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「この白爛石が発見されたのは、今から150年ほど前。
行ったらわかるとは思いますが、これの鉱山はなかなか険しいのです。
なので、それまでは鉱山は嫌厭されていました。
貴重な土地の多くを占めていましたから。
ですが、皇国との戦争がはじまり、国全体で資金や食料が不足し始めました。
そこで当時の領主があの鉱山になにか使えるものがあるかもしれない、と思い始めて鉱山に立ち入ったのです。
……、初めに立ち入った領民は一歩入っただけで、すぐに立ち止まってしまったと言います。
あまりの美しさに足を動かすことを忘れてしまったのです。
今は採掘が進み、入り口付近ではもう白爛石は採れませんが奥へ行けばまだ似た光景を見ることができます」
へぇー。ちょうどラルヘたちが生きていたころだ。あの頃に発見されたのか。それも、戦争が理由で。少しだけ複雑、かも?
そこから鉱山の歴史を話してもらう。全く知らなかったことばかりだから、本当に勉強になります。白爛石が採れる鉱山、ここはほかもそうであるようになにも鉱山全体が白爛石であるわけではない。探し出すにはちょっとしたコツ、のようなものがいるらしい。
「ヒデシャルテ様は見つけるのは得意なのですか?」
「はは、私はだめですよ」
あ、そうなんだ。てっきり採掘も得意なのかと思っていた。鉱山のことすごく詳しいし。
「鉱山での活動可能時間と、領主として過ごすであろう時間では後者の方が長いのです。
それなのに、コツをつかむほど今から出入りしていては、ね。
領主として鉱山に入らなくてはいけないときもありますから」
なるほど。ちゃんと考えられているというわけですね。聞けば、まだ鉱山には全然入ったことがないらしい。基本的には領主一族とはいえ、学園を卒業するまでは入山の許可が下りないらしい。まだ学園を卒業したばかりのヒデシャルテ様は、なかなか入山の機会がないみたい。
「まだ学園に入学してもいないあなた方が、自分よりも先に鉱山に入ったと知ったら弟が嫉妬するかもしれませんね。
あれも、ずいぶんと鉱山に入ってみたいと駄々をこねては父に怒られていましたから」
「そうなのですか?
それなのに、我々が入ってもいいのですか?」
「まあ、特例、というやつです。
そもそも、こうして視察に学園を卒業されていない年齢の方が同行すること自体が特例ですし。
陛下や辺境伯、そして視察団の長が許可を出されているならば、我々に受け入れないという選択肢はありません。
もちろん、本人が嫌がってらっしゃるならば別ですが」
嫌がっていなんかいない! むしろ入ってみたいと思っているくらいだもの。それを伝えるためにぶんぶんと顔を振る。すると、そうですか、と苦笑いされていた。
「さて、白爛石、そして鉱山のことはこのくらいですかね。
なにか質問はありますか?」
「いえ、特には」
「ではこのくらいにしましょう」
この後は一日休みが入って、そしてついに鉱山にいくんだ。