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その本にはつらつらと、『魔法』と呼ばれるものについて様々なことが書いてあった。どうして、これを今見せようと思ったのか。きっと僕が外に、出るタイミングだからなのだろう。そっと、いつもは眼帯をしている目に触れてみる。どうしてかたくなにこの目を隠そうとしているのか、まだあまりわからないけれどきっとこれが関係しているのだろう。
他大陸が探しているという、この組み合わせ。どうして探しているのかはわからないけれど、まあ厄介なことには巻き込まれない方が一番だもんね。
それにしても、これを読んでいる限りではあるけれど、今伝わっている魔法は随分と限られたものなんだね。もっと生活に則したものがあったはずだけれど、きっとルベーナは覚えていなかったのだろう。でもそうか、今は魔法と呼ばれているのか。
「読み終わったの?」
「全部ではないけれど、大方は」
さすがにこれを一気に全部読む気はちょっとしないな。そう答えると、なぜかイシュン兄上は心配そうにこちらをのぞきこんできた。
「大丈夫か?」
それはどういう意味だろう? もう熱は下がっているはずだし、特に何かをした覚えもないけれど……。きょとんとしていると、それならいいんだ、と結局はっきりとは言ってくれなかった。
「前に、眼帯を渡したとき。
詳しい理由は後で話す、って言ったよね」
うん、確かにそういっていた、とうなずく。イシュン兄上はベッドに腰を掛けると僕の顔に触れてきた。
「一つは、ツーラルク皇国の存在だ。
かの国の者らは強欲だからな。
オッドアイはもともと皇国のものだった、というバカげた主張を今もしている。
ここはあまりにもツーラルク皇国に近すぎるからね、念には念を、という意味もある。
そして、スラント大陸、ミドレリュ大陸の存在。
彼らはオッドアイの子自体にはあまり反応をしないが、なぜか赤と青の宝石眼を持つものだけを探している。
僕らにはその理由がわからなくてね、ひとまず隠しておくほうが安全だと判断したんだ。
ごめんね、アラン。
僕らにもっと君を守る自信があったなら、君はその目を隠す必要はなかったのに……」
やっぱりそういう理由なんだね。まあ、ツーラルク皇国のことは全く知らなかったけれど。僕が仕えた陛下はまだ心優しい方だったけれど、たしかにあそこは国民柄強欲な人が多い。そんな人に目を付けられると厄介そう、というのはなんとなくわかる。それにしても……。
「どうしてそれをすぐに話してくれなかったの?」
もちろん、言われなかったからとはいえ怒りはしない。僕のためというのは重々理解しているしね。でも、特に隠すようなことでもないと思うんだ。僕の疑問にイシュン兄上は困ったように笑いながら、僕の頭をなでてくれた。
「君が怖がるかと思ったんだよ。
あの時はまだ知る必要はなかったしね」
怖がる……。うーん、普通なら怖がるのかな? いっそ狙われるかもといわれても理解できない気がするけれど。それに僕には一応ではあるが『ラルヘ』の記憶がある。戦場で剣を振るっていた記憶があるのだ。さすがに可能性の話では恐怖しない。
そんな僕に必要なかったかもしれないね、とイシュン兄上はまた笑った。




