ポイントの使い方②
(トロフィーで、魔力値が伸びるものを獲得すれば楽なんだが)
そう考えながらも、明は魔力にポイントを一つ消費する。
(……ん?)
そうして、ふと切り替わったステータス画面に違和感を覚えた。
(魔力値が三つ伸びている……?)
消費したポイントは一つだったが、上昇した数字は三つ。どうやら、ポイントの消費で伸びるステータスの数値は、レベルアップの時よりも多いようだ。
(……なるほど。スキルのためにポイントを溜めるよりも、自分の伸ばしたいステータスにポイントを割り振った方が、瞬間的な火力は出せるってことか)
長期的に見ればスキルに割り当てた方が良さそうだが、スキルやレベルアップによるステータスの上昇値は決まっている。そのため、どうしてもステータスは特定の項目が伸びてしまう傾向があるが、こうして獲得したポイントをステータスに変えていくことで、自分好みのステータスへと変えていくことが出来る、ということだろう。
(生命力を高めたければ体力の項目に、モンスターの耐久を破る力が欲しければ筋力に、モンスターの一撃を受けても丈夫な身体が欲しければ耐久に――――と、そんな感じで、自分自身を自分好みにビルドしていく。このポイントは、そんな要素もあったんだな)
これまでの人生では、スキルによる恩恵が大きかっただけにポイントをスキル用だと割り切っていた。
だが、ここからは状況に応じてポイントをステータスに割り振ってもいいのかもしれない。
そんなことを明は考えながら、画面に残された最後のポイント、1の数字を見つめる。
(ひとまず、残ったポイントも、魔力に使うか)
明はそう結論を出すと、さらにポイントを一つ消費して魔力値に割り振った。
そうして出来上がった自分のステータス画面を見つめて、明は納得するように一つ頷いた。
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一条 明 25歳 男 Lv9(38)
体力:65
筋力:165
耐久:134
速度:149
魔力:19【20】(+6Up)
幸運:39
ポイント:0
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固有スキル
・黄泉帰り
システム拡張スキル
・インベントリ
・シナリオ
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スキル
・身体強化Lv3
・解析Lv1
・魔力回路Lv1
・魔力回復Lv1
・自動再生Lv1
・疾走Lv1
・第六感Lv1
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ダメージボーナス
・ゴブリン種族 +3%
・狼種族 +3%
・植物系モンスター +3%
・獣系モンスター +5%
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(大量のポイントで、だいぶ強化出来たな。これなら、そこらのモンスター相手には負けないだろ)
心で呟き、明はステータス画面を手で振り消した。
それから、明はぼんやりと天井を見上げて、自動再生のスキルが身体を癒していくのに身を任せた。
そうしていると、ふとした疑問が浮かぶ。
(……そう言えば、俺が目覚める前も、奈緒さんはモンスターと戦ってたんだよな? 今、どのくらいのレベルなんだろ)
ちらりと、明は寝息を立てる奈緒を見つめた。
モンスター相手ならば、『解析』というスキルを使えば相手のステータスを見ることが出来た。
だが、人間相手ならばどうだ?
はたして、モンスターと同じ様に見ることが出来るのか?
(一応、解析のスキル効果は生物なら有効だって書いてあったけど……。試してみるか)
明は、ゆっくりとその言葉を口にする。
「解析」
――瞬間、明の前にはその画面が開かれた。
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七瀬 奈緒 27歳 女 Lv16
体力:18
筋力:29
耐久:27
速度:28
魔力:9
幸運:18
ポイント:0
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個体情報:レベル不足のため表示出来ません
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所持スキル:レベル不足のため表示出来ません
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(人が相手でも、出来るんだな)
表示された画面を見て、明は心の中で呟いた。
それから、明はその画面を見つめて思考を巡らせる。
(レベル16って、思ったよりも高いな。ああ、いやそうか。今はもう、モンスターが強化された後か。ゴブリンのレベルも強化前と比べれば上がってる。仮に強化後のゴブリンを相手にしてれば、二日ぐらいあればそれぐらいになるか? 取得しているスキルは分からないけど、やたらと伸びてる筋力、耐久、速度……。そして、表示されてる魔力ステータスってところを見るに、奈緒さんが取得したスキルは、『身体強化』と『魔力回路』なのは間違いない)
魔力回路の取得が早ければ早いほど、魔力値の数値はレベルに応じて高くなる。
ネットが使えていた時に、奈緒がその情報を手に入れたのかどうかは分からないが、こうして早い段階で魔力回路を取得しているのは間違いないスキル選択だと言えるだろう。
(でも、それだけだと残りのポイントと釣り合わないんだよな……。なんのスキルを取得したんだ?)
レベルアップで得たポイントと、それら二つを取得する際に消費したポイントを計算すると、奈緒が取得しているスキルは、ポイントを7つ消費して取得できるスキルのどれかだろう。
(俺と同じ、自動再生……あたりかな)
死に戻ることも出来ない奈緒からすれば、絶対に死にたくないと思うのは確かなことだ。
ならば、自身の身体の傷を癒す、自動再生あたりのスキルを取得していてもおかしくはない。
(まあ、本人が起きたら聞いてみるか)
明はそう考えると、奈緒のステータス画面を手で振って消した。
それから、明は大きな欠伸をすると微睡みに重たくなる瞼を何度か動かす。
(身体が回復しきるまで、することもないし……。少しだけ、寝るか)
心で呟き、明は瞼を下ろした。
モンスターが現れて世界が激変しているというのに、数日前とまったく変わらない穏やかな午後の日差しが部屋には降り注ぎ、そよ風がカーテンを小さく揺らした。
満身創痍となったことで体力そのものが低下していることも影響しているのだろうか。
温かな空気と爽やかな風に当てられて、眠気はすぐにやってくる。
数分もすると、穏やかな寝息を立てる二つの呼吸が、ゆっくりとその部屋の中を満たしていた。




