スキルの影響
「んー…………。よし、決めた」
声に出して、明は身体強化の説明文にある、『Y』の文字に触れた。
もしこれで、強化される値が仮に少なくても、スキルを育てていけば化けるかもしれないと考えたからだ。
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スキル:身体強化Lv1を取得しました。
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「無事に取得出来たみたいだな」
切り替わる画面に向けて明は呟く。
それから、念のために確認しておこうと、明は自らのステータス画面を開いた。
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一条 明 25歳 男 Lv2(4)
体力:6
筋力:21(+10Up)
耐久:20(+10Up)
速度:15(+10Up)
幸運:5
獲得ポイント:0
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固有スキル
・黄泉帰り
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スキル
・身体強化Lv1
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「は?」
思わず、表示されたステータス項目のその内容に、明の口から声が漏れた。
「え、ちょ、はぁッ!? Lv1でそんなに伸びるの!?」
Lv1で身体能力関係のステータス値が10の上昇。全部を合わせれば、ステータス総合数値は30の上昇だ。
消費したポイントが3つということを考えると、破格とも言える性能だった。
(やった……。やった!! これなら、単独で行動してるゴブリンをわざわざ探さなくてもいいかもしれない!!)
すなわちそれは、今まで以上にレベリングがしやすくなるということ。
さらに言えば、次々と現れるモンスターにいち早く対応できるということに他ならない。
(っ、そうだ、レベル! スキルレベル!! どうやって上げるんだ!?)
興奮が冷めやらぬまま、明は手あたり次第に画面の様々なところに触れて、表示されていく画面の中からスキルレベルに関する場所を探していく。
(獲得ポイントのところは……ないか。俺のレベルのところは……反応しないな。あ、そうだ。スキルの詳細画面はどうだ?)
そう思って、明がスキル欄にある身体強化の文字に触れる。
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身体強化Lv1
・パッシブスキル
・筋力、耐久、速度が強化される。強化の値はレベルに依存する。
獲得ポイントを20消費して、スキルのレベルを上げますか? Y/N
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「お、あった!」
ようやく見つけたその文字に、明は喜んだ。
しかし、その喜びもすぐに萎れてしまう。
(…………ポイント、20? なんだそれ……。いくら何でも高すぎだろ)
一回のレベルアップで得られるポイントはたった1つだ。
それはつまり、単純計算でレベル24になるまでは、身体強化のスキルレベルを上げることが出来ないことを示していた。
(簡単にスキルレベルが上げられるなら、この辺りのモンスターを一掃できるかと思ったけど――――。まあ、そう簡単にはいかないか)
心の中で呟き、明は手で軽く振って画面を消した。
それから、身体の調子を確かめるように屈伸をするとリュックを担ぎ直す。
(身体が軽い。まるで、自分の身体じゃないみたいだ)
これまで感じていた背中の重みも、今では何の苦にも感じないほどだ。
今ならば、ゴブリンを複数相手にしても問題ないかもしれない。
そう考えて、明は口元にニヤリとした笑みを浮かべた。
「さて、と」
気を取り直すように言って、明はゴブリンの死体から包丁を引き抜く。
すると、その刃先が折れているのが目に入って、思わず眉を寄せた。
「たった一回でこれか……。この調子だと、次の戦闘で使い物にならなくなるかもな」
ふと、明はそこで思いついた。
(そうだ、あの棍棒。コイツが持ってた棍棒はどこにいった?)
きょろきょろと見渡し、数メートルほど先の地面に転がっているのを見つける。
明はそれを拾うと、すぐに取り出せるよう柄が外に出るように位置を調整しながら棍棒の先端だけをリュックの中に突っ込んで、片手に包丁を持って立ち上がった。
「――それじゃあ、改めて。行くか、ゴブリン狩り!」
スキルを手に入れた今、次の目的はクエストの達成だ。
その前にまず、身体強化によってどれほど身体が変わったのかを確かめることにしよう。




