142
食べ終わるころにはほかの学年もお昼に入ったようだ。カフェテリアが騒がしくなってきている。それにしてもなかなか量が多かった。本当にぎりぎり食べられたけどさ……。
「あれ、シント殿下とアランじゃないか?
なんでこんなところで食べているんだ?」
この声……。
「ハール様。
こんにちは」
「おう!
っと、失礼いたしました。
こんにちは、ララン王国のバレティエラ殿下」
「こ、こんにちは。
名前だけで大丈夫ですよ?
えっと、すみませんどちら様でしょうか?」
「ああ、これは失礼しました、バレティエラ殿下。
私はハレベルシア・クルミレートと申します」
クルミレート……、と小さくつぶやいた後、心当たりがあったのだろう、うなずく。
「よろしくお願いいたします」
そのあと、ご飯を持ったフレン兄上も合流。すぐにバレティエラ殿下と挨拶をしていた。王都に来た時に会ったけれど、あの時はバタバタとしていて全然ゆっくり会えなかったんだよね。
「やあ、アラン。
制服よく似合っているよ」
「ありがとうございます、フレン兄上。
フレン兄上とハール様は同じクラスなのですか?」
「そう。
なぜかね」
「いや、なぜかってわけでもないだろう」
「理由の話ではない。
同じクラスになりたくなかったという意味だ」
「はぁ!?」
相変わらず仲がいいようで何よりです。っと、僕たちはもう食べ終わったし、混んできたし、そろそろ教室に戻ろうとしていたんだ。まあ、ここが埋まることはないと思うけれど。
「あ、そうだ。
あっちに囲いが付いた席あるの見えますか?」
そういってハール様が示したのは、かなり目立つ一角。確かに囲いがあって、こちらから中の様子は見ることができない。揃ってうなずく。
「あそこ使えるの、王族と公爵家、それと俺たちが許可した人だけなので、ゆっくり食べることできますよ。
次からはそこ使って食べてください」
「ああ、あそこのことだったのか。
ありがとう、教えてくれて」
「いいえ。
そうだ、アラン!
四囲の館の方にも来てくれよ。
お前だったら全員歓迎するよ」
四囲の館? えっと、それは一体何のことだ?
「ああ、僕がさっき言ったところだよ。
ほら、王族と公爵家しか入れないところ」
ああ、そういえば言っていたな。そこに招待されている、と。まあ、興味はある。ありがたく行かせてもらおう。
「はい、今度お邪魔しますね」
「うん、楽しみにしているよ。
と言っても、あそこに何かがあるわけではないんだけれどね。
引き留めてごめんね。
じゃあ、また」
「はい、失礼いたします」
僕らはもう食べ終わっていたからいいけれど、フレン兄上たちはまだ食べていない。さすがにこれ以上邪魔しては悪い、と教室に戻ることにしました。
「ね、ねえ、アラミレーテ殿。
フレミック殿のことをフレン兄上って呼んでいたの?」
あ、そっか。ずっと自然に呼んでいたから、ついそう呼んじゃった。はたから見たら、確かにおかしいよね。
「フレン兄上は、母上の弟の子でね。
従兄弟だから、そう呼んでいるんだ」
「あ、そうなんだ。
従兄弟のこと、兄って呼ぶの珍しいね。
あ、それともこっちではそういうもの?」
「いや、そんなことはないよ」
あ、やっぱりそうなんですね……。っく、これはイシュン兄上のせいだ!小さい時から自然にそう呼んでいたから、何の抵抗もなく呼んでしまっている。
「そんなことはいいから、置いといて」
「はいはい」
ぐ、その反応気になる……。まあ、そこを聞き出そうとすると、僕に不利な状況にしかならない気がするから、無視で。
教室に戻ると、まだ食べている人数人。だけどほとんど食べ終わっているみたい。僕たちみたいな上級貴族はカフェテリアで食べちゃうことがほとんどだったけれど、家から食事を持ってきて食べている人も多いみたい。学費に入っている、って言っていたんだけれどな。
あ、オシンとキラは早速仲良くなっているみたいだ。