表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界がいずれ滅ぶことを、俺だけが知っている  作者: 灰島シゲル
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/351

準備完了



 

 サブ武器として拾ったオークの鉄剣は、インベントリに登録をし終えてから、使い潰していくことに決めた。

 オークとの出会い頭で、手にした鉄剣を投擲して先制攻撃をする。

 それからすぐに戦斧を構えて突撃して、戦闘を開始する。

 そうして、幾度となくオークとの戦闘を繰り返しながら、明は街を彷徨い歩く。


 喉が渇けば路地裏の自販機を壊してその中身を口にして、腹が減れば民家に侵入して残された食料を口にした。

 この街に出現したモンスターがオークという強敵だったのも影響していたのだろう。

 明が居た街に比べれば、この街の民家や店舗を襲った火事場泥棒の数が少ないように思えた。


「ふぅ……」


 明は、手にした戦斧で斬り捨てたオークを見つめて息を吐く。

 これで、ようやく半分。二十五匹目のオーク討伐だ。

 初めは実力が拮抗していたことで時間が掛かっていた討伐も、戦う毎に積み重なるレベルアップによって、徐々にその速度が上がり始めている。

 気が付けば折り返しとなったクエスト画面へと目を向けて、明は自分のステータス画面を呼び出した。



(……総合レベル、50か。このクエストを始める前は39だったから、あっという間に11もレベルが上がってるな。クエストの発生条件を考えれば、レベルそのものが上がれば他のモンスターとのクエスト自体が発生しにくくなるけど、このシナリオを終わらせるためにもこればかりは仕方ない)



 ため息を吐き出し、明は気持ちを切り替えた。

 それから、夜が明けた空を見上げて、スマホの画面で時間を確認した。

 時間帯的にはちょうど、侵入してきたウェアウルフによってモンスターの大移動が生じている頃だ。


「あまり、時間は掛けていられないか」


 軽部を含む自衛隊は、あの病院で籠城すると言っていた。

 だが、その籠城もウェアウルフ相手には意味をなさない。ウェアウルフが真っ先にあの病院へと向かうとは思わないが、ボスから逃げるモンスター達があの病院を襲う可能性もあるのだ。

 奈緒が死ねば道連れとなって死に戻る以上、あの街を長く離れて、こうしてクエストやレベリングに励むのはなかなかにリスクが高かった。



(……せめて、今回でこのクエストを終わらせないと)



 心で呟き、明はより一層、オーク討伐に力を入れる。

 だが、そうしながらも周囲の警戒は怠らない。いつ、この街のボスであるハイ・オークが現れるかも分からないのだ。

 死ねばこのクエストも全てやり直しだ。いや、それどころかクエストそのものがハイ・オークの討伐に切り替わる可能性だってある。

 ハイ・オークとの出会いはすなわち、頭の中で立てていた計画を今一度、始めからやり直すことに他ならなかった。




 そうして、見えないハイ・オークの影に神経を擦り減らしながら、オークを狩り続けることさらに数時間。何度かボスが周囲に現れた時と同様の気配を感じ、必死に逃げながらも、明はどうにかオークのクエストを終わらせた。


 ――チリン。




 ――――――――――――――――――


 D級クエスト:オークが進行中。


 討伐オーク数:50/50


 D級クエスト:オークの達成を確認しました。報酬が与えられます。

 クエスト達成報酬として、獲得ポイントが30付与されました。


 ――――――――――――――――――




「よし」


 画面を確認すると同時に、明はすぐさま自分のステータスを確認する。




 ――――――――――――――――――

 一条 明 25歳 男 Lv17(55)


 体力:82(+16Up)

 筋力:182(+16Up)

 耐久:151(+16Up)

 速度:166(+16Up)

 魔力:37(+16Up)

 幸運:56(+16Up)


 ポイント:47

 ――――――――――――――――――

 固有スキル

 ・黄泉帰り


 システム拡張スキル

 ・インベントリ

 ・シナリオ


 ――――――――――――――――――

 スキル

 ・身体強化Lv3

 ・解析Lv1

 ・魔力回路Lv1

 ・魔力回復Lv1

 ・自動再生Lv1

 ・疾走Lv1

 ・第六感Lv1

 ――――――――――――――――――

 ダメージボーナス

 ・ゴブリン種族 +3%

 ・狼種族 +10%

 ・植物系モンスター +3%

 ・獣系モンスター +5%

 ――――――――――――――――――




 明は、消費されていた魔力値が回復したことと、獲得したポイント数を確認する。

 どうやら、魔力値が回復しきるとステータス画面に残っていた括弧は外れるらしい。

 そんな小さな変化に驚きつつ、明は獲得したポイントから取得できるスキルの一覧へと目を向ける。

 画面に並ぶ数々のスキルとその効果を見ながら、明は一度悩むように声を上げた。


(ポイント15以上は、耐性と技術系のスキルが多いな。結構いろいろなスキルが取得できる状況だけど、そもそも、死に戻ればまた半日以上も身動きが取れなくなるのが現状では一番キツイ。……だったら、今の優先は時間のロスを出来るだけ失くすことだな)


 心で呟き、明は獲得したポイントを自動再生のスキルレベルアップに使うことに決めた。

 消費するポイントは30と多いが、死に戻った先で身動きが出来ない時間がより少なくなれば、それだけ無駄な時間を過ごすことが無くなるからだった。

 ポイントを消費して、無事にスキルのレベルアップをする。

 それから、残ったポイントへと目を向けて言葉を漏らした。



「残りのポイントは17か……。ステータスに割り振るよりも、ボス用に新しくスキルを取得しておいた方がいいか?」



 現状、今のステータスがあれば明の速度は、疾走を使用すればウェアウルフの速度を大きく上回る。

 その他のステータスは劣るものの、疾走込みで速度値100も離れていれば、そう簡単に攻撃が当たることもないだろう。


「問題は、決め手に欠けるってところか……」


 いくらミノタウロスの戦斧があるとはいえ、70以上も離れた明の筋力値とウェアウルフの耐久の差を埋めることは容易ではないだろう。

 確実にボスを討伐するためにも、さらにもう一つ、明は攻撃に活かせるスキルが欲しかった。



(今のスキルの中で、使えそうなものは……)



 ずらりと並ぶスキルを見据えて、明は唸りを上げる。

 そして、多くのポイントを消費する上位と思われるスキル群へと目を向けて、ふと一つの違和感に思い当たった。


(あれ? これって……)


 明はそっと、ポイント消費15で獲得出来るそのスキルの名前へと手を伸ばした。




 ――――――――――――――――――

 剛力Lv1

 ・アクティブスキル

 ・自身の魔力を消費し、一分間、自身の筋力を上昇させる。上昇する値は、消費後の自身の魔力ステータスの値×剛力のスキルレベル×10で固定される。

 ・現在、スキル使用に消費される魔力量は1です。

 ――――――――――――――――――




(……間違いない。ミノタウロスと戦う前に目にした時に、ポイント消費10のスキル欄に並んでいたものだ。結局、速度が足りなければ攻撃も当たらないって思って、あの時は疾走を取得したんだけど……。どうして、ポイント消費10のスキルが、ポイント消費15のスキルのところに?)


 何かの間違いかと、明はスキル詳細を消して再びスキル獲得の一覧へと目を向けるが、見間違いではない。

 それどころか、以前はポイント10の消費に並んでいた『鉄壁』という、剛力や疾走と同じく魔力を消費して、一分間、耐久を上昇させるスキルもポイント15で獲得出来るスキル群の中に並んでいる。



(――――まさか、魔力消費によってステータスに補正を掛けるスキルを取得すると、同系統のスキルを取得するには今まで以上のポイント消費が必要なのか?)



 可能性は十分にある。

 実際に、こうして剛力を取得するためのポイント消費は上がっているのだ。


(……でも、このスキルがあれば)


 ウェアウルフの耐久を破って、確実な一撃を与えることも可能になる。

 明は、ポイントを消費して剛力を取得した。

 そしてすぐに、明は画面を消すと駆け出した。

 この人生での最後の準備。格上たるウェアウルフに殺されることで、そのクエストを発生させるためだ。



(……俺の方の準備は、これで終わる。後は、奈緒さん次第だ)



 シナリオ(道連れ)を終わらせるためには、どうしても奈緒と共にボスに挑む必要がある。


 次に目覚めた時、事前に伝えていた通り奈緒には街に出てもらわなければならない。

 それがどんなに恐怖を伴うことでも。

 それ以外に、彼女の悪夢を終わらせる方法は存在していないのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 苦言ではなくて、応援なんですが 主人公に人類の存亡がかかってそうなんで、LVあげる前に、できうるかぎりの、モンスターに(LVが上の)出会い、倒されるを繰り返さないと、いずれ先細りになりそう、…
[一言] オーク、はじめの1体倒した時はレベル5UPだったのに、そのあと49体倒してレベル15UPはなんかしょっぱいな、、これが妥当なのかな?
[気になる点] 前から思っていたんですが、ステータスの上昇を表す括弧書きの中身が(+〜Up)で+とUpが重複しているのに違和感があります。 それと、自動再生のスキルレベルアップのシーンが、 『ポイント…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ