第6話 Never say die. ( vs《封印迷宮より現れしモノ》)①
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「《煉獄の門》」
プルミーの呼び掛けに応じ、前方に焔を纏った扉が彼女達を護るように現れた。彼女の背丈を頭二つ分超えるかという大きさのそれは、
「増幅器発動」
彼女の力ある声に従い巨大化を果たし、三首の龍の放った莫大なエネルギーの塊をゆうに超えるサイズとなった。
同時に彼女の指輪の一つがパリンと音を立てて消滅した。
「ひえええええええええぇぇぇぇぇ!!」
背後からクラインのものをはじめとしたいくつもの悲鳴が上がった───その直後、三つ首龍の光線が焔の扉と接触し、バジジジと目も眩むような火花を散らし、しばし均衡をもたらした後、大爆発を起こした。
「ぐぅぅ」
最も爆心地に近かったプルミーはあまりの衝撃にふっ飛ばされ、激しく地面へと叩きつけられた。彼女は激しい苦痛に呻き声を堪えることが出来なかった。
されど彼女の判断は速い。すぐさまポーションを飲み下すと、再度前線へと復帰を果たし、
「怪我人はいるかッ!!」
仲間達の安否を確認したのだった。
幸い、プルミーの機先を制する判断により、多少の怪我人はあれど重症者はいなかった。
「私がこいつを引き付けるッッ!! 動ける者は後方から上級魔法以上の魔法を浴びせろッ!! いいかッッ!! 中途半端な魔法はいらないッッ!! 上級魔法だぞッッ!!」
プルミーは中級以下の中途半端な魔法が液状の身体に沈み込み無力化されたのを既に確認していた。あれでは何百何千発撃とうともダメージを与えることはかなわない。
彼女の指示に従い「ハッッッ!!」と多くの者が応じたのだった。
「《葬送の機雷》」
彼女の極めて短い詠唱により拳大の蒼い焔が大量に現れた。それは彼女の周囲のみならず、彼女と三つ首龍を結ぶ射線状に何らかの意図を持って配置された。
戦闘に思考を割きつつも、プルミーは考える。彼女は三つ首龍のことを知っていた。
数年前だったか、どっかのバカによって改造された地龍が発見された。そいつは三つ首を持ち、鈍重ながらも、やたらと強固な外皮と、類まれな土魔法能力で多くの犠牲者を出した。最終的に、助太刀に来た聖騎士とその弟子によって滅ぼされたそうであるが、非常に強力なモンスターであった。
彼のモンスターは《三つ首の地龍》と呼ばれ、今でも恐れの対象となっていた。
「しかしこれは───」
プルミーは呟くと同時に、スラリと剣───《魔剣ニーズヘッグ》を抜き放った。
「《インヴォーク》」
彼女の呼び掛けに従い、魔剣が蒼く煌めいた。
《魔剣ニーズヘッグ》は遣い手の魔力を吸うことで、その意に従う。プルミーは魔剣が十分な量の魔力を吸収したことを確認し、その切っ先が届くまで二十メートル以上離れた距離から魔剣を振るってみせた。
「ギャアアアアアアアアアッッッッ!!!」
咆哮にも似た声であったが、まさしく絶叫であった。
《三つ首の地龍》は、その巨体を斜めに一閃され、身体の上下部位をずらし、やがてはズズンと地に落ちたのだった。
「「わあああああぁぁぁぁぁーーーー!!!」」
彼女の後方から歓声が上がった。
「さすがプルミー様」「お姉様最高」「ああ、プルミー様」などと様々な声と共に多くの者が歓喜に湧いたが、プルミーの視線は継続して険しいままであった。
どぶん───上下に分かたれた身体が動いた。そいつは互いに触れ合い、瞬く間に元の姿へと形を変えたのだった。
「それはそうだろうな。一筋縄でいくはずもないか」
一つ頷くと、プルミーは《三つ首の地龍》から更に距離を取り、魔剣を縦横無尽に振るった。
遠距離から相手を切り裂く魔剣───その正体は剣の射程を遥かに超えた光の鞭であった。
音速を超えた切っ先が彼女の意志に従い、光の軌跡を描き《三つ首の地龍》を粉微塵に切り裂いたのだった。
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誤字報告毎回本当にありがとうございます!
ヤマダ?……知らない子ですね




