表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/169

163


 だが、少しすると、シントはなんとか回復してくれた。


「つまり、ここでのアランの目的は僕と大差ないってこと?」


 うん、つまりはそう言うことだ。理解してくれたようで何より。それに、たぶん凍土のことも、『調律』に関係してくる。だからこそ、その解決方法は同じなのだろう。というかシントは良くそこまでいきつけたな。


「それにしても、どうして王位を正当な血筋にっていうのでてこずっているの?」


「うーん……。

 時がたっていて、対象者が多すぎるんだ。

 ひとまず確信があるのは、今の皇帝は正しい血筋ではないってことだ。

 後、ずっと領地を皇国のものとしてきた三国の主が余計に厄介なんだ。

 僕が生きていた時は、元王族をその領主にすることで、なんとかわかっていたのだけれど」


 え、ちょっと待って。シント、そんなことやっていたの? 今さら過ぎるものではあるけれど、正直ぞっとする。だって、相手からすれば国を奪われたのだ。奪った相手を憎まないはずはない。それなのに権力は与えるって……。向こうもさぞや困惑しただろうな。


 とりあえず、血筋をさかのぼっての確認が大変らしい。そして、三国に関しては見つかった後に、説得をして王座についてもらうという仕事もあるのだ。もう皇国は敵ではない、それを伝えなくてはいけない。

 

 これは相当長い道のりにならないか……? まさか、そこでてこずることになるとは思わなかった。でも、やるしかないのか。


「シント、僕もできることは何でも協力するよ」


「え、あ、うん、ありがとう」


 なんでそこでそんな驚いた顔をするんだろう? でも、これがうまく行ったら、シントはツーラルク皇国でも、アルフェスラン王国でも大きな権力を持つということだよね……? いや、もしかしたらこの大陸全体に。なら、もう一つの件もシントに協力してもらった方がいいかもしれない。


「ねえ、シント。

 君に頼みがあるんだ」


「……え?」


 驚き目を見開く。そして次の瞬間には、とても嬉しそうに笑った。


「アランが僕に頼み事って、すごく珍しい。

 僕で役に立てることなら、何でもするよ」


「え、まだ何かも言っていないのに?」


「うん。

 アランには助けられてばっかりだから、何かアランの役に立てるなら断るなんてしないよ」


 お、おお。その笑顔がまぶしい。まさかそんな笑顔で受けてもらえるとは思っていなかったから、かなり驚いた。


「それで何を頼みたいの?」


「さっき『調律』の話をしたでしょう? 

 そのためには、各国に僕みたいなオッドアイの人を派遣しないといけないみたい。

 そして、オッドアイの人は恐らくツーラルク皇国かアルフェスラン王国にしかいない。

説得と、その安全の確保を手伝ってほしい」


「ああ、なるほど……。

 でも、僕が手を出したら強制にならないかい?」


 ……あ、確かに。権力があるから手をまわしやすいって思ったけれど、あるからこそ逆らえなくなるのか……。


「ごめん」


「ううん。

 直接は難しそうだけれど、裏で手を回すくらいならできるよ。

 特に安全の確保とかはね」


「ありがとう」


 うう、考え不足で申し訳ない。……、意識は切り替えて。とりあえず、王家の血筋をたどることから始めないといけないか。


「まずはシントの用を手伝うよ。

 王家の家系図、みたいなのはないの?」


「あるには、ある。

 けれど、アランにはほかの国のところ、カヌバレ領に行って調べてきてほしい。

 領主には話を通しておくから」


 カヌバレ領……。少し懐かしいかもしれない場所。『ラルヘ』が将軍として過ごしたところ。


「わかった、行ってくるよ」


 話は通してくれているなら、きっとそこまで手間取らずに済むだろう。それにしても、シントから話は通しておくって、本当にどれほどシントの権力はこの皇国で通用しているんだよ。いや、突っ込まないけれど。




 さすがにそのまま出発、とはならずに一泊していくことに。急に押しかけて、その上泊めてもらうことになって申し訳ないです。しかもかなりいい部屋を用意してもらったし。


 カヌバレ領に一人で行くというわけにもいかず、数人の派遣団と一緒に行くことに。こんなすぐにどうやって用意したの!? と驚いたけれど、もともと各地への派遣団は結成する予定だったとのこと。僕をそこに同行させることにしたのが急だっただけみたい。


 そして、顔合わせ。なんだあいつ、みたいな視線を……感じない? 驚くのはわかる。なにせ団員の一人といって連れてこられたのが、14歳の他国の人だったのだ。でも、排他的な空気ではない。

 たしかに派遣団の話をされたときに、アランならば大丈夫と言われたけれど……。


「あ、あの、その瞳は本物ですか?」

 

「瞳……?」


「はい!」


「え、本物、ですけれど」


 やっぱり! と盛り上がっているそこの方たち。全くついていけません。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ