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なんか最近昔の記憶を掘り出してばかりな気がする。なんでだろう。ふわりと優しい光が手先からあふれる。よかった、うまく使えているみたい。
「アラン、何を……?」
ひとまず、このくらい治癒しておけば死にはしないだろう。
「シント、僕は何もしていない」
「え……?
あ、うん、わかった。
アランは何もしていない」
何度もうなずくシント。ひとまずなんとかなった、かな?
「って、アラン!?
ひどいけがを……!
僕よりも自分のことを優先してよ」
「なんで、シントが泣きそうになっているのさ。
シントがだいぶ派手にやってくれたから、きっともうすぐ助けが来る、はず」
敵も来るかもしれないけれど、とは口にしないでおこう。今はひとまずいいことだけを考えて。
「う、うん。
ひとまず、どこかで休もう。
どこか、身を隠せる場所……」
きょろきょろとした後、いいところを見つけたらしい。シントの表情が明るくなる。そして僕のことを気遣いながら、手を貸してくれた。ちょうどよく洞窟があったみたいだ。
「あ……、夜が、明けた」
「アハハ、なんだか長い夜だったなぁ」
まだ終わってはいないけれど。でも、ここでおとなしくしているならさっき使わなかったやつを使うといいかも。どのみちもう少しはかかるだろうし、敵に見つからないことが最優先だ。
「シント、一番楽な体勢をとって。
それでそこから動かないで」
「え!?
う、うん、わかった」
自分も力を抜いて楽な体勢をとる。これで大丈夫かな。シントがこちらを見てうなずいたのを確認して、自分の血を媒介に新しい魔法を発動する。もう少しは持つ。こんな魔力使ったの、初めてかも。
「アラン?
寝ちゃった?」
「この辺り、か?」
「おそらく。
この辺りがもっともひどく燃えていますので」
「アラミレーテ様―!
シフォベント殿下―!」
「いらっしゃったら返事をー!」
ん、うるさいな……。寝ていたのに。誰……。
「アラン、きっと助けだ」
シントの声だ。それにたす、け? えーっと、なんだっけ。……っ!
「アラミレーテ様!
シフォベント殿下!
おい、こっちに!」
「アラン!」
「え、あれ、ハーボン、兄上……?」
「見えているな。
よかった、本当に、生きていて」
「シフォベント殿下、ご無事ですか!?」
「無事、なのかな?」
え、無事って何、とつぶやくシントの声。うん、確かに。命はあるけれど無事とは言えない気がする。そんなとりとめもないことが頭を過ぎていく。
「もう大丈夫だ、よく頑張ったな」
力が入りすぎがいつものハーボン兄上。すごく気を使っているのがわかる。優しく抱き上げてくれた。シントも誰かに抱き上げられている。
もう、大丈夫かな。
「いいぞ、アラン。
寝ていろ」
「うん……。
ありがとう」
ものすごく眠い。寝ていいって言ってくれているし、言葉に甘えよう。あれ、でもなんでハーボン兄上がここに? もしかして父上の応援でハーボン兄上だったのかな。
「ひどいけがだ。
すぐに手当てをしてもらわないと」
「ハーボン隊長、アラミレーテ様は僕たちが運びましょう」
「いや、大丈夫だ。
そこに転がっている奴でもとらえておけ」
「はっ」