第1話 竜宮院くんはぼく達の友達です
俺は何を見せられているんだ……?
となるかもしれませんが、実は
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一人目:斎藤栄助 (モブ)
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最近学校生活が楽しい。
元々ぼくは陰キャと呼ばれる人種だった。
僕の通う学校は比較的大人しく、コンビニの前にたむろしたり、タバコを吸ったりする学生は学年でも片手で数えられるほどだ。
とはいえ、ぼくはどんな相手だろうと会話をすることが不得手だったし、周囲に合わせることがとにかく苦手で『あっ! やってしまった!』と思った後は、切り替えられずに悶えることも多々あった。
けれど今は違う。
学内でも陽キャのトップグループとされる、彼───竜宮院王子君の友達になったからだ。
彼はとにかくイケメンで、ぼくみたいな目立たない人種にも声を掛けるなどの気遣いもできて、いつだってクラスの中心にいるのだ。
例えば、体育祭のときだってそうだ。
「体育祭の練習が嫌な人はいるかい? 僕はそういう人達にこそ伝えたい。一生の思い出になる体育祭。その大事なイベントを、こんな形で台無しにしてもいいのかい?」
竜宮院君は良く耳に通る声で告げ、まずは一度女子を一瞥すると「さすが竜宮院くん」「竜宮院すごい」などの声が上がった。
女子の勢いに男子が怯んだところで、サボり賛成派筆頭の男子のところにいくと彼は耳元で何かボソリと呟いた。
それがきっかけになったのかどうか、ぼくにはわからないけど、その男子は「仕方ないからよぉ! 体育祭は力入れるか!」とどこか女子の方を気にしながら声を張り上げた。
彼が何か発言すると、その影響力の強さか、皆の注目が集まる。
それはぼく達にはない彼のカリスマ性ゆえのことかもしれない。
竜宮院君との出会いを思い出す。
「君、名前は何て言うんだい?」
初めて彼に声を掛けられたとき、これがネットなんかで言われる、所謂イケボってやつなんだと思った。
「え、ぼく? ぼくは斎藤。斎藤栄助」
「ふーんエースケね。ちょうどいいね」
「ちょうどいい?」
ぼくが聞き返すと、
「うん、ちょうどいい。それより君さ、特技は何だい?」
と彼は矢継ぎ早に質問を繰り出したり
「ゲームかぁ! いいね! ゲーム! いいじゃないか! これからはサブカルの時代だと言うしね! 君さ、面白いね!」
ぼくの背を叩いて、彼は声を上げて喜んだ。
そして、ぼくに向かって、
「うん、君いいね。僕と友達にならないかい?」
ぼくは突然のことに声を出せないでいたが、彼は構わずに、
「君のことは───そうだね、栄助だから『エー君』と呼んでいいかな?」
これがぼくの高校生活での初めての友達との馴れ初めなのだった。
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二人目:田部孝介 (モブ)
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中学は野球に費やした。
高校でもそのつもりだ。
勉強はそつなくこなしてきたけど得意ではない。
それに野球一筋だったせいで、ファッションにもとんと疎くて、高校生にもなって、いつも同じシャツに同じジーパンとダサいカッコをしていた。
それでも別に構わない。野球で進学すればいいし、大学でオシャレを勉強すればいい。そう割り切っていた。
ある日後ろの席から声を掛けられた。
やたら耳当たりの良い声だったことを覚えている。
「君の名前はなんていうの?」
後ろを見たとき思った。
美少年とは、彼みたいな人間のことを言うのだろう。
それに引き換え、俺はボウズ頭だ。
オシャレもクソもなかった。
「あ、ああ。俺は田部孝介」
「田部?んーー、なるほどね、それはまたまた」
彼は何かを考え、上を向いた。けどそれも一瞬で、
「それはちょうどいいね」
と答えた。
「ちょうどいいって、何がだ?」
うんうんと、鷹揚に頷き、
「失礼。先に名乗るべきだったね。僕は竜宮院王子」
自らを名乗った。彼は俺の肩に手を回し、
「君のことは、うーんそうだね、田部だから、『タベ』を逆にして『ベーター』とでも呼ぼうかな」
「ぷっ! なんだよそれ! 『寿司』のこと『シースー』っていう業界人かよ!」
それからお互いに会話を重ね、
「ふーん、○○中学のエースで四番だったんだ! すごいね、将来はプロ野球選手かな?」
うーん!いいねぇ!と彼は喜色の声を上げた。
その勢いのまま俺に手を差し出し、
「良ければ、今度僕と買い物にでも行かないかい? 欲しい服があってさ、良かったら一緒に服でも見に行こうよ」
俺は彼の手を取った。
これが俺と竜宮院の出会いだ。
恥ずかしい話だけど今では親友だと思っている。
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三人目:鈴木聖夜(モブ)
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自分の名前が好きじゃなかった。
聖夜ってなんだよ。しかも、名字は鈴木。
鈴木ときて、聖夜とくる。
名付けのときにおかしいと思わなかったのか?
考えても考えても立派なキラキラネームだった。
そもそも両親が、そういう人だったので、自然と俺もそういう風に教育された。
オヤジの教育の賜物か、ヤニは常識だし、ツレと意識がなくなるまで呑んだことも数えきれないほどある。
喧嘩も日常茶飯事で、学校は大人しい奴しかいない退屈極まりない、つまらない場所だった。
「僕は、竜宮院王子。君の名前は何だい?」
隣の席の奴に声を掛けられた。
耳にすっと通る声だった。
俺が、無視してると彼はおもむろに話し出した、
「僕のこの『王子』って名前さ、完全にキラキラネームだよねぇ。恥ずかしいったらありゃしない」
「『ナイト』だ。『聖夜』って書いて『ナイト』と読む」
自分と同レベルの名前の持ち主が現れたからか、俺はそう答えていた。
「へー!でもカッコいいじゃない!……って言っても、『ナイト』って呼ばれたくなさそうだね───」
なるほどなるほど、と手を叩き、
「それはちょうどいいね!君のことは『セー君』って呼んでもいいかな?聖夜の『セイ』から取ったんだよ」
大きな身振りで、声を上げて、俺に提案した。
不思議と嫌な感じはせず、それを了承した。
まぁなんだ、今では竜宮院は俺のダチだな。
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<解説>
栄助→エースケ→エー君→A
田部→タベ→ベーター→β→B
聖夜→セーくん→セー→C(ドイツ語でCはセー)
ちょうど自分にとって使えそうな奴の名前が、これまたちょうどABCでした。
ほらモブのことモブA、モブB、モブCとかいうじゃないですか。
プロに行きそうな野球部、大人しい学校に一人はいるだろうイケメン不良少年、ゲームが得意で陰キャだけどショタっぽい隠れ美少年。
ほら、どの子も実は一目置かれていて、グループ作るならこれまたちょうどいい感じがしますよね
それに実はそんな風に扱われてる3人は竜宮院に大切な友情を感じていますが、竜宮院の方は彼らに友情を一ミリたりとも感じていません。
こんな感じで竜宮院は腹の汚い部分を隠すのが上手だったりします。
竜宮院はやべぇ奴なので自分が物事の中心で、他人は全員モブ。使える奴かどうかで人を判断してます。
友情を全く感じていないどころか腹の中で使えるモブキャラとカテゴライズしてたってお話でした。
解説で説明する執筆力の無さを許してください。
今後もっと分かりやすい表現を心がけます。
最後まで読んで頂きまして本当にありがとうございます。
『おもしろい』
『まさか竜宮院って……?』
『早く更新しろ』
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