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 少し考えるようにした後、ティシベーラ様はうなずいた。


「ええ、ええ。

 あなた方だけ来たのなら、私はお会いしなかったでしょう。

 そちらのオッドアイの方、カーボ家の方だったわけですが、その方がいたから屋敷に招きました」


「あの、どうして……?」


 先ほどの間での厳しい視線から、一転。多少柔らかくなった視線をこちらに向ける。


「カーボ家の方ならば、少しは聞き及んでいるでしょう?

 我らが守るべきだった尊い方々のことを」


 守るべきだった、尊い方々?


「ご存じないのですね……。

 いえ、あなたを責めるわけではございません。

 ……あなたは望みますか?

 カヌバレ領を王国に戻すことを」


「は、はい。

 そのためにこちらに来ましたし……」


 僕の言葉を聞くと、何か考え込むようにするティシベーラ様。え、えっと、さっきから一体なんの話を? 初めから不思議な方だったけれど、いまだによくわからない。誰か説明してくれ、という気持ちだ。


 ちらりと、一緒に来た人たちを見ると、真剣なまなざしでティシベーラ様を見ているから、さすがに口を出せない。後で絶対に説明してもらおう。


「今の皇帝はどんな人だ?」


「今はまだ駄目ですね。

 でも、これから変わっていきます。

 皇帝も、いいえ、ツーラルク王国王家もまた正当な血筋に戻ります」


「王家……。

 それを認めているのか? 

 強欲な奴らが?」


「はい」


「一体何があったんだ……?」


「……、アルフェスラン王国の王太子、シフォベント殿下。

 あの方の、ベルタクトラ陛下の、尽力のおかげです」


「ベルタクトラ、陛下……?」


「はい」


「生まれ変わったと?」


「はい」


 ベルタクトラ、その名はあまり好きではない。というか、シント、自分が生まれ変わりだって公言したのか。まあ、そうしないとできない話が多かったのだろう。


「……はぁ、わかりました。

 私としてもこの状況は我慢ならなかった。

 ……カヌバレ王国の王家筋はもう一人しか残っていません」


 一人しか。それはティシベーラ様のことだろうか? というか、どんどん顔色が悪くなっているけれど、大丈夫なのだろうか。


「それは、ラナ」


「ティシベーラ様!?」


 告げた途端に体が傾く。とっさに体を支えるも、僕まで倒れそうになるとか、情けない。というかラナと言った!? それってさっきここまで案内してくれタ少女だよね?


「ティーラ!」


 あ、あの少女だ。勢いのままに僕が抱えているティシベーラ様を抱えた。


「あ、あなたたちティーラに何をしたの!?」


「え、話を聞いただけですが」


 後ろの皆さんもこくこくとうなずく。本当に話を聞いただけだもの。だから、そんなに睨まないでいただきたいです。


 せっせと世話を焼くラナ、さん。その間呆然と待つことしかなかった僕たち。いや、水を汲んできたりとかはしたけれど!


「あの、その、す、すみませんでした。

 取り乱してしまって……」


「いえ。

 あの、あなたがカヌバレ王家の正当な後継者、というのは本当ですか?」


「えっ……。

 それを、どこで?」


「先ほど、そちらのティシベーラ様からです」


「ティーラから?

 ……あなた方は、私に何を望むのですか?」


「ここを、カヌバレ王国として独立させます。

 正当な後継者として、あなたには王の座についていただきたい」


「私に?

 む、無理です」


 まあ、そういう反応になるよね。急に王になってほしいとか、僕でも受け入れられない。でも、本当にカヌバレ家の末裔がこの方だけならば、この方になってもらうしかない。って、じゃあティシベーラ様は一体?


「あの、ティシベーラ様もカヌバレ性を名乗っていましたが、一体?」


「ティーラは、分家のものなのです。

 体が弱いのに、ずっと私を隠して育ててくれました」


「隠して……?」


「今の皇帝がどのような方かは存じ上げません。

 ですが、過去には各国の後継者を手にかけた皇帝もいました。

 そのような方から、私たちを守るために分家の方々が手を尽くしてくれました」


 だから、こんなにも少なくなってしまったのか。むしろよく、この方が残っていてくれた。そして、この方しかこの王位を継げないのだ。無理、と言われてもほかの誰もその権利は持ちえない。


「伏して願います。

 どうか、カヌバレが王国として独立した際に王として即位していただけませんか?」


「そ、そんな、あなたのような方が頭を下げるなど!

 わ、私は……」


「ラシェリナ様」


「ティーラ!

 よかった、目が覚めたのですね」


「私からも、願います。

 どうか民を導く正しき王として、王位を継いでくださいませんか?

 今何が起きているのか、あなたもご存じでしょう?」


 ティシベーラ様の言葉に、ラナ様は口ごもる。というか、ラシェリナ様というのか。それに、アルフェスラン王国にいればあまり何も感じなかったが、どうやら天候不順等の問題はかなり深刻に認識されているらしい。


「本当に、私に務まると思う?」


「私が支えます、これからも」


「本当に……?」


 ええ、とうなずくティシベーラ様。それにラナ様はしばらくすると、うつむいた顔を上げてこちらを見た。


「わかり、ました。

 私たちの自由を認めてくださるのなら、あなた方の望みどおり振舞いましょう。

 でも、二度と侵略することはないと、誓ってください」


「もちろんです」


「大したおもてなしもできませんが、本日は泊まっていってください。

 いろいろと話しておかないといけないでしょう?」


「はい、ありがとうございます」


 どうしてだろう。話を受けると言ったとたんに、ラナ様の空気が変わった。少しおどおどした感じではなく、しっかりと団長の方と渡り合っている……。




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