表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

140/357

第24話 痾(あ)

少しずつ少しずつ




○○○



 中々にしつこい雨であった。

 ただそれでも、人員増加があったお陰でそれほど負担が増えたということはなかった。


 人員や物資の追加は、アノンから聞かされた翌日にはおこなわれた。もちろん全て一度にというわけではなかったけれど、それでも俺はもっと長い時間を要すると思っていたので感心仕切りであった。


 元の世界と違い、こちらでは組織のトップからボトムまでの構造がスマートであることと、トップの権力が圧倒的であることが理由だと思われた。


 もちろん良し悪しはあるだろうが、今回に限ってはそれが俺達に味方をしたのだった。



○○○



 この日もまた、いつやむんだよという言葉を飲み込み俺達は、(フォグ)の討伐に精を出していた。

 館に戻ると、アノンから報告があった。


「イチロー、ついにアロガンスとバーチャスにも(フォグ)が現れた」




○○○



 向こう側にいる、アルカナ王国騎士団やシエスタさん、それにプルミーさんが心配であった。

 いくら《新造最難関迷宮》を攻略しようが、俺に出来ることには限界があった。


 それは当然であり「お前は何様だ」と自問自答してしまうくらいにはそんなことを考える行為自体が恥ずべきものであった。


 けどそれをわかっていてもなお、俺は彼らの安全を願わずにはいられなかった。



○○○



 雨が降り始めてもうかれこれ一週間以上か。

 人員増加もあったし、何とか余裕をもって乗り切れるだろうと考えていたが、それは甘い見通しであったのだ。


 俺達は出撃するたびにずぶ濡れになった。良化しない状況に加えて、増え続ける(フォグ)に体力面のみならず精神的にも徐々に削られつつあった。


 特に魔法使い職のディーテなどは、見ていて不安になるほどの憔悴ぶりであった。

 俺とミロは彼女に数日休むようにと言い聞かせ、気配察知スキル持ちのミロと共に、二人で(フォグ)討伐に乗り出したのだった。



○○○



 さらに数日が経ち、(フォグ)の出現に異変が生じた。

 これまでと異なったモンスターが現れるといった報告が挙がったのだ。


 (フォグ)屍人(グール)、骨戦士の組み合わせがデフォルトであった討伐対象に加え、液体状のモンスターが出現したのだ。


 一度報告が挙がってからはすぐであった。

 およそほとんどの拠点にてこの液体状のモンスターが見られるようになり、それは俺達も例外ではなかった。


 

○○○



 この液体状のモンスターを《液状生命体(フォグスライム)》と呼称したい。


 とにかくこいつはやっかいなモンスターであった。

 液体だからか、無闇矢鱈な剣撃や打撃は全く効果をなさず、その核を破壊するか魔法で消滅させない限り、何度も何度も再生と分裂とを繰り返したのだった。


 降り続く雨の中、討伐隊にとって、視界が非常に悪く、核を狙うことは中々に面倒な作業であった。

 また雨によって火属性魔法を使うことは躊躇われた。

 火属性魔法は、高威力の技が多いので、こいつを制限されることはかなり面倒なことであった。


 これは討伐に携わる全てのメンバーにとって非常に大きな負担となった。



○○○



 まるで、俺達が苦手意識を覚えることに比例するかのように、《液状生命体(フォグスライム)》はその数を増やした。


 そしてついに、討伐者からさらにやばい報告がもたらされた。


 真っ二つに切った屍人(グール)がぶにょりと液体状へと変化し、まるで分裂するかのように二体の屍人(グール)へと姿を変えたのだそうな。


 同様のケースは骨戦士でも見られた。


 つまり《液状生命体(フォグスライム)》の性質を持つ、屍人(グール)と骨戦士が見つかったのだ。


 魔法が有効であるから良かったようなものの、(フォグ)討伐で現れるモンスターが、単純な物理攻撃をほぼ無効化する性質を得たことで、俺達の負担は更に大きなものになった。




○○○




「これは一体どういうことか……。

 前回の《封印領域》とは、違い過ぎる───」


 センセイが、ぽつりとこぼしたのだった。


 





 




最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

『おもしろい!』

『続きが読みたい』

『更新早く』

と思った方は、よろしければブックマークや『☆☆☆☆☆』から評価で応援していただけたら幸いです。

みなさまの応援があればこそ続けることができております。

誤字報告毎回本当にありがとうございます!


あと数話で三人が出る予定です(予定)

今回は状況説明回でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] イチローそろそろなんか覚醒したりするんですかね? 個人的な感想なんですがセナが一向に出てこなくてイチャイチャが足りないので過去話読み返してこようかと思いました 一通り終わってからでいいので閑…
[一言] ・悪くなる戦況 聖女は当代最強の勇者がいれば等言っていたのに引きこもってる以上、この説明を信じていた人達のイライラがとんでもないことになってそう。 ・箱庭計画 勇者の被害にあって後遺症や将…
[気になる点] アンジェはプルミーとの記憶は有るのだろうか? 三人は何か王子から手紙?か身につける物でも送られて、イチローとの親密度が有る程度になると裏返るように仕向けられたのかな。 [一言] …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ