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 馬車での説明の最後、ダブルク様は僕たちに質問はないかと聞いてくれた。一方的に説明して終わり、ではなくこうしてこちらの質問を聞く時間を作ってくれる。ずっとありがたいと思っていることだ。遠慮なくどうぞ、ということなので遠慮なく質問させていただきます。


「あの、ここを狙っている人は皇国の人、なのですか?」


 僕の質問にダブルク様は固まる。な、何か変なこと言っちゃったかな……。シントの方を見るも、シントは特に反応していない。たぶん同じことを考えていたのだろう。


「あ、でも皇国がここまで来て視察団を狙うっていうのも、なかなか難しいことなんじゃないかな?」


「……どうして、そう思うのですか?」


「え、だって皇国がこちらまで来るにはカヌバレ領を通らなくてはいけないでしょう? 

 通ることができても積極的な支援を受けられないなら、長期間こちらで護衛もきちんとついているところを狙うのも難しい気がしますけれど」


「……。

ですが、一度こちらに送り込めてしまえば、そこの支援がなくてもよいのでは?」


「うーん、そうですが……。

 でも最新の情報が届きにくいというのはやはり不利なのでは?

 本国からの情報が途切れる、または滞る危険をおかしても視察団、もしくはそのうちの誰かを狙うというのもまた難しいきがしますが……。

 あ、でも僕が知らない連絡手段があれば別ですね」


「そうそう!

 鳥とか!」


 口にしながら思い出していたのは故郷のことだ。ぼんやりとしか覚えていないが、たまに緑の体毛にオッドアイのメルア鳥、と呼ばれる鳥が文とともにやってくるのだ。そしてそうするとたいてい、村の誰かがその鳥とともに旅に出た。どうやらその鳥が主のもとに案内してくれていたらしい。村にもメルア鳥がいて、どこかへふらりと飛んでいくことがあったのだが、それでも迷子になる鳥は居なかった。帰巣本能がしっかりしているのよ、と話していたっけ。


「鳥……、ですか?」


「え、あ、はい」


 え、なんでそんなに驚いているんだろう。なるほど、とか言っているし。そういえば、他で鳥でのやり取りってあまり見ないかも。伝令兵、と呼ばれる兵がいてその人が早馬でかけることで情報が伝わってくるのが一般的だった、かも。うん、まあまあ。


 そしてダブルク様が考え込んでいる間にも馬車は進んでいった。



「よ、ようこそいらっしゃいました……」


 到着したタッライ伯爵家の屋敷は想像よりもだいぶシンプルなものだった。他の伯爵家の屋敷を見慣れた今となっては本当にここが伯爵家の屋敷であるのか疑ってしまうほどには質素。まあ、下手にゴテゴテしているよりは断然好感が持てる。そして、出迎えてくれた伯爵はなんだか顔色が悪いような気がするけれど大丈夫なのだろうか。


「お疲れでしょう、すぐに部屋に案内させます」


 ここには少なくとも今は子供がいないようで、伯爵や伯爵夫人との顔合わせが終わるとすぐに部屋に案内される。それにしてもしばらく市場等の見学ができないのが残念だ。初日ってたいてい予定入れないからそうなると暇に思えちゃうんだよね。


「あ、アランと同じ部屋なんだね、今回は」


「なんだか久しぶりだ」


 最近は広めの屋敷に泊まっていたから別々の部屋のことが多かった気がする。殿下と辺境伯子息ってことで結構優先的に個人部屋にまわしてもらえたのだ。だからか、ここに案内してもらったときすごく申し訳なさそうだった。気にしなくていいのに。これはもう久しぶりのシントとの同室を楽しむしかないね。




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