手の一つである必殺拳を叩き込んだのだった。
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
『おもしろい!』『続きが読みたい』『更新早く』
と思った方は、よろしければブックマークや『☆☆☆☆☆』から評価で応援していただけたら幸いです。
みなさまの応援があればこそ続けることができております。
誤字報告毎回本当にありがとうございます!




