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成長の糧①

 


 ――――――――――――――――――


 レベルアップしました。

 レベルアップしました。

 レベルアップしました。

 ……………………

 …………

 ……



 ポイントを9獲得しました。

 消費されていない獲得ポイントがあります。

 獲得ポイントを振り分けてください。


 ――――――――――――――――――


 C級クエスト:ハルピュイアが進行中。

 討伐ハルピュイア数:1/1


 C級クエスト:ハルピュイアの達成を確認しました。報酬が与えられます。

 クエスト達成報酬として、ポイントが50付与されました。


 ――――――――――――――――――


 ボスモンスターの討伐が確認されました。

 世界反転の進行度が減少します。


 ――――――――――――――――――





「ふー……」


 眼前に現れる画面を見つめて、明は溜め込んでいた息を一気に吐き出した。

 予想していた通り、『剛力』と『疾走』を使用した明に対して、ハルピュイアは手も足も出なかった。

 おそらく、息絶えるその瞬間まで何が起きたのかも分かっていなかったに違いない。

 それほどまでに両者の力はかけ離れていて、圧倒的だった。


(……つっても、こんなのは茶番だ。この二つのスキルが無ければ、今の俺はコイツに勝つことすら出来ない)


 明は、身体を両断されて息絶えたハルピュイアの死体へと目を向けて、そんなことを考える。

 それからすぐに、気を取り直すように首を振るとその視線を外し、呟いた。


「ステータス」




 ――――――――――――――――――

 一条 明 25歳 男 Lv10(77)


 体力:104(+9Up)

 筋力:207(+9Up)

 耐久:173(+9Up)

 速度:186(+9Up)

 魔力:91【100】(+2Up)

 幸運:76(+9Up)


 ポイント:61

 ――――――――――――――――――

 固有スキル

 ・黄泉帰り


 システム拡張スキル

 ・インベントリ

 ・シナリオ

 ――――――――――――――――――

 スキル

 ・身体強化Lv3

 ・解析Lv3(MAX)

 ・鑑定Lv3(MAX)

 ・魔力回路Lv1

 ・魔力回復Lv2

 ・自動再生Lv2

 ・剛力Lv1

 ・疾走Lv1

 ・第六感Lv1

 ――――――――――――――――――

 ダメージボーナス

 ・ゴブリン種族 +3%

 ・狼種族 +10%

 ・植物系モンスター +3%

 ・虫系モンスター +3%

 ・獣系モンスター +5%

 ――――――――――――――――――




 レベルアップにより、上昇したステータス。

 本来であれば、レベルアップの数値分だけ上昇するはずのその数値が、魔力だけは2つしか上昇していない。

 その原因に心あたりのある明は、思わず小さなため息を吐き出した。


(……なるほど。魔力回路Lv1のままだと、魔力値は100で一度打ち止めだったか。だから、ポイントではそれ以上上げることが出来なかったんだな)


 ポイント消費で上がるステータス数値は3つだ。

 魔力回路Lv1で許容できる魔力量の上限ギリギリだったからこそ、あの時、ポイントの割り振りが出来なくなっていたのだと、明はその画面を見て再確認した。


(レベルアップ分のステータス上昇が無駄になってしまったが、仕方ない。今あるポイントが……61か。ちょうど、『身体強化』と『魔力回路』のスキルレベルが上げられるぐらいだな)


 魔力量の上限をあげる方法はもう既に奈緒から聞いている。

 明は迷いなく指を動かすと、ポイントを消費して二つのスキルレベルをあげた。




 ――――――――――――――――――

 一条 明 25歳 男 Lv10(77)


 体力:104

 筋力:287(+80Up)

 耐久:253(+80Up)

 速度:266(+80Up)

 魔力:91【100】

 幸運:76


 ポイント:1

 ――――――――――――――――――

 スキル

 ・身体強化Lv4

 ・解析Lv3(MAX)

 ・鑑定Lv3(MAX)

 ・魔力回路Lv2

 ・魔力回復Lv2

 ・自動再生Lv2

 ・剛力Lv1

 ・疾走Lv1

 ・第六感Lv1

 ――――――――――――――――――




「――――っ、……はは、マジかよ」


 思わず、明は笑った。

 いや笑うことしか出来なかった。

 身体強化のスキルレベルを上げたことで、筋力、耐久、速度、それぞれの数値が一気に80も上昇していたからだ。

 ポイント40という重たい消費に対して、十分――いや十二分ともいえるその見返りに、明はその口元を緩める。


「これなら」


 呟き、明は拳を固める。

 『剛力』や『疾走』を使わずにリザードマンやハルピュイアへと挑むには全体的にまだ物足りない。

 けれど、これだけのステータスがあればきっと、三匹の中でも速度がとりわけ遅いハイオークならば十分、相手にすることが出来るだろう。






 結論から言えば、身体強化を取得したことによってハイオークとの戦いは互角になった。


 ……いや、互角に迫る戦いが『剛力』や『疾走』無しでも可能になった、と言うべきなのかもしれない。

 とはいえ、相手は一つの街――ダンジョンを支配するモンスターだ。

 ステータスが互角になったからといって、その戦いが楽になるわけでもない。

 一瞬の気後れが死を招き、刹那の判断ミスが死に繋がる。常に首筋には死神の鎌がひたりと押し当てられていて、明が一つミスを犯す度に、そいつは遠慮なくその鎌を振るって明の首を落としていた。


 通算『黄泉帰り』回数、四十二度目。


 身体強化のスキルレベルが上がり、ハイオークへと挑み始めて五回目。

 初めは攻撃を受けるのもやっとだったその戦いも、繰り返し行うことでようやく、明はハイオークを相手に五分以上の戦闘が続けられるようになっていた。



「――くッ!」



 空気を切り裂き迫る鉄剣を、明はタイミングを合わせて斧を振るい、受け流す。

 激しい火花が散って腕が痺れるが、それに構っている暇はない。

 体勢を整えなければすぐに、()()()()()を発動させたハイオークが襲い掛かってくることが分かっていたからだ。


「ガァァアアアアアアアアアアアアア!!!!」


(――――きた!)


 空気を震わせるハイオークの叫びに、明はすぐさま斧を構えた。

 直後、さらに勢いを増した攻撃の嵐が明を襲った。


 ――スキル『狂戦士』。


 それは、ハイオークが持つレベル表記のないスキルの一つで、己の理性を引き換えに少しずつ、スキル所持者の筋力値を増加させるスキルだった。

 おそらく、発動すれば最後、目にした相手が死に絶えるまで永続的に続くスキルなのだろう。

 怒りに狂うハイオークの筋力値は今や500台に突入している。それと引き換えに失くした理性は、ハイオークの攻撃をより直線的なものへと変えている。


『狂戦士』を発動させたハイオークの一撃は重く、強く、どこまでも単純だ。


 だからこそ、その攻撃が己の技術を磨く練習になると、一条明は必死に斧を振るい、受け流していく。



 何度も、何度も、何度も。

 繰り返し行うその行為が、身体に、己の魂に染みつくまで何度でも。




 ――そして、四十七度目。




「らァッ!!」



 タイミングを合わせて振るった斧の刃が初めて、ハイオークの鉄剣を完璧に受け流して、その体勢を完全に崩した。


「――――ッ!?」


 ハイオークの顔に驚愕の表情が浮かぶ。

 それは、この戦いで初めて目にするハイオークの感情だった。


「…………」


 その表情へと目を向けて、明は決める。

 ここまで来れば十分だ。

 これ以上はもう、この戦いから学ぶべきものが何もない。

 だから――――


「――……すまん」


 明は呟く。

 自分自身を成長させてくれた、ある意味で師とも呼べるそのモンスターに向けて。



「『剛力』」



 この戦いを終わらせて、次へと進むその言葉をようやく口にする。



「ふッ!」


 と息を吐いて、明は隙が生まれたハイオークへと斧を振るった。

 瞬時に爆発的に上昇したその筋力は、吸い込まれるようにハイオークの肩口へと吸い込まれて、その巨躯を袈裟懸けに斬り裂き、二つに分けた。


 ――チリン、と。


 軽やかな音があたりに響くのと、ハイオークの身体が地面に落ちるのはほぼ同時。




 ――――――――――――――――――


 レベルアップしました。

 レベルアップしました。

 レベルアップしました。

 ……………………

 …………

 ……



 ポイントを7獲得しました。

 消費されていない獲得ポイントがあります。

 獲得ポイントを振り分けてください。


 ――――――――――――――――――


 C級クエスト:ハイオークが進行中。

 討伐ハイオーク数:1/1


 C級クエスト:ハイオークの達成を確認しました。報酬が与えられます。

 クエスト達成報酬として、ポイントが50付与されました。


 ――――――――――――――――――


 ボスモンスターの討伐が確認されました。

 世界反転の進行度が減少します。


 ――――――――――――――――――




 眼前に表示されるその画面へ目を向けて、明は手にした斧を振るって刃についた血を払った。


「ありがとう。お前のおかげで、俺に足りないものが身に付いた」


 明はハイオークの死体に向けて呟く。

 その声に、言葉を返すものは誰もいない。

 けれど明は、いつまでもずっと、まるでその言葉の返事を待ち続けているかのようにその場に佇み続けていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ステータスに頼らない強さを身につけ始めた点 [気になる点] ボス倒したけど反転率の進行抑制されてるのかこれ
[気になる点] 世界反転進行度の減少アナウンスがないのは、省略されてるだけなのか何か条件があるのか気になりますね
[気になる点] 柏葉さんの武器・防具製作スキルで作った武器防具はセーブしてなかったんですか? 主人公本人が使うだけに限らず、繰り返しの最初の柏葉さんや他の人に渡せば柏葉さんのレベリング効率は上がるし、…
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