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 午後からは上級生との交流会。何をするのかと思ったら、まあお茶会でした。僕らが今まで参加していたお茶会は、基本的な参加者は学園入学前の13歳までが多かった。それと大人。そして、最高学年ということは僕たちが9歳の時に13歳。つまり、同じお茶会に出ていたのはたった一年。それにその時はまだ各々領地にいることが多いし、僕も全然お茶会に顔を出していなかった。


 つまり、ただのお茶会とはいえ、全然交流がなかった人とのお茶会であり、顔を広める機会なのだ。お互いにとって。


 ということで、ただのお茶会と言えども一部の人間にとっては全く気を抜けないのだ。特に気合が入るのが下級貴族。そこに下級生も上級生も関係ない。正直面倒。このお茶会は誰がどの席に座るのかは完全に運任せ。事前に番号が書かれたくじを引いている。


 僕は3番。シントは6番。ちなみにバレティエラ殿下は1番。見事にばらばらだ。1グループ10人って、結構な人数だよな。うん、僕は空気になっていよう。


 一体誰が同じグループだ……。いくら姉上と同じ年の学年とは言え、知っている人はほとんどいない。はぁ、憂鬱。


 席に座ると、結構うまくばらけたみたい。上級貴族だけが固まることも、下級貴族だけが固まることもない。あ、トラヴィリス様が一緒なんだ。トラヴィリス様とは最初のお茶会で挨拶をしたくらい。お互い認識はしているが、きちんと話したことはほとんどない。


 知っている人が一緒でよかった、と思うけれど、むしろ緊張するかもしれない……。


「やあ、アラミレーテ殿。

 こうしてゆっくりと話ができるのは初めてではないかな?」


「お久ぶりです、トラヴィリス様。

 そうですね、なかなか機会に恵まれず」


「まあ、そなたはいつもなんだか忙しそうにしているしな」


「そんなことはないですよ。

 むしろ忙しいのはトラヴィリス様では?」


 ああ、ずいぶんと笑顔が自然になった。自然に見えるように努力したのか、本当に笑っているのか。恐らく前者だろうけれど。それだけで、きっとこの人が苦労をしてきたのだろうな、とうかがえる。僕の言葉にも、まあね、と軽く答えるだけで受け流してしまった。


「そろそろ全員揃ったようだね」


 僕たちは早めに会場に来ていたのだけれど、どうやらトラヴィリス様と話している間に集まっていたようだ。この3番のテーブルも埋まっている。


 今回の主催になるトラヴィリス様が始まりの挨拶をすると、お菓子やお茶が運ばれてきた。うわぁ、なんと厄介なものを。時間が経つとだめになるものは、基本お茶会では出てこない。なのに、それぞれの目の前に置かれた菓子は時間が経つと、形が崩れてしまう菓子。


 はぁ、これはタイミングみて食べろってことかな? なんか実力をはかられている気がする。あんまりいい気がしない。


「まだ、学園に来るようになってすぐですから、なかなかなれないでしょう?」


「ええ。 

 まだ教室の位置もうまく把握できていなくて……」


「ふふ、第一学年の子たちが迷うのは毎年のことですから。

 わからなくなったら、どなたか上級生に聞いてくださいね」


「はい!」


 会話は順調。僕もある程度は口を出しつつ。うん、今は話題が女性中心になっている。同じテーブルで違う話題を話すのは、基本避けなければいけない。だから、本当は似た話題を話せる人同士で同じテーブルに座るのだけれど。今回は完全に運任せだからこういうことが起きるのだ。


 その隙を狙って、僕は菓子に手を付けた。まだ形は崩れていない。うん、これも食事と同じで文句なしにおいしい。お茶ももちろん絶品だ。これが食べられるのならば、まあ、この茶会に参加したかいもあったかな。


 他の第一学年は、なんで食べているの? という目でこちらを見ているけれど、これが形が崩れるお菓子ってわかっていないのか? まあどっちでもいいけれど。ちなみにもう一人いる上級貴族は今は会話中。この方は会話が途切れたタイミングでしっかりと口にしていた。


 それを見て食べるべきなのかと慌てて食べ始めた人がいたが、それはタイミングが違うって……。今はどちらかと言えば男性主体の話題。それなのに、会話に入れる男性が菓子を食べてしまっては話せる人が減る!


 そんな様子を上級生たちは見ているだけ。どの人も菓子に手は付けておらず、お茶を飲むだけ。まあ、上級生たちは試す必要ないものね。それを見て、自分で考えないものが失態を犯す、と。なるほどね。


 妙に長く感じた茶会も鐘の音で終わりを告げる。たいていの茶会が鐘一つ分。時間は他と一緒か。他のテーブルをちらりと見てみると、目に入ったのは平民からの入学生。大分気を張り続けていただろう。もうぐったりとしていた。


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