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イシュン視点です。



 急におなかに感じる重さが増える。寝たかな、と思うとすー、すー、という穏やかな寝息が聞こえてきた。よかった、寝付いてくれたようだ。


 最近体調を崩しがちなアランが心配だった。そこで空いた時間を使って子ども部屋にいるというアランの様子を見に行くことにしたのだ。部屋に入った瞬間、目に入ったのは呆然とアランを見るマリー、そしてアベル。ただその2人の様子に疑問を抱く前にすぐにアランの様子がおかしいことに気が付いた。真っ青な顔ではっ、はっと明らかにおかしい呼吸を繰り返しているのだ。

 今まで体調を崩したのは何度も見てきたが、こんなアランは見たことがない。戸惑うよりも先に、とにかくアランを落ち着かせないと、とすぐにアランを抱え込んだ。


 心臓の音を聞かせるように胸に耳を当ててあげる。そのままゆっくりと吸ってと吐いてを繰り返していると、だんだんと呼吸が落ち着いてきたのが分かった。


 そのままマリーのことも抱きしめてあげて落ち着かせると、その場にいたアベルに事情を聴くことにした。


「それが、マリー様が『始まりの魔女』という絵本をアラン様に読み聞かせて差し上げていたのです。

 そうしましたら、冒頭の部分で急に……」


 絵本を読んでいて? 確かにアランにこの絵本は少し早かったかもしれない。いずれは絵本どころか、より詳しい本を読まなくてはいけないにしても、だ。でも、そんなに取り乱すほどの内容はなかったはずだ。というか、泣き叫ぶ、なら理解できるがこの様子は明らかにおかしい。


 ふと視線を感じて下を見ると、こちらの様子をうかがっていたアランと目がある。じっと上目づかいで見つめるアラン、めちゃくちゃかわいい。じゃなくて! きっと考え込んでいたから不安になってしまったんだろう。安心させることを意識して、にこりと笑みをつくった。


「もう大丈夫かな」


 一度フェルシア様やナルヘーテ様に報告をしに行った方がいいかと思ってそう声をかけると、アランはいかないでとばかりに抱きついてきた。その背中はかすかにふるえている? 何がそんなにアランを怖がらせているんだろうか。


「何も怖いことはないよ。

 大丈夫、大丈夫」


 ここにはアランを傷つけるものも、怖がらせるものも何もないんだよ。そうわかってほしくて口に出しながらも、ゆっくりとアランをなでてあげる。すると少しうとうととしだした。


 眠ってしまってもいいんだよ、と声をかけると素直に寝てくれたアランを見てほっとする。よかった、安心してくれたと。気が付くとマリーも寝てしまっていた。2人とも、やっぱりとてもかわいいな。


 兄さま、と呼んで素直にしたってくれるこの子たちは本当にかわいい。いっそ本当の弟妹だったらな、なんて考えてしまうくらいに。まだはとこという関係性だからそう呼んでくれるけれど。


「ありがとうございます、イシュン様。

 あとは私共がお部屋にお連れいたします」


「うん、頼んだよ。

 目が覚めて何かあったらすぐに呼んでくれ」


 それぞれだっこされて部屋を出ていく2人を見送って、僕は辺境伯の部屋へと向かうことにした。



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