表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛される王女の物語  作者: ててて
5/29

陛下

「……なんだレオン」


「陛下…いえ、父上。今やっている執政よりも大切なお話です。」


テノールボイスの男性は眉を動かし手にしていた紙を机の上に置いた。そしてこちらに視線をやる。


「……誰だ?」


男性は私を視野に入れると静かに問いてくる。そして、隣のお兄さんが何かに気づき私の手を離してしゃがみこむ。


「あ、よかったら君のお名前を教えてくれるかい?」


男性からの恐怖さえ感じてしまうような視線に耐えながら、メイドがよくやっているカーテシーを見様見真似でやってみる。


「私は、シルフィオ、ーネ・クラン・カス、ティリアと申し、ます。」


2人が息を呑んだ。


そして妙な沈黙の中、男性が口を開く。


「今いくつだ?」


「はい、先日で12歳にな、りました。」


「…今までどこに住んでいた?」


「はい、後宮、にごさ、います。」


二人がお互いに険しい顔つきで話し合う。一体この方々は何者なのか……


そういえばっと思い出す。部屋に入った時、お兄さんはレオンと呼ばれていた。そして、男性はお父様と。


レオンって第一王子の名前と一緒だ。

よくある名前なのかな…ていうかここどこ。


お兄さんは私の顔に手を近づけた。

髪をすき、瞳を見つめてくる。


「…父上の瞳と同じ色ですね。」


「…」


「シルフィオーネ、か……。マーサ」


お兄さんに呼ばれたマーサという女性は私を連れて部屋から出た。

そのまま別室に連れていかれる。


「シ、シルフィオーネ様、王宮侍女のマーサでございます。よろしくお願いします」


「え、はい。よろし、くお願いし、ます?」


何をよろしくなのだろう。


すると、お風呂に連れていかれ服を脱がされる。そのまま体も頭も洗われ柔らかいタオルで拭いてもらう。バサバサの髪の毛を切りそろえ、着たこともないような高そうな青色のドレスを着せられた。


そうして、またさっきの部屋に連れてこられる。


「……かわいい」


部屋ではまだお兄さんと男性がお話をしていらっしゃった。私はマーサさんに案内されたソファに大人しく座る。


「こちら、喉に効くお薬でごさいます」


出された飲み物は今までに飲んだこともないほど甘く、飲みやすかった。すーっと喉に馴染む。


すると、隣にお兄さん。向かいに男性が座った。お兄さんが口を開く。


「シルフィオーネ。僕の名前はレオン・クラン・カスティリア。聞いたことある?」


メイドのミーナから聞いたことがある。

私にはもう1人、お母様の違う異母兄弟?がいて、その人はレオン・クラン・カスティリアという、17歳には思えないほどの美しい人だと。


やはりこの人が第1王子…ならばお父様であるこの方が国王陛下ということよね…


「メイドか、ら聞いたこ、とがございます。」


「メイドから…そう。では、この方のお名前はわかるかい?」


そう示されるのは、テーブルの向こうに座る男性。もとい国王陛下。目はシワがよって不機嫌をあらわにし、体の大きさがその迫力に拍車をかけている。


こちらを見る双方の青い眼差しがいかに鋭いことか。微かながらに震える両手を抱きしめ、ひたすらに考える。


だが、考えても考えてもわからない。

だって知らないのだから。


そうして、私が口を開く前に

その陛下は立ち上がって部屋を出ていかれた。




読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ