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この世界がいずれ滅ぶことを、俺だけが知っている  作者: 灰島シゲル
二章

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70/351

VSブラックウルフ

 


 その中で、明は銃剣を手に大立ち回りをする一人の男を見つける。


 ――軽部だ。


 軽部は、銃剣を構えて地面を蹴り、一気に前へと飛び出した。

 その軽部に向けて、ブラックウルフは迎撃するようにその爪を振りかざすが、軽部はそれを手に持った銃剣で反射的にいなすと、すかさずブラックウルフの頭部へと膝蹴りを与えた。



「ガァウッ」



 ブラックウルフの身体がぐらりと揺れる。


 ――だが、それだけではブラックウルフは倒れない。


 それを軽部も分かっているのか、すぐに体勢を整えると次の攻撃へと移った。

 すぐ傍に居た別のブラックウルフが、軽部へと狙いを定めたのはその時だ。

 涎を垂らしながら軽部の背中へと狙いを定めると、獰猛なその牙を突き立てるようにして顎を開いた。


「ッ!!」


 それを見た明の身体は、反射的に動いていた。

 リノリウムの床を蹴って、弾丸のように飛び出した明は、三十メートルはあろうかというその距離を飛ぶように一気に詰める。

 最終防衛ラインであるバリケードも一気に飛び越えると、軽部へと牙を突き刺そうとしたブラックウルフに向けて、組み合わせた両手を頭上から全力で振り下ろした。


 ――ゴッ!


 硬い頭蓋を砕く感触と、その中身を潰したという確かな感覚。


 地面に叩きつけられたブラックウルフは、ひしゃげた頭からどす黒い血とその中身を溢し、ビクビクと痙攣し始めた。

 それを見た明は、近くにいたブラックウルフへ飛び掛かる。今度は振り上げた踵を落として、その身体を逆への字にへし折った。

 そうして、手の届く範囲のブラックウルフを全て片付けていると、軽部はようやく体勢を立て直したのか、明へと向けて声を掛けてきた。



「一条さんッ! 助かりました!! しかし、もう動いても平気なんですか!?」

「もう大丈夫ですッ! それよりも、後ろに下がってください! こいつらは、軽部さん達が敵う相手じゃないッ!!」

「ッ、しかし!!」

「早くッ!!」



 鬼気迫る表情で叫ぶ明と、周囲の状況を素早く見比べて、軽部は自分たちが足手まといになるとすぐに察したのだろう。

 悔しさでその唇を噛みしめながらも、的確に状況を把握した軽部は、部下と周囲で戦う人々に撤退の命令を出す。

 明は、自衛隊やこの場に駆け付けた人々が下がることが出来るよう、より一層の気合を入れると、周囲のブラックウルフが自分自身に注意を向けるように声を張り上げる。



「さぁッ!! お前らの相手は俺だ!!」



 エントランスロビーに響き渡るその声に、周囲のブラックウルフが一斉に唸り声を上げた。

 明は、その姿にニヤリとした笑みを浮かべると、腰を落として拳を構えた。


「――――――」


 息を止めて、狙いを定める。

 そして、両足に力を溜めると、一気に前へと駆け出した。


「フッ!」


 地面を蹴った明は瞬く間にブラックウルフの元へと迫り、腰を捻ってローキックを繰り出した。

 ブラックウルフが避けようと身体を動かすが、風を切り迫るその蹴りの方が圧倒的に速い。



「ガァ……ッ!?」



 明の脚がブラックウルフの身体を綺麗に捉え、骨を砕く音を周囲に響かせた。

 そして吹き飛ばされたブラックウルフは、地面を跳ねながら転がると二度と動かなくなる。


(次ッ!)


 素早く視線を動かし、明はまた手近なブラックウルフへと飛び掛かる。

 そうして、周囲のブラックウルフを次々と屍へと変えていた時だ。


 ――チリン。




 ――――――――――――――――――


 条件を満たしました。


 シルバートロフィー:狼殺し を獲得しました。

 シルバートロフィー:狼殺し を獲得したことで、以下の特典が与えられます。


 ・狼種族からの敵対心+40

 ・狼種族へのダメージボーナス+7%


 ――――――――――――――――――




 軽やかな音を響かせて出現したその画面に、明は目を見開いた。


(――っ!? これまでの繰り返し分と、今回の討伐で、ブロンズトロフィー以上の獲得条件を満たしたのか!? ダメージボーナスは嬉しいけどッ、今はタイミングが悪いッ!!)


 その、トロフィーを獲得した影響だろう。

 ブラックウルフたちは、より一層その敵意を剥き出しにすると、瞬く間に明の周りを取り囲み始めた。



「くっ!」



 瞬間、明の全身の皮膚が一気に粟立つ。

 胸の内側に意味もなく広がる嫌な予感に、明は両目を見開いた。



「ッ!!」



 反射的に、明は握り締めた拳を振るった。

 身に迫る牙を避けて、振るわれる爪を躱し、反撃として蹴りや拳を叩き込む。

 そうして、明は着実にエントランスロビーに入り込んだブラックウルフを減らしていくが、いかんせんその数が多い。

 襲い来る全ての攻撃を捌き切ることが出来ず、もはやこれまでかと明が手痛い一撃を受ける覚悟をした、その時だった。



「――――ショックアロー!」



 戦場に響くようなその言葉と共に、明の目の前にいたブラックウルフへと光りの矢が突き刺さった。


 ――パァンッ!


 瞬間、矢は衝撃となってブラックウルフを襲う。

 襲う衝撃に耐え切れなかったのか、ブラックウルフが悲鳴を上げて身体を大きく仰け反らせたその姿に、明は状況を確認することなく瞬時に動き出していた。



「ッ、ぅらァ!」



 腰を捻り、全力のハイキック。

 蹴られたブラックウルフは周囲の仲間を巻き込みながら吹き飛び、ブラックウルフたちの包囲網に一瞬の穴が出来た。

 明は、転がり出るようにして崩れた包囲網の穴から飛び出す。すかさず距離をとって体勢を整え終えると、自らの窮地を救ってくれた人物の方へと目を向けた。



「奈緒さんッ!」



 そこには、全速力で駆け付けたのだろう。

 肩で息を切らした奈緒が、どこから手に入れてきたのか、その手に拳銃を構えて戦場を睨み付けていた。



「一条ッ、平気か!?」

「ええ、助かりました!! それよりも、その銃は――――」

「初級魔法を使うのに、必要なものがあると言っていただろ!! 私の場合、コレなんだよ!!」


 叫び、奈緒はまた狙いを定めるようにブラックウルフへとその銃口を向けると、再びその言葉を発した。



「ショックアロー!」



 瞬間、銃口の先端に小さな光が集まり、飛び出した。

 飛び出した光球は光の矢へとその姿を変えて、明が蹴り飛ばしたブラックウルフへと突き刺さる。


「ショックアロー!!」


 奈緒は続けざまに魔法を発動させる。

 次々と銃口の先端から飛び出す光の矢は、休む間も与えることなくブラックウルフへと襲い掛かった。

 矢の衝撃でブラックウルフは幾度も身体をふらつかせて、やがてその衝撃はブラックウルフの耐久を破ったのか、皮膚を裂き、骨を砕くと、周囲にどす黒い血を飛ばした。



「ぅぅぅううううッッ!!」



 床に血を溢しながら、ブラックウルフは明への敵意を振り切るようにして、奈緒の方へと顔を向けた。


 ――マズいッ!


 それを見た明が全身に力を入れて、足を踏み出そうとしたその時。

 明が飛び出すよりも早く、奈緒は最後の言葉を吐き出し終えていた。



「ショックアロー!!!!」



 飛び出した魔法の矢は、ブラックウルフの傷口へと突き刺さった。

 瞬間、爆発するように弾けた衝撃がブラックウルフを襲い、その体液を周囲へと飛び散らせる。

 地面に倒れたブラックウルフはそれでもなお、藻掻き苦しんでいたが、すぐにその動きを止めた。体力が尽きたのだ。

 明は、その様子を見るとニヤリとした笑みを浮かべて、奈緒へと声を張り上げた。



「ちょうどいい! 奈緒さんッ、ここでいくつかレベルを上げましょう!! 俺がこいつらを弱らせますから、奈緒さんはトドメを刺してください!」

「ああ、分かった!!」



 拳銃を構えた奈緒は、明の言葉にしかと返事をする。

 そうして、明と奈緒が一丸となってブラックウルフを相手にし始めて十数分。

 その戦いは、明が到着するまでに犠牲となった、五人の自衛官と二人の一般人を除いて、無事、明たちの勝利で幕を下ろしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めての共同作業!
[良い点] 更新乙です。 [気になる点] ・経験値って倒した人だけに入るのか?それともダメージ入れた人全員に入るのか?が気になります。(前者の場合ラストアタックだけ掻っ攫う奴等が出てきそう) [一言]…
[一言] 奈緒さんが拳銃使って良いのでしょうか??? これから明らかになるんですかね。
2021/10/11 21:47 退会済み
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