魔力と肉体の回復
(ひとまず、シナリオのことは一旦置いておいて……。次に気になるのは、魔力の項目に追加された括弧だな。どうやら、括弧の中の数字と、外の数字が違うみたいだけど……。この括弧、ミノタウロスと戦う前は無かったよな? ミノタウロス戦で何かしらの条件を満たしたから、この画面に出てきたってことか?)
と、そう考えた時だった。
ふと、明は、その画面の違和感に気が付いた。
(いや、ちょっと待てよ……。そもそも、ミノタウロスを倒して、俺のレベルは8つ上がってる。ってことは、俺の魔力の項目は括弧内の数字が正しいはず――――)
そこまで考えて、明は一つの事実に思い当たった。
(――――まさか)
確証はない。
確証はないが、考えられる答えは一つしかなかった。
(疾走を使ったことが原因、か?)
――疾走。それは、明がミノタウロスに挑むにあたって取得したスキルだった。
魔力を1つ消費し発動するそのスキルは、消費後の魔力値に応じて自身の速度を上昇させる。
……だが、もしも。疾走を発動させた際に消費した魔力が、あの戦いから消費されたまま、元に戻っていなかったとしたら?
(疾走を使えば使うほど、その魔力値はどんどん減っていき、スキル発動による速度の上昇の効果は回数を追うごとに弱体化していく……。さらに言えば、魔力値そのものが、使用制限の回数にもなる……ということか)
それらのことを踏まえると、疾走スキルの最大の効果を発揮するには、何かしらの手段で魔力を回復しなければならないということになる。
(回復か……。確か、『魔力回復』って名前のスキルが一覧の中にあったな)
明は画面を操作すると、現在のポイントで取得できるスキルの一覧を表示させた。
数多くのスキルが表示されるその一覧の中から、目当てのスキルを見つけるとその詳細を開いた。
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魔力回復Lv1
・パッシブスキル
・時間経過に応じて、損失した魔力を回復する。魔力の回復に掛かる時間は、スキルレベルに応じて変動する。
魔力回復Lv1を取得しますか? Y/N
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(これだ)
明は、その詳細に目を通して心の中で呟いた。
(時間経過で回復か……。スキルレベルに応じて回復時間が変わるってことだよな? Lv1だと、どのくらいの時間で回復するんだ?)
明は、考え込むように唸り声を上げると、画面を見つめた。
だが、考えたところで分かるはずがない。
ネットが生きてさえいれば、これらのスキルに関する情報も、もしかすれば分かったのかもしれないが、今となってはそれを考えることすらも無駄だろう。
(どちらにせよ、魔力は回復させなきゃいけない……。となると、今のうちに取得しておくか)
心に決めて、明は魔力回復の文字へと手を伸ばした。
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スキル:魔力回復Lv1を取得しました。
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表示されるその画面を確認して、明は手を払って画面を消した。
それから、スマホの画面を開いて現在の時刻を確認する。
魔力回復Lv1が、どれほどの時間で魔力を回復してくれるのかを調べるためだった。
(ひとまず、魔力のことに関してはこれで解決……と。あとは、最初の予定通り、あのスキルも獲得しよう)
明は心で呟くと、再びスキル一覧を開いた。
取得できるスキルの中から、目当てのスキルを見つけて選択する。
(ひとまず、これで……)
取得を問いかける文字に、明は迷わず『Y』を押した。
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スキル:自動再生Lv1を取得しました。
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瞬間、そのスキルを獲得した効果だろうか。
全身に重りを付けたように感じていた身体が、一気に軽くなったのを感じた。
(……うまく働いてるみたいだ)
とはいっても、スキルレベル1でどのくらいの回復力があるのか分からない。
ひとまずは全身が癒えるまで、新しく増えた項目や残りのポイントの使い方を考えようと、明は画面へと目を向ける。
(――っと、その前に。一応、魔力回復と自動再生のスキルレベルアップに必要なポイントだけ確認しておくか)
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魔力回復Lv1
・パッシブスキル
・時間経過に応じて、損失した魔力を回復する。魔力の回復に掛かる時間は、スキルレベルに応じて変動する。
ポイントを20消費して、スキルのレベルを上げますか? Y/N
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自動再生Lv1
・パッシブスキル
・時間経過に応じて、肉体の損傷を癒し元の状態へと再生させる。再生速度はスキルレベルに依存する。
ポイントを30消費して、スキルのレベルを上げますか? Y/N
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